
取締役会長 此本 臣吾
生成AIの基盤モデルの理論が発表されたのが2017年、翌年にはオープンAIがGPT1を発表し、その後、2022年に会話形式のChatGPTが一般公開され、生成AIの普及が一気に進展している。最近では、DXに代わってAX(AIトランスフォーメーション)という言葉が出てきている。日常生活においても企業活動においても生成AIはなくてはならない存在になっている。
野村総合研究所(NRI)は、シンクタンク、コンサルティング、ITシステム開発を事業として展開しているが、情報収集や初期の分析にはDeep ResearchのようなAIの活用が不可欠になっている。ソフトウエア開発において生成AIはさらに重要な役割を担っている。プログラミングやテスティング工程では、AIの導入で生産性は目覚ましく向上してきている。
代替論より拡張論でAXを捉え直し、人の価値は残り続ける
米国西海岸ではビックテックが大量の人員整理をしている、システムインテグレーターは早晩AIにディスラプト(破壊)される、といった話が報じられている。しかし、顧客の戦略や組織、業務を理解し、あるべきシステムとはどのようなものかという、最も重要なシステム開発のプロセスは人間の総合的な思考力が今後も必須であり、一部の作業はAIで自動化されるが、システムエンジニアが不要になるわけではない。システム開発では開発途中での仕様変更に対応するなどAIではできない業務が多くある。
筆者は2025年夏にスタンフォード大学のバイオデータサイエンス学部とヘルスケア領域でのAI活用について議論したが、印象的だったのは、創薬や治療行為そのものへのAI活用もさることながら、医師の事務作業の効率化においてAIが大きな役割を果たしていることであった。大量の画像を取り込み、そこから微細な違いを読み取って初期の病巣を発見するのはAIにとって最も得意とするところであるが、だからといって放射線科医が不要になるわけではない。放射線科医の仕事は30の業務から構成されているが、AIが担う画像診断はその中の一つに過ぎないからである(トロント大学アグラワル教授)。
中国のAIベンチャーの先駆けである合肥市の科大訊飛(iFLYTEK)は、SparkというLLMを活用して、テストの作成や採点、授業の振り返りの資料作成、さらには生徒の表情からAIが感情を読み取って個別指導にも活用できるアプリケーションを上市している。教師の労務負担を軽減させ、生徒と向き合う時間を増やすことが狙いとされ、すでに全国の数千校で実用化されているそうである。それでも教師という職業がなくなるわけではない。
筆者は2025年夏にスタンフォード大学のバイオデータサイエンス学部とヘルスケア領域でのAI活用について議論したが、印象的だったのは、創薬や治療行為そのものへのAI活用もさることながら、医師の事務作業の効率化においてAIが大きな役割を果たしていることであった。大量の画像を取り込み、そこから微細な違いを読み取って初期の病巣を発見するのはAIにとって最も得意とするところであるが、だからといって放射線科医が不要になるわけではない。放射線科医の仕事は30の業務から構成されているが、AIが担う画像診断はその中の一つに過ぎないからである(トロント大学アグラワル教授)。
中国のAIベンチャーの先駆けである合肥市の科大訊飛(iFLYTEK)は、SparkというLLMを活用して、テストの作成や採点、授業の振り返りの資料作成、さらには生徒の表情からAIが感情を読み取って個別指導にも活用できるアプリケーションを上市している。教師の労務負担を軽減させ、生徒と向き合う時間を増やすことが狙いとされ、すでに全国の数千校で実用化されているそうである。それでも教師という職業がなくなるわけではない。
DXを超えるには、AXをビジネス変革に接続せよ
AIエージェントの出現で知的業務の代替が急速に進み、本社業務の大半はAIに置き換わるなどの報道があるが、人間が行っている業務は完全に定型的なものなどない。日々の気づきがあり、細かな改善が積み重なって、ワークフローは進化を続ける。業務をAIに置き換えたとしても、その後も持続的にAIが自律的に問題点を見いだし、創意工夫や改善を重ねることはできない。つまり、AIは人間を代替するものではなく、人間の能力を拡張させ、人間の業務の生産性を上げるものと考えた方がいい。
2017年頃から始まったDXでは、人々の働き方に変革をもたらしたテレワークやオンライン会議、ECやUberなどのプラットフォーム型ビジネスなど、新しいビジネスモデルも次々に生み出された。一方、AXがあくまで人が担っていた業務の代替にとどまり、新しいビジネスモデルを生み出すわけではないとなると、AIブームはいずれ色あせ、昨今の爆発的なAIへの投資も回収が滞ってしまうかもしれない。つまり、AXはビジネスの変革につなげていけるかどうかが大切な論点となる。
2017年頃から始まったDXでは、人々の働き方に変革をもたらしたテレワークやオンライン会議、ECやUberなどのプラットフォーム型ビジネスなど、新しいビジネスモデルも次々に生み出された。一方、AXがあくまで人が担っていた業務の代替にとどまり、新しいビジネスモデルを生み出すわけではないとなると、AIブームはいずれ色あせ、昨今の爆発的なAIへの投資も回収が滞ってしまうかもしれない。つまり、AXはビジネスの変革につなげていけるかどうかが大切な論点となる。
問われるのはAI導入量ではなく、新しい価値創造
北海道砂川市にいわた書店という小さな本屋がある。店主の岩田徹さんは2007年から「一万円選書」というサービスを始めた。応募者が「選書カルテ」に生い立ちや好きなこと、人生で大切にしていること、悩みごとなどを書き送ると、そのカルテを基に店主が選んだ本が手紙とともに送り返されてくる、というものであり、書籍を通したセラピーとも呼ばれている。
こうした新しいビジネスモデルをAIが生み出せないだろうか。AIはインタラクションを重ねるほど顧客への理解を深めてその顧客の真のニーズを掘り下げていける。私たちはこれをディープ・カスタマイゼーションと呼ぶが、AIの推論機能を活用して顧客の理解に対する認知制約が緩和されれば、新たな付加価値を生み出せるかもしれない。
野村総合研究所は2017年のNRI未来創発フォーラムで「デジタル資本主義」を発表し、翌年に同名の書籍を発刊した。これはDXが人々の生活や社会をどう変えるかに焦点を当てたものであった。DXからAXへ、AIは日進月歩を続け、いずれは新しいサービスも創出するであろう。こうした動向を丹念にフォローし、AXが導く次なる社会のパラダイムとはどのようなものか継続的に情報発信を続けていきたい。
こうした新しいビジネスモデルをAIが生み出せないだろうか。AIはインタラクションを重ねるほど顧客への理解を深めてその顧客の真のニーズを掘り下げていける。私たちはこれをディープ・カスタマイゼーションと呼ぶが、AIの推論機能を活用して顧客の理解に対する認知制約が緩和されれば、新たな付加価値を生み出せるかもしれない。
野村総合研究所は2017年のNRI未来創発フォーラムで「デジタル資本主義」を発表し、翌年に同名の書籍を発刊した。これはDXが人々の生活や社会をどう変えるかに焦点を当てたものであった。DXからAXへ、AIは日進月歩を続け、いずれは新しいサービスも創出するであろう。こうした動向を丹念にフォローし、AXが導く次なる社会のパラダイムとはどのようなものか継続的に情報発信を続けていきたい。
プロフィール
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此本 臣吾のポートレート 此本 臣吾
取締役会長
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。