
2025年6月19日、野村総合研究所(以下、NRI)は、株式会社角川アスキー総合研究所および日本マイクロソフト株式会社が主催する生成AIハッカソン「AI Challenge DAY 第4回」に参加し、グランプリならびに、セキュリティ&トラスト賞に選出されました。イベントは与えられた課題に対して、1週間という期間で生成AIを活用したソリューション開発に挑戦するもので、今回は12社が参加しました。
参加各社のプレゼンテーションと結果発表はYouTubeで生中継されました。
https://www.youtube.com/watch?v=2tTHr20sT_o
「ECサイトにおける次世代顧客体験の提案アシスタント」とは
「ECサイトの購入体験をAIエージェントで変革する」というテーマに対して参加者は、主催側が提供する仮想顧客エージェントと対話する接客エージェントを設計・実装し、接客を通じた商品購入を目指します。また審査は、接客に対して対話内容や購入商品、接客評価など16個の評価項目から算出されたスコアと、AIエージェントを活用した未来のECサイト、顧客体験についてのプレゼンの両面から実施されました。NRIからは流通システム開発技術部、流通データイノベーション開発部、流通サービス・CRMシステム開発部に所属するメンバー5名でチームを編成し、課題解決を目指しました。
生成AIを用いたエージェントAIが顧客のペルソナを作成し、接客をパーソナライズ
NRIは、「次世代のECは会話である」という顧客視点のビジョンと、「店員ゼロでも対面接客を実現する」という店舗視点のビジョンを同時に実現する手段として、アバターAIとエージェントAIを組み合わせた接客エージェントを提案しました。アバターAIがリアルタイムにユーザーと音声対話を行うのと同時に、ユーザーに最適な接客案を、エージェントAIがサポートします。
技術面では、LangGraphを用いてエージェントの全体ワークフローを設計し、ユーザーの要望ごとに「商品検索」「評判分析」「顧客情報管理」などの専門エージェントに対応を振り分けることで、高い専門性を持った業務対応を実現しました。
具体的には、ユーザーとの対話履歴から、顧客のペルソナを作成し、利用することで接客をパーソナライズしました。多様なデータソースをAzure AI Searchで統合し、精度の高いRAG(検索拡張生成)を実装することで、最適な商品提案へと繋げました。
AIエージェントとAIアバターを用いた新しい顧客体験のデモ画面
NRIは参加チーム中最高の182.6点でグランプリ、ならびにセキュリティ&トラスト賞を受賞しました。セキュリティ&トラスト賞では、AIがクレジットカード番号や住所などの個人情報を取り扱うことのリスクに着目し、決済処理を接客エージェントとは分離して実装する提案を行った点が、審査員から「ユーザー心理に寄り添っている」と評価されました。AI Challenge DAYにおいてグランプリと個別の賞の同時受賞は初めてとなるため、「ダブル受賞でいいのかと議論になったが、セキュリティ面もピカイチであり、賞の趣旨に照らしても妥当である」との講評もいただきました。
NRIはこれからも、デジタル技術とコンサルティングの知見を活かし、今回の受賞において評価された生成AIの活用力やビジネスでの課題対応力を鍛え、社会と顧客への新たな価値創出を目指していきます。