株式会社野村総合研究所(以下「NRI」)は、これまで公的支援を活用した新規事業開発に対する支援を行ってきました。近年、「新型コロナウィルス感染症」など企業単体での対応が難しい事象が増加する中、企業にとって政府との関係性構築や、社会的活動・政策との協働がより重要性を増している状況となっています。
また、政府による政策立案・推進においても、従来の一方的な発信型から、企業からの提案やアイデアを取り入れ、課題解決に向けた共同検討や実証を進める動きが広がっています。こうした流れは、企業にとっても政策と連携しながら新たな事業機会を創出するチャンスとなっています。
このような環境の中で、企業の新規事業開発と公共の政策を「共創」の視点で結びつけ、社会全体のムーブメントを生み出す活動として「パブリックアフェアーズ※」が注目されています。しかし、これを実現できている企業はまだ少ないのが現状です。したがって、企業としては新たな事業開発の在り方を見直すとともに、公的資金(補助金事業・国プロなどの委託事業等)や支援の活用についても、これまで以上に戦略的なアプローチが求められています。
NRIでは、企業の新規事業開発における公的支援活用のニーズや「パブリックアフェアーズ」に関する実態と意向を把握することを目的に調査を実施しました。その結果、以下に示すような興味深い示唆が得られましたので公表いたします。
調査結果サマリ
まず、コロナ禍前と比べて新規事業開発への意識が高まっており、調査対象企業の約半数が新規事業開発の取り組みを拡大していることが明らかになりました。こうした動きの中で、公的支援は新規事業開発をサポートする有力な手段として、多くの企業から注目されています。
実際に、公的資金の活用や検討経験がある企業のうち、半数以上が新規事業開発の際に公的支援の活用を検討しており、金銭面での安定化だけでなく、社内外への説明強化や関係構築といったメリットも認識されています。
しかし一方で、今後も積極的に公的支援を活用したいと考える企業は約25%にとどまっており、課題が存在することが示唆されます。特に、「申請」や「情報収集」など活用の初期段階でのハードルが高く、実際の活用が進みにくい要因となっているほか、採択の不確実性や申請にかかる工数・費用対効果への懸念も多くの企業で見受けられました。
こうした課題に対し、公的支援を有効に活用している企業では、補助対象となる事業部門が申請責任を持ち、体制やノウハウを整備することで、申請プロセスの円滑化や成功確率の向上を図っています。加えて、パブリックアフェアーズを推進する専門部門を設置するなど、社内体制の強化にも取り組んでおり、これらの工夫が公的支援の効果的な活用につながっていることが特徴として挙げられます。
アンケート調査の概要
調査名 | 新規事業開発における公的支援の活用に関するアンケート調査 |
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実施時期 | 2024年9~10月 |
調査対象 |
日本国内に所在する企業のうち売上高が一定規模以上の企業 (回答者として、新規事業開発・経営企画担当者を想定) |
有効回答数 | 231社 |
主な調査項目 |
転換期(2020年以降)の新規事業開発に対する考え方 新規事業検討における公的支援の活用実態 転換期(2020年以降)での公的支援活用意向 |
詳細結果 |
アンケート結果 パブリックアフェアーズに係るNRIのご支援 |
- ※パブリックアフェアーズ:企業やNPO・NGOなどの民間団体が政府や世論に対して行う、社会の機運醸成やルール形成のための働きかけ
【本件の担当】
株式会社野村総合研究所 社会システムコンサルティング部 岡本、間島、稲崎、長井