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官民の架け橋となって誰もが生きやすい社会をつくりたい

ヘルスケア・サービスコンサルティング部 下松 未季

少子高齢化で社会保障費が不足するのは明らかですが、過去のように税金を投入する方法では立ち行かなくなっています。民間サービスを活用して社会の仕組みを再構築し、効率的な社会に一歩でも近づくために、自分に何ができるのか。下松未季は「医療・介護」というテーマを軸に専門性を磨きながら、社会課題に向き合ってきました。

日本の介護サービスの強みはどこにあるのか?

2016年にコンサルタントとしてNRIに入社。大学時代に国際法や国際契約法を学んでいたので、日本企業の海外展開に関心を持っていました。しかし、新入社員の体験的なジョブローテーションの中で配属されたヘルスケア部門で医療・介護というテーマに出会い、強い関心を持ちました。日本では高齢化が大きな社会課題となっていますが、介護保険制度という守られた構造があるが故にビジネスとしては動きにくい分野になっています。だからこそ自分にも支援できることがまだあるのでは、と考え、本格的な配属先としてもヘルスケア部門を希望しました。

それ以降、認知症の検知技術、中核市の介護保険計画策定、シニア向け新規事業開発などのコンサルティング業務に携わってきました。特に大きな経験となったのが、3年目に担当した経済産業省による介護事業の国際展開支援の取り組みです。日中政府共催のシンポジウムを支援し、そこで日本の先進的な介護サービスをアピールしたり、日本企業向けに中国での商談機会を設けたりと、企画から実施まで伴走しました。

介護分野は課題先進国の日本の強みになると、よく言われます。では実際に、どこが強みかと聞かれると、意外に説明が難しいものです。さらに、介護の概念や制度は国によって異なります。たとえば、中国には日本のような介護保険制度がなく、医療の延長上で介護を捉えています。東南アジアでは、有料の介護施設に入居したり専門スタッフを雇わなくても、身の回りの世話はメイドに頼めばよいのではないかという考え方も根強く残っています。そうした考え方に立つと、要介護者の意思や自律性を尊重し、本人の力を引き出そうとする介護支援は、サービスに該当しないように見えるのです。異なる背景や考え方に触れて、日本の介護サービスの特徴や海外展開のアプローチを見つめ直すきっかけとなりました。

第三者の立場からあるべき姿を考える

現在では介護を軸に、シニア向けビジネス、介護事業の変革、介護予防など幅広いテーマを扱っていますが、常に意識しているのが国の制度政策です。政策の設計意図を、民間企業や自治体など現場にうまく落とし込む。逆に、現場で困っていることや実際の課題などを、政策立案者側にフィードバックする。そのような形で官民の両側面をサポートしたいと思っています。NRIのコンサルティング部門では、官公庁から民間企業まで幅広く、川上から川下まで様々な人々の声を聞く機会があります。それぞれの考え方を理解し、橋渡しするのに価値を発揮しやすい立場だと感じます。

共感し理解しつつも、一部の意見に引きずられないようにするためには、「第三者から見てどうあるべきか」を考えることが大切です。そこで役立っているのが、大学時代に所属していた英語ディベートのサークルで培ったスキルです。ディベートでは、あるテーマが与えられると、自分の思いとは関係なく、機械的に肯定派、否定派に振り分けられます。与えられた立場になりきり、、どうすれば思いが実現できるのか。さらに、相手の出方を読むために、相手の目線で考えてみる必要もあります。そうした練習の成果なのか、様々な立場で物事を捉えた上で、あるべき姿や落としどころを探していくやり方が身につきました。

現在でも医療や介護の現場は「アナログな世界」なので、生産性を損ねない形でうまくデジタルを活用し、効率化を図っていくことが急務となっています。NRIにはITシステムに詳しい人材もいるので、現場の生産性を落とすことなく、必要なITシステムや現場の改善について総合的に提案できます。その一方で、介護従事者は比較的高齢で、デジタルへの抵抗感は強いのも事実です。これまで苦労して積み上げてきたプロセスを変えるためには、新しいやり方に変えることで将来的にどんな状況になるのか。個々人にはどんなメリットがあるか、という具体的な絵姿を理解してもらうことが欠かせません。その部分は課題であり、ぜひ取り組んでいきたいと思っています。

より広い視野に立って介護問題に取り組む

自分の提案が制度に反映されたり、「あなたの意見が聞きたい」「あなたにお願いしたい」と声をかけていただくときには、この仕事をやっていてよかったと感じます。ただ理屈を述べるのではなく、現実をしっかりと見ながら、今後、現場がどのように変化する必要があるか。どのような制度で現場の課題に対応すればいいのか。地に足の着いた提言を考え、それを対外的にも情報発信することで、少しでも変化をもたらしたいと思っています。

介護問題を突き詰めていくと、身体や活動に対する機能が低下した方がどれだけ住みやすい社会を作れるかという問題に至ります。そこには、介護ニーズだけでなく、交通、医療、買い物へのアクセスなどの問題も含まれます。そうした課題を解決できれば、高齢者や要介護者だけではなく、どの世代にとっても生きやすい社会になります。そうした社会をつくるためにも、国と民間とをつなぐ存在になって、日本のあるべき姿を考えていくことを、今後も実践していきたいと思っています。

また課題先進国である以上、日本の医療・介護は海外の方々にも参考になる部分は必ずあるはずです。同時に、日本では古くから取り組んできたが故に非効率なところもあります。特にデジタルを前提にしたサービスや制度設計については、中国など海外から学べることは多いと感じます。海外展開する際には、日本から一方的に輸出するのではなく、新たな視点を日本に持ち込み、双方向でより良いものをめざしていければと思います。

下松 未季

ヘルスケア・サービスコンサルティング部 副主任

下松 未季

Profile

入社以来、医療・介護分野における政策立案やシニアマーケットにおける事業戦略立案、実行支援などの仕事を担当。現在は、社会保障分野におけるDX化や、生産性向上なども扱う。

お問い合わせ

株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp