移動の選択肢が増えて複雑化したことを背景に、MaaSという新しい事業機会が生まれています。
シームレスで自由な移動を実現するMaaSが登場
モビリティの「所有から利用へ」というシェアリング・エコノミーの進展や技術の発展により、利用者にとって移動の選択肢が増えていき、今後もより自由度が高まっていきます。こうした動きを受けて、モードを跨いでモビリティと交通サービスを、デジタル技術を使ってシームレスに連携するものとして、Mobility as a Service(MaaS)が注目され始めています。
MaaSの提供価値は、公共交通や新たなモビリティの組み合わせにより自由な移動を実現することです。MaaSにより、交通サービスは供給側からユーザー本位になっていく、と言えるでしょう。フィンランドのWhim*、ドイツのmoovel*のようにMaaSの先行的なサービスが始まっています。
* Whim: MaaS Global Ltd.が提供するモビリティサービス
* moovel: ダイムラー社傘下のmoovel社が提供するモビリティサービス
移動に関わる多様なサービス連鎖を生み出すエコシステムの構築が鍵
欧州で先行的に進むMaaSですが、日本においても、鉄道事業者を中心にMaaSの実証実験(PoC)が進んでいます。MaaSはプラットフォームビジネスであり、利用者と、各種機能を提供する交通および非交通事業者が一定程度参加することで、「交通事業者が多いため、サービスの利便性が高まり利用者が増える」、「利用者が多いため、事業者側のメリットが高まり事業者の参加が促される」という自律的な成長基盤を構築できます。
一方、ビジネスを立ち上げる際、サービス・プロバイダーの収益化の視点だけでなく、利用者ニーズおよび政策当局の意向も踏まえ、サービスを丁寧に設計することが、黎明期である日本では、事業の持続的成長、事業者のブランド力向上において重要になります。
■ MaaSエコシステムの概念
NRIは、MaaS事業戦略の立案からサービス設計、パートナリング、事業の立ち上げまで一貫してご支援します。
交通事業およびICTの専門家がMaaS事業化を支援
MaaSの事業化には難しさもあります。それは、複数の交通モードを統合するだけでは収益化が難しいことです。
例えば、先行した事業者であり、様々な賞も受賞しているフィンランドのMaaS Globa(l Whim)もまだ利益が出るところまでには到っていません。
収益化に必要なのは、サービス提供地域の都市課題を理解しつつ、利用者ニーズを踏まえたサービス設計を行うこと。そして、実証実験を通じた事業検証、検証結果を踏まえた事業化というステップです。
NRIは国内外のMaaSに関わる事例、MaaS事業戦略に関わるナレッジを蓄積したコンサルタントや、交通事業の特性を熟知したコンサルタント、利用者の体験価値を理解してアプリ設計・開発を行うシステムエンジニアがチームとなり、顧客企業のMaaS事業立ち上げを支援した実績を有しています。
ケース: MaaS事業の戦略立案からサービス立ち上げまでを一貫して支援
NRIは、交通事業者のMaaS事業検討を支援しました。その中で、そもそもMaaSを事業として行う意義、収益化を睨んだ事業戦略の立案、さらに具体的なサービス設計、パートナー候補選定および社内外での渉外も支援しました。
MaaSの検討では、消費者へのインタビュー、ワークショップも有効です。サービスの対象とする消費者へのデプス・インタビューやワークショップで、移動の際の現状の課題や、その際の感情の揺れ動きをつぶさに観察し、消費者が本当に求める体験を明確化し、サービス設計に活かしました。
マルチモーダルサービス(複数のモードをまたいで経路検索、予約、決済、チケッティングを1つのアプリで行えるモバイルサービス)は、機能に分解して考えると、1つ1つは今までも既存事業者が提供してきた機能であるため、ユーザーインターフェース(UI)、顧客の体験価値(UX)の作り込みを通じて、サービスの競争優位性の確立を支援しました。
■ NRIのMaaS事業検討アプローチ
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