フリーワード検索


タグ検索

  • 注目キーワード
    業種
    目的・課題
    専門家
    国・地域

NRI トップ NRI JOURNAL ライフもキャリアも前向きな“フルキャリ”の戦力化に向けた取り組みが企業競争力の礎になる

NRI JOURNAL

未来へのヒントが見つかるイノベーションマガジン

クラウドの潮流――進化するクラウド・サービスと変化する企業の意識

ライフもキャリアも前向きな“フルキャリ”の戦力化に向けた取り組みが企業競争力の礎になる

グローバルインフラコンサルティング部 武田 佳奈

#経営

2016/12/26

働く女性はこれまで、キャリア重視の「バリキャリ」か、生活重視の「ゆるキャリ」のどちらかで捉えられる傾向がありました。しかし結婚や出産・育児などの生活も充実させ、かつ自身のキャリア形成にも前向きな“フルキャリ”な女性が現れていると、NRIの武田佳奈は見ています。企業がこの層を活用する仕組みを実現することは、労働力不足が本格化する近い将来において企業の競争力につながる新しいマネジメントの確立につながると武田は指摘します。

 

仕事も生活も共に充実させたいと願う「フルキャリ」女性

 

一般的に、働く女性を「バリキャリ」あるいは「ゆるキャリ」と分類して見る傾向があります。前者はキャリア重視で仕事に邁進するタイプ、後者は出産・育児などを契機に生活を優先して働くタイプ、と捉えられてきました。

 

しかし、本当にこの二つで分類することが適切なのでしょうか。両者とも、そのスタイルを自発的に選んだ人もいるでしょう。しかし環境が許さず、仕事か生活かのどちらかを選ばざるを得なかった人もいると思います。

 

実態は伴わなくても、本当は仕事も生活もどちらも大切にしたいと考える女性は少なくないと思います。また意識しているかどうかは別にして、両方の充実を実現することを前提に企業に就職する若い世代も現れています。こうしたライフイベントにも前向きなキャリア志向の女性を「フルキャリ」と私は呼んでいます。

一方、多くの企業は、今、管理職女性比率をどのように高めるかに悩んでいます。キャリア女性の中にフルキャリが増えていることを考えると、管理職女性比率を高めるためには、ライフイベントを経ても、管理職相当年次になるまでキャリア志向を継続しキャリアを積める、フルキャリにとって働きやすい環境が必要です。

このような背景から、私は、今後企業は、女性活用を進める中で、従来の施策に加えて、フルキャリの特徴に着目した打ち手も打つべきだと考えています。

 

キャリア女性に対するこれまでの支援策

 

再びキャリア形成ができる仕組みが必要

 

こう考えるようになった背景には、私自身が企業で働きながら出産・育児を経験して感じたキャリア形成におけるハードルがあります。私は入社後、6年目に第一子、9年目に第二子を出産し、2度の育休を取り、最近まで時間短縮勤務で働いてきました。

 

NRIでの勤務は今年で12年目ですが、その間の数年間を休業や時間短縮勤務で過ごしてきたことから、気がつけば、年次と実績・スキルのギャップが広がっていました。もちろん、育休取得や時間短縮勤務、もっと言えば出産自体は自らの選択であり、それらから生じた結果は自己責任ではありますが、出産後も、自身のキャリアも追求したいと考えた時に、生じたギャップの解消は大きな課題になると感じます。終身雇用を前提とする従来型の日本企業では、OJTを含む研修や業務における機会付与等の仕組みや考え方が「入社以来継続して就業している社員」を前提としていることが珍しくありません。育休から復職する社員は、その後のキャリア形成が“基本パターン”から外れてしまうのです。その上で、再び自らのキャリアを自立させるには、相当な精神力と体力が必要です。「女性は子どもを産むとキャリア意識が下がる」との声を聞きますが、その背景には仕事と育児の両立が難しいということの他に、従来の仕組みでは復職後の環境でキャリアを再度立ち上げ、継続することが極めて難しい現実があるのではないかと考えました。

 

女性だけに限らない、多様な人材を戦力にするための第一歩に

 

これは、子どもを産んだ女性に限らず、自身の病気や家族の介護など、何らかの理由でキャリアの中断が発生した人たちにも当てはまります。これから労働力不足がさらに進めば、中途採用も含めてさまざまな年齢・背景を持つ人たちを雇用していく必要も高まるでしょう。これまでのような画一的な社員像を前提としたマネジメントでは成り立たなくなる日は遠くないと考えます。そこで、私は、企業において、「フルキャリ」女性の戦力化に取り組むことは、今後必要となる組織マネジメントや人材育成の確立に向けて実践的な試みになるのではないかと考えます。フルキャリ活用のための投資は、労働力や女性ならではの新しい視点の確保を超えた、新しいマネジメント確立のための投資だと考えることが重要だと考えています。

 

「フルキャリ」活用に向けた3つの支援

 

では、フルキャリ活用のために何をすればよいのでしょうか。私は次の3つだと考えています。すなわち、①個々の「ライフ事情に基づく個別のキャリア開発」と、それを支える②「業務とキャリアに必要なライフ事情の共有」、そして③「育児との両立期でも仕事で成果を出すための支援」です。それぞれの具体的な内容は、先進企業の取り組み例が参考になると思います(表参照)。

 

先進企業の「フルキャリ」支援の取り組み

 

いずれの企業の取り組みも、出産後も継続して自社で“キャリアを積むこと”を支援するものであり、出産後は仕事をセーブして“就業を継続すること”を支援する従来の支援とは一線を画します。
各社の事例は制度や仕組みになっているために、すぐに取り組むことが難しいと考える企業も多いでしょう。ただ、各社に共通している考え方は極めてシンプルです。「あなたの会社への貢献に期待し、応援している。」「会社への貢献をコミットする人には足し算で支援して支える。」という考え方です。

その大前提となるのは、上司と女性本人双方の「思い込みをなくすこと」だと私は考えます。「両立が大変だろうからこの仕事はお願いできないだろう」「こんなことを求めてはかわいそうであろう」という育児中の女性に対するマネジメント側の思い込みや、「家庭事情を話しても迷惑であろう」「やりたい、出来ると言って出来なかったら申し訳ないから・・・」という女性本人の思い込みを、コミュニケーションを通じて解消してくことが重要だと考えます。ライフイベント発生後は、それぞれの事情が大きく異なり、またそれは時間とともに変化することを前提に、思い込まずに定期的にコミュニケーションを図って事実を把握していくことが、ライフ事情を抱えた社員のパフォーマンス最大化のための第一歩だと考えます。

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn
NRIジャーナルの更新情報はFacebookページでもお知らせしています

NRI JOURNAL新着