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人や企業をつなげる新たな産業インフラ――日本は「MICE」をどう活かすべきか?

社会システムコンサルティング部 岡村 篤

2017/11/22

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「MICE(マイス)」とは、ビジネスイベントなどの総称です。以前から観光面での経済波及効果が注目されてきましたが、現在では産業の振興、人や情報の交流、特別な場を通じた価値創造といった付加価値に目が向けられ始めています。野村総合研究所(NRI)で産業振興の観点からMICEの促進に携わってきた岡村篤に、MICEの現状や日本での課題、今後の可能性について話を聞きました。

 

観光による消費だけではない、MICEの本質的な効果

 

――MICEにはどんな活動が含まれますか。

 

MICEは、Meeting(企業会議)、Incentive(報奨旅行)、Convention(学協会会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとった言葉です。Meetingは、企業主催の会議やイベントを指し、商品説明会や研修なども含まれます。Incentiveは、企業内の成績優秀者を招待する特別な報奨旅行です。海外企業では一度に数千人が参加することもあります。Conventionは国際機関・団体、学会等が主催する会議。Exhibitionは展示会や見本市で、その場で商取引が行われることが海外では一般的です。

 

――日本では、いつ頃からMICEが注目されたのでしょうか。

 

観光庁がインバウンド(訪日外国人旅行)促進の一環としてMICE振興を打ち出した2010年が、「MICE元年」とされています。当初はCに焦点がおかれていましたが、国際会議の誘致にしても、訪日外国人の消費による経済効果ばかりが注目されていました。しかし、今は、M、I、Eも含め、産業振興や企業の成長促進など効果にも目が向けられるようになっています。宿泊や飲食などの経済波及効果は一部の地域のメリットにしかなりません。しかし、イベント自体における参加者のスキルアップやネットワーキングなどによる効果は多くの企業や産業に影響を及ぼします。例えば、日本で国際学会を開催すれば、海外に行けない学生や研究者が最新の知識に触れ、研究者間の交流が促進されます。個人の能力向上のみならず、日本の科学技術力の向上につながります。また、企業が展示会に出展すれば、低コストで大勢の潜在顧客と短期間に会うことができ、中小企業振興にも役立ちます。その意味で、MICEは「産業インフラ」だと私は考えています。

 

日本は収容力と提案力などに課題

 

――国際競争力の点で、日本はどのような状況ですか。

 

企業会議(M)や報奨旅行(I)の誘致で、日本はタイやシンガポールなどのアジア競合国に後れをとっています。都心部の好立地に数千人規模の大人数を収容できる高級ホテルやMICE施設が圧倒的に不足しており、受け入れ態勢が整っていないためです。また、日本のホテルや施設の多くは、長らく旅行者に「場所」と「おもてなし」を提供することで収益を得るビジネスモデルをとってきました。

 

一方、世界ではMとIのマーケットを意識し、主催者の目的に合ったプログラムを提供する提案型ビジネスが主流となっています。仮に日本で報奨旅行を実施するのであれば、単にホテルで豪華な食事をするだけではなく、その土地にしかない「ユニークベニュー」(特別な場所・施設)などでイベントを行い、通常の観光では味わえない体験を提供する、というようなことが求められているのです。参加者の満足度が高まり、その後の仕事のモチベーションに直結するため、主催者もそうした提案力のある国を訪問するのです。

 

――ハード面でもソフト面でも課題があるわけですね。

 

最近では、日本でも京都の二条城をパーティー会場として活用するなどの動きが少しずつ出てきました。東京、横浜、京都、札幌、福岡などの自治体はMICEの意義を理解し、地元企業を巻き込みながら、地域産業として付加価値を出す方法を検討しています。

福岡では、戦略分野である「食」「イノベーション」「都市インフラ」などの産業を育てる手段としてMICEを振興するという明確なビジョンを掲げ、それに合致するイベントや展示会を誘致・開催しています。このため、さまざまな分野の地元企業もメリットを感じて協力しています。

 

MICEは価値創造の機会

 

――企業はMICEをどう活用すればいいのでしょうか。

 

新しい価値を生み出すためには、一部署や一企業の努力では限界があります。さまざまなバックグラウンドを有する人材同士が交流し、刺激し合うことで、新しいアイデアやコラボレーションが生まれます。また、例えば海外M&Aを行った日本企業がグローバル研修を開催する時には、チームビルディングプログラムやその効力を上げるユニークベニューがあれば、研修効果がより大きくなるでしょう。欧米ではミーティング・プランナーという専門職が存在し、企業もそうした機会や場を重視して多額のコストをかけています。

 

MICEを活用すれば、広報のあり方も変わってきます。例えば、ある海外メーカーは上野の東京国立博物館で新商品の発表会を行いました。単に広いホールで開催するのと違い、東京国立博物館の持つ信頼感やブランドイメージが商品に加わるのです。さらに、ユニークベニューでの体験が参加者のSNSなどから拡散されれば、マス広告を打つよりも費用対効果は高くなります。

 

こうしたチャンスを生かせるかどうかで、企業の業績も大きく変わるはずです。MICEの真の意義を理解し、競争力向上の手段としてビジネスに活用してほしいと考えています。

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E-mail: kouhou@nri.co.jp

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