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NRI トップ NRI JOURNAL DXがもたらす未来(前編) ~KDDIデジタルデザインの挑戦

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DXがもたらす未来(前編) ~KDDIデジタルデザインの挑戦

#DX

#経営

#立松 博史

#CX

2018/06/27

デジタル技術の進展は、私たちのライフスタイル、ビジネス、社会を急速な勢いで変えつつあります。そして現在、デジタル技術を活用して生産性や顧客への提供価値を飛躍的に向上させる「デジタル・トランスフォーメーション」(デジタルによる変革:DX)への対応力が、企業の盛衰を左右する重要な要因として、あらゆる産業分野において必要とされています。企業のDX推進を支援するために、KDDIと野村総合研究所(NRI)のジョイントベンチャーとして誕生したKDDIデジタルデザインの桑原康明社長と立松博史副社長に、DXがもたらす企業変革の可能性を聞きました。
(TOP写真:左から立松副社長、桑原社長)

 

デジタル化により生産性と顧客体験価値の向上が飛躍的に高まった

 

――なぜここ数年で、DXが脚光を浴びるようになったのでしょうか。

 

立松:一つには、企業にとって生産性の向上が待ったなしの状態だからです。日本の人口、特に労働力の中核となる生産年齢人口の減少が、経済の持続的な成長に深刻な影響を及ぼすようになっています。この社会問題を抜本的に解決するためには、デジタル技術を活用して仕事の効率性を飛躍的に向上させていかなくてはなりません。一方で顧客体験価値(CX)の提供についても環境が大きく変わってきています。今は1人1台スマホを持ち、IoTの進展であらゆるモノがネットワークにつながるようになってきています。デジタル技術によって、ビジネスや働き方だけではなく、日本人一人ひとりの生き方を大きく変えていける可能性が出てきているのです。

 

桑原:近年、商品を紹介するレコメンドの精度が明らかに向上してきていると消費者が実感できるようになりましたね。これによって顧客体験価値(CX)は上がり、消費につながっています。つまりデジタル技術の進展と共に、ビッグデータ活用が本格化し、その効用である最適化が進んだこと、そして予測精度が飛躍的に高まったためと思われます。このようにお客さまが実感できることで、DXの価値が認められ、盛り上がりを見せているのです。

 

DXは企業活動すべてを再定義する

 

――企業のIT投資は、コスト削減や業務効率化だけでなく、CX価値の向上にも力を入れなくてはなりませんね。

 

桑原:そうだと思います。「モノ」の価値がコモディティ化してしまい、消費者が進化を実感しにくくなっているのに対し、体験価値、すなわち「コト」が与える感動というのは無限です。従って、業務の効率化や合理化に使われていた「守り」のIT投資だけでなく、サービスやプロダクトの魅力度向上、それによる顧客の増加、売上や利益の増加につながる「攻め」のIT投資へのシフトが進みつつあり、その核となるのが「CX」だと考えます。それが最近の潮流でしょう。

 

立松:顧客データや市場データをより多く集めて分析し事業に活用していく、いわゆるビジネスIT※1の投資は確かに大切ですが、だからと言って、コーポレートIT※2と言われる従来行われてきた基幹システムの再構築を疎かにしてよいということではありません。インプットされるデータ量とスピード感が従来とは全く変わってきたので、社内のPDCAサイクルも変わらざるを得ません。サービス、ビジネス、業務プロセス、さらには人材も含めて、企業活動のすべてを再定義していくのがDXだと思います。その観点から、業務の効率化や安定運用を目的に構築されるコーポレートITも、見直していかなくてはならないと思います。

 

  • 1 ビジネスIT: お客さまのビジネスの拡大に直接貢献するIT。デジタルマーケティングやFinTechが含まれる。
  • 2 コーポレートIT: お客さまの内部事務の効率化に資するIT。従来型のバックオフィスなどで使われる大型システムなど。

 

 

PoCを通じて技術理解を深める

 

――デジタル活用と言いながら、PoC(Proof of Concept:実証実験)止まりになることも多いと聞きます。

 

立松:原因の一つは、データを収集して分析するプロセスや組織だけが独立してしまっていることでしょう。データを集めて分析すると、こんな傾向が見られるというところで話が終わってしまい、その結果を実際のビジネスに結びつけられないのです。長期的なシナリオを描いた上で分析に取り組まないと目的を見失い、なぜ取り組んでいるのかがわからなくなります。
すぐにIT投資に踏み切らないまでも、様々なデジタル技術を試しておくことは大事です。そこで知見を蓄積して、いざという時に最適なテクノロジーを使って他社より先に変革する。それが、PoCのあるべき姿だと思います。

 

桑原:売上や利益に直結するCX向上をPoCで目指す場合、装置的なものに加え、実際に反応を測るための顧客基盤やチャネルが必要ですが、ほとんどの企業がそうしたものを十分に持っていないのが実情です。たとえば、ネット中心で顧客接点を構築してきた企業が、リアルに進出しようとしても、リアル接点がないため、PoCが難しい。あるいはモノを作っている会社がIoTでサービスをアドオンしようとしても、メーカーは販売して終わりなので、お客さまとつながっていないため、その成果を測る手段がない。CX向上を実現するためには、自社の経営資源にない部分を補う外部のパートナーが必要ですが、それをうまく見つけられない、あるいは活用できていないのではないでしょうか。

 

KDDI×NRIだから実現するスピーディーかつOne faceのDX戦略

 

――先に進めない企業に対して、新会社KDDIデジタルデザインはどのような支援ができるのでしょうか。

 

桑原:DXを実現するためには、ビジネスとデータアナリティクスを緊密に連携させて検討する推進力が絶対に必要になります。またほとんどのケースは自ら築いてきたビジネスモデルを毀損しますし、自社だけで改革するのは非常に難易度が高いため、DXを支援してくれるパートナーの存在は欠かせないと思います。また、KDDIには法人個人合わせて5,000万契約のお客さま基盤(法人企業契約数十万社を含む)があるため、それは一つの「経済圏」であり、各企業が目指すモデルが受け入れられるか、新たな価値を生み出すか測ることができます。そこにNRIのコンサルティングの視点、システム運用の力が加われば、より早く、より現実的にこのサイクルを回すことができる。両社の強みをうまく使えるのではないかと思っています。

 

立松:企業がビッグデータを収集・蓄積して分析する場合、情報漏洩などのリスクにも対応しなくてはなりません。そこはNRIに強みのある領域です。複数の事業部門にまたがって存在している顧客データと部門の壁を越えて共有していくことが重要です。日本企業の独特の力学や考え方を理解したコンサルタントが伴走しながら、単にテクノロジーを入れて業務の枠組みを変えるだけに留まらず、ビジネスにまで結びつける。そうしたケイパビリティも十分に生かせるでしょう。

 

次のページ:DXがもたらす未来(後編)

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