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NRI トップ NRI JOURNAL 『ITナビゲーター2019年版』――2024年度までのトレンド予測

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『ITナビゲーター2019年版』――2024年度までのトレンド予測

#DX

#北 俊一

2018/12/27

野村総合研究所(NRI)では毎年、IT市場を展望し、これからのビジネスモデルの可能性を洞察する『ITナビゲーター』を出版しています。その2019年版では、昨年取り上げた26分野に加えて、デジタル技術を活用して多様な業界・分野に構造変革をもたらす「xTech」を含む5つのトピックを新設。消費者調査や従業員調査も合わせて実施し、2024年までの市場規模を予測しました。本稿では、特に注目される分野の最新動向と今後の見通しについて紹介します。

5Gが加速するデジタルトランスフォーメーション――コンサルティング事業本部 パートナー 北 俊一

2019年から5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが始まります。5G はSociety5.0を実現させるプラットフォームとして、社会や産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させ、場所や時間に制約されない働き方や雇用形態を実現させるものとして期待されています。とはいえ、5Gを含めたデジタル技術は手段にすぎません。

北 俊一

デジタル・ディスラプションが加速する中、いずれの業界・企業も提供価値の再定義に迫られています。従来であれば、放送業界は「視聴者」、小売業界は「消費者」、銀行業界は「預金者」と、業界ごとに利用者を異なる定義で捉えていたのですが、今後は業界を問わず、手元のスマートフォンであらゆるサービスを手に入れる「デジタル生活者」に向けて価値を提供しなくてはなりません。そのうえ、2024年には50歳以上人口が5割を超え、通信業界では固定電話網がオールIP化され、交換機の保守に携わる人員不足が深刻化します。社会や産業全体で、人づくりや生産性の革命が求められているのです。

環境変化に翻弄されないためにも、企業にとって拠り所となるのが、経営理念やビジョンです。自社が世の中にどのような価値を提供するかをしっかりと定義し、5Gを含む多様なデジタル技術を駆使しながら何度も自社変革可能な会社に生まれ変わるためには、デジタル人材を育成することが急務であると、NRIでは考えています。

台頭するeスポーツ産業――ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 隈部 大地

隈部 大地

eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略称で、ゲームを使って競技をするものの総称です。性別や年齢、身体能力を問わず、誰でもプレイできることから、世界中で爆発的に普及しています。2018年の市場規模は世界全体で約9億ドルですが、2021年には16億~30億ドルになるとの予測があります。

日本でも、ゲーム関連業界に限らずeスポーツに注目する企業が増加しており、KDDI、レオパレス21、イオン、日本テレビなどの企業が参入しました。しかし、日本の市場規模はわずか5億円と世界に大きく出遅れています。

その背景には、認知度の低さと、受容性の低さ(ゲームをスポーツと呼ぶことへの違和感)、法律上の問題などがあります。法律上の問題により、高額な賞金の提供や、大会の開催が難しくなっています。今後、普及を進めるためには、まずはeスポーツを正しく認知してもらう必要があります。そのためには、eスポーツの魅力を発信するスター選手の存在が大切です。大会を開催するだけでなく、教育や医療現場などに利用シーンを拡大することも期待されます。

スタートアップ企業を支える中国深圳のエコシステム――NRI上海 鄭 源

中国のイノベーションの躍進を支えているのは、深圳と言っても過言ではありません。北京や上海と比べても新規登録企業数が多く、東京の約9倍の38万社にのぼります。中国のPCT(国際特許出願数)の半数以上を占めるのも、深圳に本部を置く大手企業です。

深圳は「ハードウエアの町」というイメージが強いのですが、最近ではヘルスウエア、ツール・ソフトウエア、EC分野における起業が急増しています。また、深圳のファンドの投資規模は500億元。年間約900件もの投資を行っています。スタートアップ企業を資金面や開発面などから複合的に育成・支援するプレーヤーや場が揃っているのです。

NRI上海 鄭 源

人、資金、場が集積した“双創”地域である深圳で、日本企業がスタートアップ企業と提携するためには、何らかの接点を持つことが重要です。そして、メーカースペースやアクセラレータを活用して速やかに小さな成功事例をつくり、その経験をもとにグローバルでのR&Dを最適化することを検討すべきでしょう。

産業用ドローン市場――ICTメディア・サービス産業コンサルティング部  名武 大智

名武 大智

産業用ドローン市場は2018年時点で推計319億円、2024年には1500億円に達することが見込まれます。ドローン市場は用途によって大きく「農林水産業の生産支援」「インフラ点検検査」「空撮・監視」「測量」「輸送」の5つに分かれます。現時点で最大規模となっているのは農薬散布で、日本における水田の4割以上でドローン(産業用無人ヘリコプター等)を使って農薬散布が実施されていると言われています。今後成長が有望視されるのは、橋梁や電力設備など社会インフラの点検検査です。輸送も、離島間での物流の実証実験などが既に始まっていますが、安全性における課題などから商用化には時間がかかると想定されます。

ドローン活用の今後の進展には、政府の役割も重要です。政府はドローン利活用に関するロードマップを作成し、レベル2「目視内での自動・自立飛行」は商用化が進み、レベル3「無人地帯での目視外飛行」は今年から実証がスタートしています。ただ、レベル4「有人地帯での目視外飛行」の達成に向けては、事故発生時の責任の所在や保険制度の見直し、社会の受容性など、技術面以外のハードルが山積しています。政府と産業界が連携し、産業としてどう発展を遂げていくかを注視していく必要があります。

サステナビリティ経営とICT活用――ICTメディア・サービス産業コンサルティング部長 柳澤 花芽

2024年に向けてさまざまな注目トピックがあります。今や、ICT(情報通信技術)と関係ない業界はなく、すべての企業がICTの最新動向を把握しておくことは重要です。また、企業が忘れてはならない視点が、サステナビリティ経営です。サステナビリティ経営のポイントは、長期的観点に立ち、経済的価値だけでなく社会的価値にも光を当てるところにあります。デジタル・ディスラプションの脅威が注目される中で、そのリスクを抑制し、新たな事業機会を発見するためにも、企業は自社が中長期的にどのような社会的価値を創出すべきかを見極め、ICTを“意図的”“戦略的”に活用しながら経営をしていくことが大事です。

柳澤 花芽

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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