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5Gでビジネスはどう変わるのか

ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 亀井 卓也

#DX

#ビジネスモデル変革

2019/08/15

2020年から第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスが始まります。高速大容量、超信頼・低遅延、多数同時接続を特徴とする5Gには、どのようなビジネスチャンスがあるのでしょうか。5Gの技術、ユースケースの動向に詳しい野村総合研究所(NRI)の亀井卓也に、5Gの活用可能性について聞きました。

「コネクテッド」で新しい価値を生み出す

――5Gに変わることで、何が可能になるのでしょうか?

消費者が最初に実感できるのは、エンターテインメント分野の変化だと思います。仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を使った新しい体験ができるコンテンツが制作・配信されることで、東京オリンピックを皮切りに、ライブ・スポーツやゲームといったエンターテインメント業界でチャンスが広がると予想されます。

しかし、5Gの本領が発揮されるのは、タブレット端末やスマートフォンに代表されるパーソナルデバイス向け以上に、産業部門だと私は考えています。つまり、コネクテッド・カーをはじめとして、医療、工場、広告など、さまざまな産業の分野で5Gを用いた新サービスが出てくることでしょう。

――具体的にどのようなサービスでしょうか。

たとえば、自動車の安全運転支援があげられます。高速道路で渋滞が起こるのは、急ブレーキをかけることが原因だと言われますが、運転手に見えているのは直前の車だけなので、道路の全体状況を予測しづらいのです。コネクテッド・カーが5Gを活用することで、例えば前の車が撮影した映像をクラウドにアップして、後続の車にも共有することができ、2台前の車のブレーキの踏み具合を念頭に、これまでと違う安全運転が実現する可能性があります。

また私が興味深いと思ったのが、東京女子医大のスマート治療室「SCOT」です。手術室に通信システムを入れ、遠隔地にいる熟練医に画像を送り、手術を担当している若い医師にアドバイスできるようになっています。判断力に長けている熟練医師と、手技は上手いものの手術経験の浅い若手医師を組み合わせれば、判断力と手技を兼ね備えた凄腕の医師に替わる、凄腕の手術チームを増やすことができます。これは地方の医師不足など社会問題の解決にもつながり、医療を変えていく可能性を感じています。

注目分野は、遠隔操作やカメラによるセンシング

――5Gを導入しやすいのは、どんな分野でしょうか。

まず、遠隔操作が成り立つ業界です。遠隔医療以外にも、人が直接行けないところで建機やロボットを動かす実証実験も行われています。状態・量の変化を捉えたい領域にも、高速大容量通信の特徴を活かすことができます。特に、高精細カメラを活用することにより、センシング技術を大きく進化させられるので、工場や物流センターなどでの工程監視、ピッキング、物流の追跡といった業務との親和性が高いでしょう。

しかも経済的です。たとえ通信するデータ量が10倍になっても、通信料金は10倍にはならないことが予想されるのでビット当たり単価は下がり、IoT(モノのインターネット)のソリューションもより安価になるでしょう。そうなれば、センサーで部分的に感知していたものを、カメラで全体像を撮影して画像処理するなど、従来と異なる形でのデータ入手・活用が可能になるかもしれません。

――その一方で、通信インフラの整備や対応機器の導入にはお金もかかります。5G対応端末は高額で普及が進まないのでは?

確かに、懐疑的な論調もありますが、チャンスがあると思って導入する人が多ければ、通信事業者もさらに投資し、よりよいインフラになり、通信料やデバイス価格も安くなります。そうなればさらに多くのユーザーが集まり、正の循環が回り始めます。私も含めて、5Gに期待している業界関係者は、ぜひそうした正の循環を創出したいと思っています。

B2B2Xモデルで新しいユーザー体験をつくる

――現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業が増えていますが、そこに5G を入れれば応用範囲が広がりそうですね。

そうだと思います。ただし、5Gが騒がれているから、どう使うかを考えるのではなく、あくまでもDXの一環として、そこに「コネクテッド」という要素を加えたときに、何か新しい価値が生まれないかと考えてみることが大切です。特に、通信事業者が持つ通信インフラや保有データなどを活用することで、自社単独ではできなかった新しいユーザー体験を提供できるはずです。その意味でも、今後は通信事業者とユーザーの間に他の事業者が介在するB2B2Xモデルが重要になると思います。

B2B2Xモデル

5Gの商用サービスはまだ始まっていないので、具体的なメリットや活用法はイメージしにくい人も多いでしょう。2019年9月開催のラグビー・ワールドカップをはじめ、本年は一般の人向けに5Gを使った遠隔体験ができるイベントも開催されます。そうした機会を捉えて、自分で実際に5Gを体感し、どう活用できるかを考えてみるのがお勧めです。NRIとしても、通信分野と様々な産業分野にかかる知見やこれら産業とのネットワークを活かして、ビジネスモデルの転換や新しいユーザー体験づくりを支援し、業界融合型の取り組みを促進していきたいと考えています。

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株式会社野村総合研究所
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E-mail: kouhou@nri.co.jp

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