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企業を守り、製品・サービスの品質を保証する文書/記録の管理とは

産業システムデザイン部 高橋 潤

#業務プロセス改善

2019/09/02

昨今、自動車業界や建設業界におけるデータ改ざん等の「文書/記録の管理上の不適切な事案」が散見され、中には企業のブランドイメージを大きく毀損してしまう事例も発生しています。安全・安心を担保しつつ効率的な文書/記録の管理手法はなぜ確立できないのか、文書管理システムに長年携わってきた野村総合研究所(NRI)の高橋潤に、文書/記録の管理の課題と重要性について聞きました。

適切な文書/記録の管理はなぜ困難なのか

従来の文書管理システムは、ファイルを保存することが主たる目的であり、データ改ざんに対する備えが十分ではありませんでした。電子データの上書き、削除が可能な仕組みでは、電子データの信頼性が高いとは言えません。
そのため、文書/記録の情報を電子データとして管理する一方、同じ内容を紙の文書に署名・捺印を加えて正本として保管することが一般的です。しかし、この方法も文書/記録あるいは電子データの差し替えなど、改ざんの余地を残していました。

また、かつての日本企業は現場の社員の技術力や営業力に支えられて成長を成し遂げてきた経緯があるため、現場の裁量権が大きく、重要な文書/記録の管理も現場に任されてきました。それはまた、自社内で全ての業務を完結させる「自前主義」や、社員の流動性が低かったため「性善説」が有効に機能していたことも背景にあります。

しかし、企業をとりまく環境や事業モデルは大きく変化しています。現在では、多くの企業で業務プロセスが複雑化しています。1つの商品・サービスに多数の社員が関わり、業務の一部を社外に委託することも当たり前になっています。バリューチェーンの水平・垂直分業、グローバルでの最適化配置など事業の枠組みは大きく変化し、多様なコラボレーションによって成り立っており、文書/記録の電子化による一元管理が必須となっています。たとえば、製造業における協力会社との設計文書の共有、建設業でのビルやマンションの設計・施工・管理などの情報共有では、企業の枠を超えた一元管理が求められます。
ステークホルダーが増え続けるなか、性善説に基づく文書/記録の管理は限界に近づいていると言えます。

適切な文書/記録の管理には業務プロセスの見直しが不可欠

データの改ざんや漏えいなどが明るみに出た際には企業ブランドのみならず、事業運営にも大きな影響を与えることになります。こうした事態を考えると、適切な文書/記録の管理は重要な経営課題と言えます。対処すべき課題は、文書/記録のライフサイクルマネジメント業務の確立と、デジタル技術による見える化です。

具体的には、①文書/記録を電子化し、適切なタイミングで適切な人が電子署名を行うことで有効な電子データとすること、②有効な電子データと、作成中や有効期限切れなどの無効な電子データとが混在しないこと、③いつ、誰が、何をしたのか監査証跡を残し、操作の履歴を容易に確認できること、④こうした電子データを長期間、改ざんできない形式で保存すること、などです。

しかし、これまではこうした機能を備えた文書管理システムは高額であり、一部の業界での運用を除いて、一般的ではありませんでした。
さらに、安全・安心な文書/記録の管理が必要であることは認識していても、売上や利益に直結するものでないことから、経営者に対してその内包するリスクを十分に説明できず、優先順位が低いと判断されがちであった経緯もあります。

先行してきた医薬品業界の文書管理システム

米国FDA※2や厚生労働省は、医薬品や医療機器業界に対し、90年代より製品の品質に関係する文書/記録の厳密な管理を求めていて、査察時には文書/記録の管理を確認対象としています。

そのため医薬品や医療機器メーカーは、研究開発から市場投入され、その後、製品が市場で販売されている間(一般的に数十年)、製品の品質を担保するために、その間の調査・研究データの信頼性を担保できる文書管理の仕組みを構築してきました。文書/記録の作成者、承認者を明確にすること、有効・無効を明確にすること、さらに長期間改ざんの余地がない状態で管理することが必須条件です。

NRIは、医薬品・医療機器業界の文書管理サービスPerma Documentを提供してきました。これは、電子データの保管はもとより、バージョン情報や配布・教育履歴、監査証跡などを一元管理するサービスです。利用実績は45社、1万ユーザー。サービス開始から10年以上、この業界の規制対象となる文書/記録を電子的に保管しており、利用している企業は厚生労働省やFDAの査察も受けています。

Perma Documentを幅広い業種・業態へ展開

10年前のサービス開始にあたり、クラウドコンピューティングの利用可能性の検討を進めてきましたが、当時の情報セキュリティ技術や社会的な認知からクラウド環境へのデータの保管は時期尚早と判断し、データの保管に関しては金融業界においても定評のあるNRIのデータセンターを活用してきました。
このたび、Perma Documentをクラウド空間上に構築しスケーラビリティを確保することで、より多くのお客様にご利用いただけるようサービスの拡充を図りました。

クラウドであるがゆえに、他社とのコラボレーションも、セキュリティを確保しながら実現可能です。さらに、全ての仕組みを二重化、三重化し、ビジネスの継続性も確保しています。

文書管理業務の改善は情報セキュリティと同じく、インシデントが発生してから対応する、という動きになることが多い分野ですが、信頼性の高い文書管理システムの利用は、製品やサービスの全体品質を向上させ企業の信頼性を増すばかりでなく、万一の際には企業活動そのものの社会に向けた証明となり、企業ブランド防衛の有効な手段ともなります。NRIは、適切な文書管理がより多くの業界で促進されるよう、微力ながら今後も支援していきたいと思います。

  • 1 SOP管理: 標準業務手順書
  • 2 FDA: アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)

上記課題を解決するシステムへのリンクはこちら

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E-mail: kouhou@nri.co.jp

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