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データマネジメントがDXの成否を分ける

野村総合研究所(NRI)執行役員 金融ITイノベーション事業本部副本部長 北川 園子

#DX

2020/02/12

企業にとって重要な経営資源は長らく「ヒト・モノ・カネ」と言われてきたが、来るべきデジタル資本主義の時代は「人材」と「データ」であろう。とりわけ、「データは新しい石油である」と言われるように、デジタルデータは企業にとって新たな富を生み出す源泉になってきている。
しかし、企業が保有しているデータをいかに有効活用するかといった「データマネジメント」については、まだ発展途上といえる。
野村総合研究所(NRI)が国内企業75社に対して全社レベルでデジタル化の準備度合いを表す「デジタル体質」を診断し、デジタル体質の高いトップ企業と、部分的にデジタル体質を高めたセカンド企業を比較したところ、両者で最も顕著な差がついたのがデータマネジメントであった。つまり、「全社で有しているデータを把握できており、社内外のデータを組織の壁を越えて利用できる環境が整っているか」という質問に、トップ企業は76.5%が「できている・どちらかというとできている」と回答したのに対し、セカンド企業は0%であった。かなり極端な差が出た調査結果であり、データマネジメントの巧拙が、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の成否を分けるといっても過言ではないと思う。

データマネジメントの要諦は「環境」「風土」づくり

ところで、そもそもデータマネジメントとは何をすることなのだろうか。私は二つのことが大事だと考えている。
一つ目は、「データにアクセスしやすい環境づくり」である。簡単なようで、このことが実はなかなか難しい。というのも、日本企業は自部署のデータは自部署だけのものであるというセクショナリズム意識が強く、なかなか部署外に出したがらない傾向がある。また「情報共有」を進めるも、それ自体が目的化し、アクセスしてもデータ量が乏しく、欲しい情報が得られない、あるいはデータが分散しており(一部は有識者の頭の中にのみ存在)、簡単にはたどり着けないケースもある。まずリアルタイムにアクセスすることも大事なのだが、欲しい人が、欲しい時に、欲しい形で入手できるように整えていくことが最も重要である。
データマネジメントの要諦の二つ目は、「データを活用しやすい風土づくり」である。冒頭に紹介した「データは新しい石油である」という言葉には実はいくつもの意味があって、「(データは)加工しなければ価値が生まれない」という皮肉も含まれているのだ。
現在、データマネジメントに積極的に取り組んでいる企業でも、ガバナンス上の理由からIT部門が一元的に全社のデータ管理をしていることが多い。IT部門からすると、安全なデータ管理・データ品質が最重要課題であって、データが使われるかどうかにはあまり関心がない。このため、提供されるデータの形のままでは使い勝手が悪く、営業部門や企画部門が自身の目的に応じてその都度加工することになる。
データは定型業務で使う時代から、攻めの業務効率やカスタマーエクスペリエンス(CX)向上にトライアルを繰り返して活かす時代に変わってきている。この変化に対応するためには、データマネジメントを主管する部署が一次データだけでなくデータ加工ツールも合わせて提供し、モニタリングや使用推進までフォローできるのが望ましい。そうすることで、若年層をデータ加工の資料作りから解放することにもつながり、「働き方改革」の趣旨にも合っている。

適切にデータマネジメントを実施するための3つのポイント

企業がデータマネジメントをうまく実施していく上でのポイントは三つある。
一つ目は、責任の所在の明確化である。データマネジメント戦略というものは、部分最適ではなく全体最適の中で考えなくてはならない。そのためには特定部署に任せるのではなく、データマネジメント担当役員を企業に設置するのである。ただし、いきなり専任者を置くことは難しいので、まずはCMO(Chief Marketing Officer)など、全社横断で変革を推進できるポジションの役員が兼務するのが望ましい。
二つ目はKPI(Key Performance Indicator)の設定である。あまり複雑なものを設定すると機能しないので、シンプルなものが望ましい。データマネジメントの場合は、データやツールが活用されたかどうか、つまり「1年以内に使用された」「役に立った」「検索された」といった分かりやすい指標で効果を検証することである。
最後に、データの置き場所というのも大きな課題である。現在は社外とのコラボレーションが増えているため、社外とつながっていかないとプロジェクトが組成すらできない状況にある。特定企業内にデータを保管して、他社が常時アクセスできないような状態では業務が滞ってしまう。セキュアかつ柔軟性があるプラットフォームの選定は、データマネジメントの上で重要な検討事項なのである。

知的資産創造12月号 MESSAGE

NRIオピニオン 知的資産創造

特集:医療・ヘルスケアビジネスによる事業成長を幻想に終わらせないために

用語解説

KPI(重要業績評価指標)

Key Performance Indicator

業績管理評価のための重要な指標。KPIを正しく設定することは、組織の目標を達成する上で必要不可欠である。

KPIとは、組織の目標を達成するための重要な業績評価の指標を意味し、達成状況を定点観測することで、目標達成に 向けた組織のパフォーマンスの動向を把握できるようになります。仮に、目標値からギャップが生まれた場合には、組織行動が当初想定の方向に向かっていない ことを意味し、活動の修正が必要です。

日常業務にも設定できる

通常、KPIというと、EVAや営業利益率といった会社全体での財務指標がまずイメージされがちですが、必ずしもそれだけではありません。

例えば、あるSI企業では、既存顧客からの売上拡大を目標とする営業部門に、顧客訪問回数・勉強会開催回数やクレーム発生件数といったKPIを設定し、個人の実績評価とリンクさせています。また、バランス・スコアカード(BSC)の枠組みでは、財務・顧客・内部プロセス・組織学習に合わせてバランスよくKPIを設定することが重要です。

わかりやすさと納得感

KPIを用いてマネジメントする際にしばしば起こる問題としては、苦労してKPIを設定したものの、KPIがあまり意識されずに行動されてしまうことがあげられます。これは、そもそもKPIが複雑すぎたり、目標とKPIの因果関係の希薄さ、KPIの趣旨徹底の甘さが原因になっていることが多いようです。

このような状況に陥らないためには、KPIの数を多くしないことが重要です。一組織・個人に設定するKPIの数は3~5個が適当とよくいわれます。最大でも10個程度で、それ以上になるとたいていの人は理解できなくなってしまいます。また、組織目標・戦略の変更に応じて、KPIを柔軟に変更することが重要です。時間の経過とともにKPIと目標との因果関係が薄れ、KPIが形骸化してしまうことが多いからです。従業員の理解促進のために、教育プログラムを実施したり、KPI設定プロセスに参加してもらったりすることも重要になります。

KPIの具体例

 

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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