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AIの現状とビジネスでの活用

金融デジタル企画一部 角田 充弘 外園 康智
NRIデジタル 田村 光太郎

#AI

2020/04/06

2019年12月、人工知能学会のセマンティックウェブ・オントロジー研究会の主催による第2回「ナレッジグラフ推論チャレンジ」が行われました。このコンテストは、シャーロック・ホームズの5つの小説の犯人をAIで推論し、その根拠を検証するという内容でした。9チームが参加する中、野村総合研究所(NRI)は2年連続で最優秀賞を受賞しました。このコンテストに参加し、AIに関するソリューション開発に携わっているNRIの角田充弘、外園康智、NRIデジタルの田村光太郎に、AIの現状やビジネス利用におけるポイントについて聞きました。

スマートスピーカーのAIは「発展途上」

声による指示で音楽の再生、家電の操作、ニュースの読み上げなどを行うスマートスピーカーは、AIを身近に感じさせてくれる製品の1つであり、2019年には多くの企業から発売されて話題となりました。しかし、角田充弘は「スマートスピーカーはまだ発展途上の段階にある」と話し、その理由を次のように説明しました。

「現状のスマートスピーカーは、AIが理解できるように人間が話す必要があり、人間がAIに合わせた話し方を教育されているような状況です。AIは命令が理解できないとき、『分かりません』など応答するだけで、ユーザーから『この言い方のときはこういった動きをしてほしい』と教えることも難しい。これがスマートスピーカーの今の実力でしょう」

人間の言葉を理解して適切に応対するといった、AIによる自然言語処理は難しく、特にチャットボットやAIとの雑談などは、今後大きく発展する余地のある分野であると外園康智は話します。

「チャットボットを使ったことがある人は感じると思いますが、対人間の問い合わせと比べると回答を自分で選ぶ、適したキーワードを入力するといった必要があり、あまり気が利く相談相手とは言えません。文脈から言葉の意味を理解する、相手の意図を汲み取るといったことがAIには難しいためです。スマートスピーカーなどが登場したことで、言語処理の分野が発展したかのように感じられますが、本当に役に立つものにはまだ到達していないと感じています」

また、現状では、AIに対する評価基準がないことも課題だと田村光太郎は指摘します。

「たとえば、AIを活用した翻訳サービスは数多くありますが、よい翻訳とは何かという評価基準はありません。人間の感性に沿った翻訳がよい、といったAIにおける処理の評価基準をどのように検討していくかが今後、重要になると考えています」

ビジネスにおけるAI導入では“長期的な視点”が必要

その一方で、AIによる自然言語処理がビジネス領域で利用されるシーンも増加しているようです。具体的な利用例として、外園は次のように説明しました。

「AIによる言語処理の中で、実用化にもっとも早く到達したものは翻訳でした。英語の原文と日本語の翻訳など、AIの学習に使える対訳データが数多く存在したことが大きな要因でしょう。さらに、数多くある文書をグループ分けする文書分類や長い文章の要約、あるいは決算書などから自動的に解説文を生成するといった用途も実用化が進みつつあります」

こうしたAIソリューションの1つとして、NRIで提供しているのが「Shingan(シンガン)」です。これは文書の中から特定のデータを探し出して抽出する機能を提供するシステムであり、たとえば契約書の中から文書名や契約者、契約金額、開始日や終了日といったものを自動的に抽出することが可能です。

金融商品に関する契約書などの場合、場合によっては100ページを超えるケースもあります。これを先頭から順に内容を読んでチェックするのは相当な時間を要することになります。しかし「Shingan」を利用すれば、契約の受領、あるいは破棄を判断するための条件を自動的に抽出することが可能になり、契約書に関連する業務を大幅に効率化することが可能になります。

このソリューションの特長として、角田は再学習が可能である点を挙げました。

「『Shingan』は文書のどこに何のデータが書いてあるという情報を与えることで自己学習する仕組みをもっており、間違えたとしても正しい答えを教えることで再学習します。つまり教えれば教えただけ賢くなることが『Shingan』の大きなメリットです」

現在、AIソリューションは続々と登場していますが、それらを導入する際には長期的な視点で考えるべきだと田村は指摘します。

「汎用的なAIを搭載しているという触れ込みのソリューションでも、やはり企業や業務に合わせたパーソナライズは必要で、さらに長期的な視点に立つと再学習をどうするかも考えなければなりません。その意味で、PoC(概念実証)で単に『できる』『できない』を判断するだけでなく、より長く使うために必要な機能が備わっているのかを見るべきです」

最後に、ビジネスでのAI活用におけるNRIの強みについて、外園は次のように説明しました。

「たとえば業務を整理した結果、データに手を加えることでAIよりもシンプルなシステムで業務を自動化できるといったこともあります。AIありきで考えるのではなく、上流からお客さまの業務やシステムを俯瞰し、その結果に応じて最適なご提案ができることがNRIの強みだと考えています」

AIは大きなトレンドとなっていますが、現状では何にでも適用できるわけではありません。そのため、AIで解決しようとしている課題は何か、その課題はAIでなければ解決できないのかといった観点で考えることが重要となります。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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