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NRI トップ NRI JOURNAL DX時代のCX――あらゆる産業のサービス業化

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クラウドの潮流――進化するクラウド・サービスと変化する企業の意識

DX時代のCX――あらゆる産業のサービス業化

産業ITコンサルティング二部 栗山 勝宏

DX

CX

2020/06/03

デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中、モノを買って所有する、というこれまでのスタイルとは大きく異なるサービスが次々と生まれ、そのサービスを受ける消費者の価値観にも変化が起こっています。そして消費者の価値観の変化に対応するために、多くの企業に変革が求められています。今後、消費者が本当に求めるものとは何か。この課題に企業とともに取り組んでいる、野村総合研究所(NRI)の栗山勝宏に聞きました。

消費者のニーズはモノの「所有」から「機能」の利用へ

いま、消費者のニーズは、モノの「所有」から「共有」へ、そして「機能」のみの利用へと変化しつつあります。この変化が顕著に現れている事例の一つが、自動車業界です。
従来、自動車業界は車を造って売るという典型的な製造業でしたが、現在、そのビジネスモデルは大きく揺らいでいます。ベースにあるのは、車は「所有」しなくても「共有」して使用できればよい、もっと言えば「機能」つまり目的地までの移動さえ実現できればよいという、消費者の意識の変化です。車は個人で所有せずにシェアードサービスを利用する。移動さえできれば、交通手段はバスでも電車でもタクシーでもウーバーでも構わない。つまり、求めているものは車ではなく、A地点からB地点まで移動できるという「機能」の利用・実現である。――そのように消費者意識が変化していると考えられます。これは、いわゆるMaaS(Mobility as a Service)の前提となる考え方です。
その意味で、これからの自動車業界は単純に車を造って売るということだけでは成り立たなくなってしまいます。顧客に移動という「サービス」を提供する、つまりサービス業化することが求められているのです。さらには、移動先での行為に「目的」があるのなら、その「目的」が果たされさえすれば、必ずしも移動自体は必要なくなる、とも考えられ、従来とは全く違う観点からのサービスが必要になってきます。

「そこでしか得られない」ことの重要性

こうしたサービス業化の流れは多くの産業で起こりつつあります。例えば比較的IT化が遅れていると言われる不動産業界も例外ではありません。
これまで不動産業界では、アクセスが良い土地に物件を確保して顧客に提供することが、特に重要視されてきました。そのため、オフィスであれば、丸の内や大手町のように周辺環境が整い交通至便な場所に物件を持っていることに絶対的な価値がありました。しかし、この価値観も大きく変化してきています。
テレワーク環境が整ったことで、会議や打ち合わせ、セミナーでさえもネットワーク上ですませることができ、必ずしもオフィスで仕事をしなくてもすむようになってきました。さらに、今回の新型コロナウイルスの影響によって人の移動が制限され、テレワークの形で自宅において働くことを余儀なくされている人が多くいます。この状況は、これまでテレワークに縁がなかった人たちにも、その機能や魅力、そして通勤しなくても仕事ができるという事実を伝えることになりました。すでに適応力の高い若手社員を中心に、もともと会社に行く必要はなかったのではないかという声も聞かれるようになっています。彼らが大企業における意思決定の中心である40代、50代になったときには、オフィスに通勤して働くという形は大きく変化しているはずです。それは、場所そのものが持つメリットが相対的に低下することを意味します。
もちろん、オフィスが完全になくなってしまうことはないでしょう。しかし、その役割は変わっていかざるを得ないと考えられます。便利で快適な環境を提供するだけにとどまらず、よりよく働ける、わざわざそこに行くだけの価値がある、刺激を受ける何かがある、そのような「そこでしか得られない」ものの提供がオフィスには求められるようになります。例えば、Web会議などネットワークを使った業務では、目的に沿った情報交換はスムーズに進みますが、オフィスで人間が行き来しているときに起こるような「偶発」やそれによる創造は起きにくい。これはAmazonで本を指定買いするようなもので、書店で体験する、ふだんなら目に入らない本をたまたま手にとるような偶然の出会いは少ないわけです。こうした部分を提供し、イノベーションの創出やコミュニケーションの土壌となることが、これからのオフィスには求められるといえるでしょう。

リアルな場でしか得られない価値を見極めること

現在、新型コロナウイルスの影響で公共交通機関でも利用者の減少などの影響が出ています。これは将来、テレワーク環境のさらなる整備などによって人々の行動が変化した後の風景を、いち早く目撃したものなのかもしれません。これからは公共交通機関でさえ目的地への移動手段というだけではなく、顧客が求める新たな価値を創造するサービス業としての視点が必要になってくるでしょう。
モノを売る店舗にしても同様です。これまでリアルの店舗は人が訪れて商品を買ってくれることで成り立っていましたが、こうした形も変わっていきます。あらゆるものがネットで購入できるようになった今、リアルな店舗でしか提供できないものは何か。それは顧客との接点づくりの場であったり、商品と顧客が「偶発的に」出会う場であったりするのかもしれません。すでに、販売を目的としない、商品を前にした消費者の反応を見ることだけを目的とした店舗も登場しています。
皆さんの働く業界も例外ではありません。あらゆる業界でサービス業化が進んでいます。そのときに、どのような顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)が求められているのか、その本質を見抜いて、真に必要とされるサービスを提供することが何よりも大切になるでしょう。皆さんと一緒に、私たちNRIもこの課題に取り組んでいきたいと考えています。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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