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NRI トップ NRI JOURNAL アフターコロナの働き方改革と女性活躍推進に向けて

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アフターコロナの働き方改革と女性活躍推進に向けて

未来創発センター 武田 佳奈

#働き方改革

#新型コロナ

2020/10/16

野村総合研究所(NRI)では、新型コロナウイルスの感染拡大後に複数回にわたって、働き方および働き手の変化を把握するためにアンケート調査を実施しました(「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う在宅勤務等に関する調査(2020年5月)」、「新型コロナウイルス感染症拡大と働き方・暮らし方に関する調査(2020年7月)」)。調査・分析に関わった未来創発センターの武田佳奈に、急増した「在宅勤務」を企業はどう捉えるべきか、そして在宅勤務を含むリモートワークを活用した新しい働き方の定着が女性の活躍を促進させる可能性について聞きました。

リモートワーク環境の急速な整備により生産性に対する評価が向上

調査では、緊急事態宣言期間中で約7割、7月末時点で約5割が在宅勤務を活用しており、緊急事態宣言期間中に在宅勤務を行った人の7割が7月末時点でも在宅勤務を継続していることが分かりました。

一般に、在宅勤務で問題とされるのが生産性の低下です。在宅勤務による従業員の生産性向上を明らかにした研究で知られるNicholas Bloom教授(スタンフォード大学)も、「コロナ下における在宅勤務で平常時のような高い生産性を期待することは難しい」と指摘しています。同教授はその理由として、コロナ下での在宅勤務が「子どもの世話をしながらの就労」であること、「適切な執務環境の確保が困難」であること、「プライバシーの確保が困難」であること、「働き方に選択の余地がない」ことを挙げています。前述のNRIの調査でも、5月の時点では6割強が子どもの世話をしながら仕事をし、5割が家族と共用するスペースで仕事をしていたことが明らかになりました。我が国でも、Bloom教授が指摘する要因が、在宅勤務による生産性低下を引き起こしていた可能性が高いと考えられます。

しかし7月末に実施した調査では、全体で見ると「在宅勤務によって生産性が下がった」と感じている人が4~5割と多いものの、「生産性が上がった」と感じている人は5月末時点と比べ1 割増加しました。理由としては、7月末時点では学校や保育所等の再開により「子どもの世話をしながらの就労」が大幅に解消したことに加えて、IT環境や業務そのものの見直しなど企業による急速なリモートワーク環境の整備、働き手の習熟などにより、生産性に対する評価が向上したものと推察されます。

在宅勤務の活用がウェルビーイングと生産性の向上に寄与する可能性

在宅勤務によって、仕事面で「主体性の感覚が高まった」ことを実感した人は半数近くおり、3割強は「今の会社で働き続けたいという意欲の高まり」を実感していました。この傾向は、男性よりも女性に、40~50歳代よりも20~30歳代に多く現れていました。

また、「家事や育児などにかけられる時間の増加」を実感した人が6割を超え、「暮らしの満足度向上」を実感した人も約5割いました。この傾向もまた、男性よりも女性、40~50歳代よりも20~30歳代に多く現れていました。

その他、「家族との関係が良好になることが、仕事の生産性に良い影響をもたらす」と考える働き手は6割を超え、「生活満足度が高くなることが、仕事の生産性に良い影響をもたらす」と考える働き手も6割を超えていました。こうした傾向は、いずれも女性に多く見られました。

このような調査結果からは、新型コロナウイルス感染拡大を機に、在宅勤務が実施され、さらにそれが長期化する中で、「在宅勤務が生産性向上につながる可能性」が見えてきたことが示唆されます。これに企業は着目すべきであり、今回明らかとなった働き手の思いを知り、それぞれが最も能力を発揮して働ける場を再構築できるかどうかが今後の試金石になると考えられます。

ライフにもキャリアにも意欲的な「フルキャリ」は女性正社員の2人に1人

働く女性はこれまで、極力家庭やプライベートの都合を仕事の制約にせず、仕事での成果やキャリアアップを重視する「バリキャリ」か、家庭やプライベートライフの時間確保を優先し、それが許す範囲で仕事することを望む「ゆるキャリ」のどちらかで捉えられてきました。しかし実際には、暮らしや子育てにも、仕事やキャリアにも意欲的に取り組みたいと考える「フルキャリ」が存在します。NRIが2018年に実施した調査によれば、「フルキャリ」は、正社員として働く女性の2人に1人にのぼります(「働く女性5,454人に聞く仕事とキャリアの本音調査」)。

こうした「フルキャリ」の活躍を最大限に引き出すためにマネジメントに求められるのは、「期待」「共有」「機会付与」の3つの「き」です。

「期待」とは、仕事での成長・貢献を期待することです。子どもが小さいことや復職直後という理由によって期待することを先送り・躊躇せず、「フルキャリ」本人が、仕事を通じて確実に成長し、成果をあげて組織に貢献することを期待し、また期待していることを伝え、本人にその自覚を持たせることです。

「共有」とは、仕事への意欲と取り巻く家庭の状況を共有することで、働き方で意欲や状況を判断せず、「仕事やキャリアヘの意欲の本音」と「働く本人を取り巻く家庭の状況」を本人に確認し、具体的に把握することです。

そして「機会付与」は、成果を出せる環境が整ってから機会を付与するのではなく、先に機会付与をすることで成果を出せる環境を早期に作り出すことです。

  • 「フルキャリ」は、2015年7月にNRIが発表した新たな価値観、行動特性を持つ働き手の総称。

リモートワークを活用した新しい働き方の定着が、女性の活躍を促進させる本当の理由

3つの「き」は、リモートワーク下におけるマネジメントの「Tips」(秘訣)とも言えます。これは、マネジャーの約6割が、在宅で働く部下について「仕事への意欲や考えをより把握する必要がある」と実際に感じており、「家庭の状況をより把握する必要がある」と考えるマネジャーも半数に及んでいるためです。

また、NRIが2020年7月に男性管理職を対象に行った調査では、在宅勤務などリモートワークの活用が定着することで、子育てしながら働く女性の部下に、これまでよりも「期待しやすくなる」、「登用を検討しやすくなる」と回答したマネジャーも6割に及んでいます(「アフターコロナの人材マネジメントに関する調査(男性管理職調査)」)さらには、子育てしながら働く女性の部下の活躍を引き出し、組織の成長につなげる上で在宅勤務は有効だと答えたマネジャーは8割以上に及んでいます。

個々が離れて働く環境下に求められる「新たなマネジメント」の検討・実践は、「フルキャリ」活躍の鍵を握る「3つの『き』」の実行促進につながり、アフターコロナの女性活躍推進をさらに大きく前進させるチャンスと言えます。リモートワークを活用した新しい働き方そのものだけでなく、その実践・定着によって起こる「マネジメントの変化」こそが、アフターコロナの女性活躍を大きく前進させる原動力となるのです。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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