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NRI トップ NRI JOURNAL 直販という言葉では捉えきれない
顧客体験の革新につながる骨太のD2Cビジネスとは

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直販という言葉では捉えきれない
顧客体験の革新につながる骨太のD2Cビジネスとは

DXコンサルティング部 臼田 慎輔、中島 将貴、福田 李成

DX

2021/03/30

アメリカでスタートアップ企業が成功する事例を機に、「新時代のビジネスモデル」として注目されているD2C(Direct to Consumer)。直訳するとメーカー直販のEC(電子商取引)サイトなどが該当しますが、本来は顧客体験を進化させる骨太なコンセプトだと、D2Cの動向に詳しい野村総合研究所(NRI)の臼田慎輔、中島将貴、福田李成は考えています。DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環としてD2Cビジネスに挑む際に、何に留意すればよいのかを聞きました。

海外の成功事例の単なる踏襲ではうまくいかない

――アメリカでは、なぜD2Cモデルが注目されているのでしょうか。

スタートアップ企業がWebなどを通じて、創業の思いや自社商品の世界観を消費者に直接伝えてファンを作るのと同時に、仲介を省いて流通コストを抑制し価格競争力を高めた結果、大手企業と互角の勝負をしたり、既存業界をディスラプト(破壊)したりする事例が出てきたことが注目されるきっかけとなりました。

たとえば、2014年創業のマットレス企画販売会社のキャスパーは、単にマットレスを安価に直販するだけではなく、「上質な睡眠」という価値観の下で、睡眠特集を組んだ雑誌の発刊、ポッドキャストで関連情報の配信、さらには街中に昼寝専用スペースを開設するなど、特徴的な取り組みで消費者の心をつかみました。業界大手を抑えて急成長を遂げた同社は、小が大を凌駕した事例として知られています。

――日本では、それほど騒がれていないようですが。

アメリカと比べて起業家が圧倒的に少ないですし、そもそも消費者の考え方、既存ビジネスの状況など市場環境が違うので、アメリカの成功事例をそのまま踏襲してもうまくいきません。デジタル技術を使って消費者に直接コミュニケーションをとるといった試みは複数出ていますが、あくまで「直販」という形態に留まり、社会に大きなインパクトを与えられていない印象があります。

購買プロセスに横断的に関与する

――D2Cビジネスには、中間業者を介さないことよりも重要な点があるのでしょうか。

私たちが考えるD2Cモデルは、「メーカーがデジタルの力で顧客の購買プロセスに横断的に関与することで、顧客の根源的なニーズの充足を直接的に支援するビジネスモデル」というもの。顧客の視点に立つことが重要です。

何かを欲しいと考えたとき、多くの人は、まず商品についての情報を収集し、比較検討したうえで購入します。さらに、利用して良い感情や悪い感情を持つとSNSなどに感想を書くというプロセスをたどりますが、これまでメーカーが関与できるのはこの一連のプロセスの一部分に限られていました。それがデジタルによって、購買プロセス全般に直接的、横断的に関与できるようになったのです。その結果、取得したデータを用いて顧客理解を深め、最適な顧客体験を提案したり、購買プロセス全般を支援して利便性などの価値を向上させたりすることが可能となりました。

たとえば、ビール会社が既存事業との衝突を恐れず、サブスクリプション型会員サービスでホームサーバーを使った新しい飲料体験を提供し、顧客に負荷のかからない形で憧れの顧客体験を演出したり、化粧品会社が個々人に最適な化粧品を配合して提供し、残量をモニタリングしながら補充したりするような先進的サービス提供の試みは、私たちが定義するD2Cの事例だと思います。

断片的なデジタル化ではインパクトは出せない。根源的なニーズを充たすための一貫したストーリーが必須

――D2Cビジネスを検討する際のポイントを教えてください。

重要となるのは、顧客の根源的ニーズの理解から出発することです。たとえば、「化粧品を買いたい」という思いは表層的ニーズにすぎず、化粧品を買う消費者が本当に求めているのは「きれいな肌になりたい/維持したい」です。このような根源的ニーズを理解した上で、その充足を阻んでいる課題や現状の不満を洗い出し、理想的な顧客体験を考えてみます。その上で全体のプロセスを俯瞰し、各接点で必要な仕組みは何か、自社はどの部分に注力するかなど、全体のビジネスモデルを設計していきます。根源的ニーズを充たすために一本筋の通ったストーリーを持ち、それに沿ってプロセス全体の最適化に取り組めば、つぎはぎのデジタル化を超えられます。

――従来関与しなかった部分まで考えるのは難しいそうですね。

これまでとは発想を変える必要があります。単に効率性を重視するなら、既存の小売店チャネルや楽天、amazonなどのECプラットフォームを利用した方が簡単に多くの顧客にリーチできます。ですが、購買プロセス横断で最適化された一つの“商品を伴う体験”をメーカーが直接顧客に提供してこそ生み出せる新しい価値があり、それが顧客体験の革新につながるのです。ただし、社内の組織やシステムなどにも横串を差し、自社に足りない部分は他社との連携も必要となるため、様々な変革に取り組まなくてはなりません。

具体的に何をすべきかイメージがつかめない場合は、デザイン思考を取り入れたワークショップなどに参加して、顧客視点で自社にできるビジネスについて考えてみると、第一歩が踏み出せるかもしれません。私たちはそうした機会の提供も含めて、ビジネスモデルの設計から推進サポートまで幅広く伴走し、根源的ニーズを充足できるD2Cビジネスをつくるご支援をしていきたいと思っています。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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