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そのPoC(概念実証)で真のイノベーションを創造できるのか――多様性とデザインシンキングが作る新しい常識

アーバンイノベーションコンサルティング部長 村岡 洋成、ICTメディアコンサルティング部 岸 浩稔、DX生産革新推進部 一色 章太、ヘルスケア・サービスコンサルティング部 吉田 涼

2021/11/22

デジタルトランスフォーメーション(DX)の中で、デザインシンキングやアジャイル開発などを導入する動きが加速していますが、思ったほどの成果を挙げていないという声をよく聞きます。野村総合研究所(NRI)では、新しい顧客体験や価値の創造につながる効果的なアプローチを探求して、さまざまなR&D活動を展開・強化してきました。その一環として、2019年度下期から2020年度に「次世代コンビニエンスストア」の研究プロジェクトを行いました。実際の店舗で行われたPoCでどんな成果が見えてきたのか、プロジェクトメンバーに話を聞きました。

英国デザインファームとの連携

「企業でデザインシンキングを活用する場合、みんなでわいわいやりながら楽しくアイデアを出すところで終わり、実際に形にするところまで行かない、半ば研修のような形になりがちなことに問題意識を持っていました」。そこで、今回の取り組みでは、アイデアを形にして実店舗で実験するところまで一括でスピーディーに進めることを意識して計画したと、さまざまな企業でイノベーション創出の事業戦略策定や実行を支援してきた岸浩稔は語ります。

一緒にプロジェクトに取り組んだパートナーは、英国のデザインファームです。新しいものをゼロから生み出しやすい環境にある米国と比べて、より伝統を重んじる欧州では、どのように変化に対応するのか。米国のやり方との違いも学ぶために、欧州の大企業などにスタートアップのアプローチを導入した実績のあるMade by Manyに声をかけたと、連携役を担った村岡洋成は選定理由を説明します。

生活者起点で考える次世代店舗

フェーズ1では、100程度のアイデアを出し、そこから3つに絞り込み、ブラッシュアップをしていきました。日本のコンビニは顧客の利便性をとことん追求してきた業態で、これ以上何があるのだろうかとNRIのメンバーは考えていました。しかし、実際に顧客を観察したり、国籍も多様なMade by Manyの海外メンバーの視点を交えて議論したりするうちに、「なぜ昼前にこんなに行列ができるのか」「これが本当にコンビニエントな姿なのか」「私の国ではこういった事例がある」など、新しい課題やアイデアが見えてきたと語ります。

コロナ禍で来店客が減り、ネットでの買い物や非接触などのニーズが顕在化しています。「その結果、お客様の課題解決よりも、新しいテクノロジーの導入やネットの活用という手段が目的化しがちです。次世代店舗を考える時には、生活者起点での気づきと店舗の課題を結びつけることがポイントになります」と、小売業向けコンサルティングを行ってきた吉田涼は、こうしたアプローチの有効性を指摘します。

フェーズ2では、発見した課題の解決に向けて、「アプリを使って事前予約を入れれば、お昼時に並ばずに商品を受け取れる」サービスを実店舗でテストを実施。プロトタイプのアプリ開発だけでなく、実際に商品を揃えて、注文通りにピックアップし、所定の棚に収めるまでのバックオフィス業務も含めて、実現可能性を検討しました。

「どんなメニューが欲しいかなど消費者の意見だけでなく、在庫準備や注文対応の時間などオペレーション担当者や店舗オーナーの意見も聞きながら、ベストの選択肢を抽出してアプリ開発に反映させました。現場で実験しながら、修正点を議論し、すぐに開発にとりかかるというスピード感は、これまで経験してきたアジャイル開発現場とは違っていました」と語るのは、エンジニアとして参加した一色章太。ビジネス・ストラテジスト、デザイナー、エンジニアが一緒に議論し、その場で内製まで一貫して行うから実現するスピード感や、そうしたチームの組み方は、今後の仕事でも参考にしたいと考えています。

「良い妥協」と「ストロング・シングナル」

ユーザーの声のみを重視すればオペレーションは回らないし、オーナーや現場スタッフなど他の関係者を尊重し過ぎるとスピード感は出ません。「Made by Manyは、ユーザー体験を第一に考えながらも、技術面、オペレーション面などを勘案して、どこまで妥協するのか、何を守るべきかを議論し、瞬時に判断して前に進めていました。そうした『良い妥協』をするアプローチは日本企業にも役立ちます」と、村岡は考えています。

また、声の大きさや多数派の意見ではなく、個々人が思いを込め、考え抜いたときに発せられる「ストロング・シグナル」を拾うと、一人ひとりが重視するタイミングや気分がまったく異なっていたことも大きな発見でした。コンビニなど飽和状態の業界でも、そうした個人の潜在的な意識にある「モード」の違いに着目することで、ありきたりのセグメンテーションや他社と似通ったアプリやポイントプログラムとは違う、デジタルを使った新たな価値作りのヒントになりそうです。

「多様な背景を持つメンバーとのデザインシンキングを経て、開発し、実地で試して、顧客の声を踏まえて改善するサイクルを高速で回す中で、初めて難しさや限界が見えてきます。これが本来のPoC(概念実証)です」と、岸は実際の店舗でPoCをやる意義を改めて実感したと語ります。今回の学びをうまく取り入れながら、物足りなかった点を拡充し、より日本に適したアプローチにつくりかえて、新しい価値創造を支援していこうと、NRIでは考えています。

【写真】(左)Made by ManyとNRIメンバーの議論の様子(中央)PoCで開発したアプリ画面(右)実店舗で検証している様子

Made by Many William Owen Founding Partner

Made by Many specialises in digital product innovation in retail, media, consumer packaged goods, transport, utilities and culture. We combine design and deep customer insight with engineering expertise and business strategy to create commercial, sustainable product ideas. The project with NRI was challenging because it involved both digital and physical design. Ultimately it was highly successful: we identified unmet customer needs and demonstrated how to fulfil them in a way that worked not only for customers, but also for store staff, managers and parent brands. The combined NRI and Made by Many team showed that great results can be achieved across disciplines, cultures and borders.

(Made by Manyは、さまざまな業界におけるデジタル・イノベーションの創造を実現しています。私たちは、デザインのケイパビリティと顧客に対する深い洞察力に、デジタルエンジニアリングとビジネスストラテジーの専門性を組み合わせて、商業的に成功するサステナブルなプロダクトアイデアを生み出します。NRIとのプロジェクトは、デジタル空間と実空間の両方のデザインが必要なチャレンジングなものでしたが、最終的には大きな成功を収めました。ユーザーの深層的なニーズを特定し、消費者だけでなく、ショップのスタッフやマネージャー、そしてコーポレートブランドにとっても有効な方法でそのニーズを満たすソリューションを示したのです。NRIとMade by Manyのコラボレーションチームは、思想や文化、国境を越えて、素晴らしい結果を生み出せることを示しました。)

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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