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NRI トップ NRI JOURNAL デジタル時代、企業は従業員との「結びつき」をどう高めればいいのか

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デジタル時代、企業は従業員との「結びつき」をどう高めればいいのか

ICTメディアコンサルティング部 光谷 好貴
経営DXコンサルティング部 高橋 洸介

#経営

2022/01/06

新型コロナウイルス感染症の拡大により普及したテレワークをはじめとする新しい働き方は、企業と従業員の関係性にも影響を及ぼし始めています。さらに、1つの企業にとらわれない働き方にも注目が集まり、転職のハードルも下がっています。企業にとって、従業員との結びつきである「従業員エンゲージメント」の重要性が急速に高まりつつあると言えます。
従業員エンゲージメントを高める方策を明らかにするために、働く人々を対象に独自のアンケート調査を実施した野村総合研究所(NRI)の光谷好貴と高橋洸介に聞きました。

従業員エンゲージメント向上の打ち手を探るための調査を実施

新型コロナウイルス感染症の拡大により、テレワークが急速に一般化しました。新しい働き方は、企業と従業員のコミュニケーションを一変させ、企業と従業員の「従業員エンゲージメント」にも影響を与えていることが想像されます。
従業員エンゲージメントとは、従業員の自社に対する帰属意識や、企業の目標達成への貢献意欲の度合いであり、職場における経験、EX(エンプロイー・エクスペリエンス) に応じて上下します。 従業員エンゲージメントが高いことで、優秀な人材が確保でき、人材のパフォーマンスが向上し、離職者を減らすことができます。つまり、企業の業績アップには、従業員エンゲージメントの向上が不可欠だと言えます。
では、どうしたら従業員エンゲージメントを向上させることができるのか。その打ち手を考えるために、NRIでは2021年3月に調査を実施しました。調査では、従業員エンゲージメントの状態を図る指標として親しい知人や友人に自分の職場を推奨する割合、「企業推奨度」にフォーカスし、何が企業推奨度に効くのかを把握するため80項目以上の観点について尋ね、企業推奨度との相関を分析しました。

企業の業績向上と相関性の高い7つの項目が明らかに

企業推奨度を0点から10点までの11段階で質問した結果、分布は0〜5 点に偏っており、平均は「3.5点」という結果になりました。これを退職との関連で見ると、企業推奨度が低い企業では、やりがいが感じられず離職者も多いことを示唆する結果となりました。逆に、企業推奨度が高い企業ほど、「退職が危惧される従業員」※1の割合が減少することが示唆されています。さらに退職の回避という観点では、企業推奨度5点が分水嶺であり、売り上げ向上のための施策以前に、企業推奨度6点以上を目指すのが先決と言えます。
また、売り上げと企業推奨度の関連性については、企業推奨度が高いほど3年前と比べ売り上げが増加している割合が高くなっていることもわかりました。
従業員エンゲージメントが向上するための打ち手の方向性を探るために、企業推奨度との相関性の高い評価観点を7項目にとりまとめました(以下、HR7)。

HR7

  1. 組織が社会のための投資をしている。
  2. 組織のミッション・ビジョンを従業員に伝達している。
  3. ミッション・ビジョンが働く意義を感じさせてくれる。
  4. 経営層がオープンで透明性があり、正直である。
  5. 誠実さや助け合いが組織文化の中核にある。
  6. 生産性向上・幸福度最大化が図られている。
  7. 従業員の継続的な成長にサポートがある。

 

HR7の1〜3は、組織が中長期的に取り組むべき課題であり、4〜7はHR Tech※2等により効果的な施策を行えば、短期的な対策が可能な課題と言えます。

  • 1 「退職が危惧される従業員」とは、現在の転職に対する検討状況として“転職を検討中“または”転職決定”と回答、かつ現在勤めている会社での勤続意向(どの程度働き続けたいと考えているかを0~10点で11段階評価)が4点以下の回答者を指す
  • 2 HR Tech:人事(Human Resource)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉。テクノロジーによりさまざまな人事業務を改善する取り組みを指す

現状を知るための「計測」は従業員エンゲージメント向上の最優先事項

従業員エンゲージメント向上の取り組みは、「土台作り」「個別の取り組み」「統合化」の3つの段階に分けることができます。中でも、現状を知るための土台作りとして、「計測」は最優先事項です。例えばソフトバンクでは、年単位・月単位の2種類のサーベイを実施し、組織や従業員の状態を計測・可視化する取り組みを進めています。
計測の次の段階として、個別の取り組みを推進します。個別の取り組みには、「パーパス(存在意義)を定義する」「パーパスを組織に浸透させる」「経営層のオープン性を高める」「組織文化を再考する」「生産性・幸福度向上に取り組む」「従業員の成長を支援する」などがあります。
そして、最終の統合化段階では、入社から退職までのプロセスの各イベントをまたいでデータを活用することで、最適化された教育プランの策定や退職リスクの管理など、組織にとっても従業員にとっても働きやすい環境を構築できます。

データ体系を整備し、組織にとっても従業員にとっても働きやすい環境を

海外のジョブ型雇用では、ジョブの定義が文書化されるなど、データ化が進んでいます。しかし、日本のメンバーシップ雇用は、まずは優秀な仲間を集めてその中で仕事を割り振っていく構造であるため、データ化で後れを取っています。
これまでは、データの断片的な活用や、担当者の属人的な感覚などに基づいて意思決定を行ってきましたが、事業の根幹に従業員エンゲージメントが関わってくる未来を考えると、デジタル化の推進によるデータ体系整備が必須です。それによって初めて、組織にとっても従業員にとっても働きやすい環境を構築できるのです。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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