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デジタルインフラマネジメント――インフラ老朽化時代をいかに乗り切るか

コンサルティング事業本部 社会システムコンサルティング部(発表当時) 和田 尚之

#公共

2022/09/29

野村総合研究所(NRI)は、コンサルティング部門が着目する社会課題とその解決方向についての情報提供を目的として、日々現場で顧客とともに社会課題解決に取り組むコンサルタントを発表者とした全8回の発信活動を実施しています。 第2回のテーマは「デジタル時代のインフラマネジメント」です。昨今のデジタル技術の発展により可能となりつつある新たなインフラマネジメントについて、海外事例なども参照しながら提案しました。発表を行った社会システムコンサルティング部の和田尚之に聞きました。

深刻化するインフラの老朽化、デジタル活用が打開の鍵に

道路や橋梁、トンネル、上下水道、ダム、港湾、公園といったインフラの老朽化は着実に進行しており、対策は待ったなしの状況です。例えば、橋梁の新規建設数は今から50年前の1972年頃をピークとしてその後は減少傾向にあり、今後は供用期間が50年を超える橋梁の割合が急増する見込みです。

一方で、こうしたインフラを管理する国や自治体では、人的リソースの不足が顕在化しつつあります。人的リソースの逼迫が特に顕著な市町村では、2005年には全体で約10万5000人いた土木部門の職員数が2019年には9万人程度にまで減少しています。今後はますますインフラの管理が行き届かなくなり、事故をはじめとする深刻な問題が発生する可能性が高まるでしょう。

そこで提案したいのが、デジタルを活用したインフラマネジメントです。これには2つの方向性があります。1つめの方向性は「維持管理基準の柔軟化」です。たとえば橋梁では、劣化の進み具合にかかわらず、5年に1回の頻度で定期点検を実施しなければなりません。その結果効率的な点検が行えず、修繕や補強などの必要な措置も想定通り進んでいないのが現状です。

こうした事態の改善策が、点検をタイムベースからコンディションベースに変えていくことです。具体的にはモニタリングしたデータをもとに、劣化の度合いに応じて点検の頻度を決めるのです。これが実現できれば、自治体は管理するインフラの状況を適切に判断した上で点検頻度・点検箇所を最適化でき、必要な措置を計画的に実施できるようになるでしょう。

もちろんインフラは命に関わる面もあり、安全性の担保が必要不可欠です。そのためには、インフラの状況を一元的にモニタリングする仕組みの構築が必須です。現在、国土交通省を中心にインフラ関連のデータを一元的に集約したデータベースの構築が進められており、そのための環境が整いつつあります。これに伴い、維持管理基準の柔軟化も視野に入ってくるでしょう。

「クロスボーダーインフラテック」が変えるインフラマネジメントの未来

デジタルを活用したインフラマネジメントの2つめの方向性は、「クロスボーダーインフラテック」の導入です。クロスボーダーインフラテックを実現するためには、デジタル技術の活用によって複数のインフラを一元管理し、地域の市民サービスを提供するオーガナイザーが必要です。電力やガス、公共交通の改善などのインフラ事業にとどまらず、買い物弱者対策といった非インフラ事業までを一元的に実施し、現場業務の効率化や市民生活の質の向上、ひいては地域の持続可能性向上に貢献するプレイヤーを想定しています。

クロスボーダーインフラテックの概要

クロスボーダーインフラテックのメリットは、大きく分けて3つあります。1つめは、複数業務プロセスのバンドリングによる業務効率化です。デジタル活用によって、これまで縦割りで進められていた業務に分野横断で取り組めるようになれば、たとえば本社業務や現場の工事業務の発注を一度に行えるようになるといったような業務の効率化が実現できます。

2つめが、既存業務プロセスの高度化です。デジタル活用によってデータを一元的に「見える化」できれば、業務の予測や計画の効率化が可能になります。そして3つめが、新たなビジネスの創出です。特に街づくりの推進においては、住民とのコミュニケーションをデータ化することで、課題を客観的に把握できます。その結果として取り組みを進めやすくなったり、マーケティングにデータを活用できたりといった効果が期待できます。近年では異なるインフラ間で発生する熱を融通し、インフラ全体で発生するCO2の排出を抑える役割も果たしています。

新たな仕組みの導入には課題も

このようにクロスボーダーインフラテックにはたくさんのメリットがありますが、実現には5つの課題があります。1つめはデジタル人材・経営人材の確保・育成です。デジタルに精通しつつ経営にも長けた人材の母数は非常に限られるため、難しい課題です。2つめは収益補填に関わる制度改革です。現在の行財政制度のもとでは100%の出資を受けている組織としか収益補填を行うことができないため、意欲ある企業が活動に加わっても、赤字事業を黒字事業で支えるといった、分野横断で取り組むメリットがうまく発揮できないケースがあるのです。

3つめは料金設定の柔軟化です(利用料金を徴収するインフラの場合)。クロスボーダーインフラテックのように横断型での収益補填を前提とした取り組みの場合、上下水道など独自の基準で設定された(利用)料金を維持したままでは十分に対応できません。財源状況を踏まえた柔軟な価格設定が許容される必要があります。4つめが包括的な民間委託契約の推進です。インフラのマネジメントにおいては、複数種のインフラを一元管理することで、業務効率化を実現します。そのため従来のような細切れの契約ではなく、包括的な契約を締結できる土壌の整備が必要です。

5つめは災害・事故発生時の責任分担です。インフラをマネジメントする以上、事故が発生する可能性は否定できません。有事の際に組織内でどのように責任を分担するかについても整理が必要です。国の補助や金融商品によるリスク分担も検討材料であり、これらを含めて包括的に検討を進めるべき議題です。

インフラの老朽化が進み、管理者側のリソースも厳しい見通しの中、デジタル活用は有効な解決法のひとつです。新しい仕組みを導入するにあたって検証や実証を行い、早期にデータを取得してその効率化と改善対応を進める必要があります。NRIとしても、その支援を積極的に進めていきたいと考えています。

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株式会社野村総合研究所
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E-mail: kouhou@nri.co.jp

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