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NRI トップ NRI JOURNAL DXと多様化がもたらす消費の変化―2030年将来シナリオ―

NRI JOURNAL

未来へのヒントが見つかるイノベーションマガジン

クラウドの潮流――進化するクラウド・サービスと変化する企業の意識

DXと多様化がもたらす消費の変化―2030年将来シナリオ―

コンサルティング事業本部
経営DXコンサルティング部 北島 大士 小枝 冬人
事業DXコンサルティング部 石川 航太郎
マーケティングサイエンスコンサルティング部 白井 雄志
ICTメディアコンサルティング部 松本 周子

#DX

#ビッグデータ

#サステナビリティ

#AI

#ダイバーシティ

2022/12/08

野村総合研究所(NRI)は、お客様やパートナーとの共創による持続可能な未来社会づくりを目指しています。本記事ではその一環として、2030年の消費者を取り巻く社会像について検討し、消費者心理に関する提言を行います。

データのオープン化と価値観の多元化が進展した未来の社会で、私たちの消費はどのような変化を遂げるのでしょうか。また、その変化に対応するために企業がすべきことは何なのでしょうか。NRIは独自の調査・分析をもとに将来シナリオを描き、企業に求められるアクションを導き出しました。報告書の作成に携わったコンサルティング事業本部の北島大士、小枝冬人、石川航太郎、白井雄志、松本周子に聞きました。

便利だが息苦しい「多様性のパラドクス」社会の到来

非連続で将来の見通しを立てづらい現代社会において、私たちの生活やビジネスを取り巻く環境は日々めまぐるしく変化しています。NRIは2030年の消費者を取り巻く社会像を描くにあたり、今目の前に現れている変化の兆しをさまざまな角度から洗い出し、大きく2つの潮流に整理しました。

1つめの潮流はデータのオープン化です。これは、商品の購買情報や位置情報などのパーソナルデータを個人が積極的に公開し、企業どうしがそれらを横断的に活用する動きのことです。この潮流と今後のAI技術の発展が合わさることで、一人ひとりの好みにマッチした商品サービスが今よりもずっと高い精度でレコメンドされるようになります。

2つめの潮流は価値観の多元化で、SDGsに代表されるように、便益や価格だけでなく、さまざまな社会的価値やストーリーも重視されるようになります。企業はそれらに応えるための商品サービスを準備しようとするため、消費者が購入・利用できるものの選択肢は、現在よりも大幅に拡大することになります。NRIはこれらが将来社会の分岐点になると考え、2つの潮流がどの程度進むのかによって、4つの将来シナリオを描きました。

まず、データのオープン化も価値観の多元化も大きく進まず、現在の社会からの変化が最も小さいシナリオである「自己責任消費」社会です。便益とコストを重視する価値観が中心であり続けるため、提供される商品サービスの選択肢はあまり増えません。レコメンドの精度にも限界があるため、消費における迷いや非効率が残っています。

次に、パーソナルデータがよりオープンになった場合のシナリオが「失敗のない消費」社会です。一人ひとりにとって有益な選択肢が高い精度でレコメンドされるので、私たちの消費はより効率的で失敗の少ないものとなります。反面、偶然の出会いのようなものはなくなっていきます。

一方、価値観がより多元化した場合のシナリオは「超個人主義」社会です。商品サービスの選択肢が大幅に増え、その中から自分の価値観に合うものを自由に選ぶことができます。しかし、レコメンドの精度が高くないので、欲しいものを探すのは大変です。

そして、データのオープン化と価値観の多元化が共に進んだ場合のシナリオが「多様性のパラドクス」社会です。多種多様な選択肢から比較的少ない労力で買うものを選ぶことができます。しかしながら消費行動を通じて自分の思想や価値観が他者に露呈するため、いつも見られているような息苦しさを感じる人もいるでしょう。自分が本当に欲しいものよりも、社会が良しとするものを選ぶ方がよいのではないかと考える人が増えていきます。

NRIではこのシナリオを最も示唆に富むものと考え、「多様性のパラドクス」社会が実現したとき私たちの消費にどのようなことが起きるのかを、さらに深く検討しました。

2030年の多様性のパラドクス社会では「ARAAM型消費」が主流に

自分の価値観や思想にぴったり合うものを自由に選べる社会のように見えて、結局世間一般が思う正解に縛られてしまう――このような「多様性のパラドクス」社会が現実になれば、たとえば洋服類やロゴなどでエシカル度の見える化が進み、サステナブルな視点での洋服選びがしやすくなります。一方、何かにつけて他の人の視線が気になり、自分よりエシカル度の高い人にマウントを取られているように感じることも増えるでしょう。

こうした変化に対応した消費者の行動プロセスとしてNRIが提唱するのが「ARAAM」モデルです。これは「Analyze-d(分析される)」「Recommend-ed(薦められる)」「Approve(承認する)」「Aggregate-d(統合される)」「Monitor-ed(見られる)」の頭文字を取ったもので、AIDMAやAISASを経た未来の新しい消費行動モデルです。

ARAAM型の消費が一般的になった社会では、パーソナルデータを積極的に活用した高精度の分析が可能になり、分析結果に応じた商品・サービスがレコメンドされる仕組みが今よりも格段に進化しています。そうしてお薦めされた商品・サービスの購入を承認するのと同時に、その購買にまつわるさまざまなデータが蓄積統合され、分析の精度はさらに上がっていきます。

また、商品の社会的な価値が可視化され、購買を通じて自分の消費行動が評価されるため、消費者はいつも他人から見られているような感覚に陥ることになるでしょう。購入を決めるのは自分ですが、データをもとにしたレコメンドや他人から見られている感覚が強く影響するため、受け身の姿勢で購入を決めているという見方ができます。

今までの消費行動の主流が自律的消費1だったとすれば、これはそれとは逆の、他律的消費と呼ぶべき消費行動です。NRIは、2030年の日本における他律的消費の規模は現在のおよそ7倍、金額にして約5.6兆円に達するものと推計しています。「多様性のパラドクス」社会が到来すると、他律的消費の規模は急速に拡大すると考えています。

他律的消費が主流の社会で、企業はどう動くべきか

「多様性のパラドクス社会」が到来し、ARAAM型の他律的消費が一般的になった社会では、企業は消費者の変化に合わせた3つのアクションを求められるようになるでしょう。

1つめは、データの連携強化と分析技術の向上です。自社データと補完関係にある企業を見定め、戦略的な連携を図ることが必要になるでしょう。同時に、拡充したデータを用いて、精度の高い示唆を出すため、分析機能の強化を行う必要が出てくるでしょう。いわゆるインターネット上のプラットフォーマーが自社で提供している複数サービスを横断してユーザーデータを連携し、蓄積されたデータと独自の推薦システムによる高精度なレコメンデーションを提供しているという萌芽事例もあります。

2つめは、多元的価値観へ対応した商品開発とサプライチェーン・マネジメント(SCM)2機能の強化です。価値観の多元化に伴い商品ラインナップが増えれば、そのぶん企業側の管理コストも増大します。その中でも十分な利益を生み出すためには、SCMの高度化を図ることが必須です。一方で、いまや企業の必須課題であるトレーサビリティや環境への配慮の姿勢を消費者に伝えるために、自社で果たしている社会的責任をストーリーとして伝える必要もあるでしょう。

3つめは、サービスデザインの強化です。評価されることを消費者が少しでも快く受容できるよう、「お得」「楽しい」「かっこいい」といった消費者にとっての直接的なメリットを見せられるようなサービスデザインが求められるでしょう。例えば、スーパーで野菜を直接栽培し、輸送に伴う温室効果ガスの削減や食品ロスにつなげている“店産店消”の取り組みは、環境に良いだけでなく、より新鮮で美味しい野菜の提供という具体的なメリットを消費者にもたらしています。

2030年、世の中は「多様性のパラドクス」社会へと変容し、私たちの消費は便利な一方で、他人の見る目を意識した、どこか息苦しいものになっているかもしれません。特に消費者を相手にするビジネス領域では、消費者の「人に見られている感覚」を緩和しつつ、真のニーズに応える選択肢を企業が提示できるかどうかが成功の秘訣になると、NRIは考えます。

  • 1 消費者が、消費の対象を自ら主体的に探索、選択して生じる消費。
  • 2 原材料の調達から最終目的地での製品の配送まで、製品やサービスに関する商品、データ、財務の流れを管理すること。
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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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