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メタバースにオルタナティブデータ、新しい情報・技術の活用はどう進む?

DX基盤事業本部 城田 真琴
IT基盤技術戦略室 亀津 敦、幸田 敏宏

#城田 真琴

#亀津 敦

#DX

#情報・通信

2023/06/19

野村総合研究所(NRI)では、最新IT(情報技術)の動向を継続的に調査し、その成果をまとめた書籍『ITロードマップ』を毎年出版しています。『ITロードマップ2023年版』の内容から、本記事では「オルタナティブデータ」「メタバース」という2つのテーマにフォーカスして紹介します。時代の転換期を象徴する2分野について、企業はどのように向き合い、動くべきなのか。この分野の研究を進めているDX基盤事業本部の城田 真琴、IT基盤技術戦略室の亀津 敦、幸田 敏宏に聞きました。

オルタナティブデータのビジネス活用事例

オルタナティブデータとは、投資判断や事業環境の分析に使われるデータのうち、これまで一般的に利用されてきた企業財務情報や人口動態、IR情報などの公開情報以外のもののことです。技術の進化に伴って生まれた新たなデータが、トラディショナルなデータを補完するもの、あるいはそれ以上の洞察を得るための情報源として活用されはじめています。

オルタナティブデータとして活用されるデータソースは、対象によって大きく2つに分けられます。1つめは実世界を対象とするデータソースで、気象データや人流データ、IoT機器などのセンサーデータなどがあげられます。2つめはサイバー空間を対象とするデータソースで、Webトラフィックや検索データ、ソーシャルメディアへの投稿などがあげられます。

オルタナティブデータが注目されている一因は、実世界におけるデジタル化の進展です。デジタルトランスフォーメーションの取り組みの拡大やコロナ禍によるリモートでのセンシング、遠隔操作の普及により、IoT機器や自動車・航空機・船舶などが幅広くネットワークに接続されるようになりました。その結果、日々膨大なデータが新たに生み出されるようになり、投資判断や事業環境の分析材料として活用可能なオルタナティブデータとして注目されるようになったのです。

オルタナティブデータは非常に有用ですが、個々の企業が自社に適したオルタナティブデータを探し出して取得するというのは、現実的ではありません。そこでロイターやブルームバーグといった企業が「データブローカー」としてオルタナティブデータを取りまとめ、収集・販売し始めました。各企業はそのデータを購入し、企業内のデータ分析基盤に組み入れて活用するというのが一般的な流れです。

オルタナティブデータは、新しい事業機会の創造や競合に対する優位の確保や、データのマネタイズの実現につながります。ただし、データの取り扱いについては3つの課題があります。

1つめは「データのコンプライアンス」です。オルタナティブデータを購入する際には、データ収集の適法性やプライバシー保護に関するコンプライアンスが順守されているかどうか、第三者の権利侵害等がないかなどを確認する必要があります。データの提供者と個別に協議するなど、利用の前に十分な確認が必要です。

2つめは「データの妥当性検証」です。オルタナティブデータを活用するには、購入するデータセットが必要なデータを含んでいるかどうか、また妥当な方法で収集されているかどうかを検証しなければなりません。

3つめは「有用性の仮説立案・有効性検証」です。オルタナティブデータは活用の歴史が浅く、活用のベストプラクティスはあまり公開されていません。そのため、自社にとってどのようなオルタナティブデータが有用なのかを判断するためには、ビジネスの現場をよく知る事業サイドの専門家とデータサイエンティストの協業による目利きが必要です。

メタバースのビジネス活用は、ユーザー体験に適した選定が鍵

メタバースとは、ユーザーがアバター(自分を模したキャラクター)を使い、自由に移動しながら現実を超える体験を楽しみ、人々との交流や企業のサービスを利用できるインターネット上の仮想空間です。商品の購入やサービスの利用も可能なため、多くの企業がビジネスにおける活用方法を模索しています。

その中で増えているのは「コンシューマー向け(BtoC)活用」です。テキストや画像、動画を閲覧するだけのこれまでのWebページでは難しかった体験を提供できる特徴を生かし、新たな顧客接点を作る取り組みが目立ちます。仮想空間内で人気の車種への試乗や、水素燃料技術の仕組みの体験ができる現代(ヒュンデ)自動車の仮想空間はその一例です。

コンシューマー向け活用のビジネス形態は、大きく3つに分けられます。1つめは「メタバース完結型」です。文字通りバーチャル上で完結するサービスで、デジタルアイテムの販売やビジネスマッチング、広告サービスなど、既存のネットビジネスに類似したサービスを展開しています。

2つめは「リアル送客型」です。実店舗への誘導を目的とするリアル送客型サービスの提供主体には、アパレル関連企業や観光・旅行関連企業など、現実世界でのビジネスに強みを持つ企業が多いのが特徴です。

3つめはユーザーがメタバースと現実世界を行き来して商品・サービスを購入する「メタバース-リアル連動型」です。現実世界の場所に強みを持つ自治体や不動産企業が実証実験を開始しています。企業は提供したいユーザー体験を見極め、それに適したメタバースを選定することが重要になるでしょう。

他の技術と組み合わせたメタバースの利用も検討されています。例えば、ブロックチェーン上で参加者が協力して管理・運営する分散型自律組織(DAO)と組み合わせたコミュニティづくりです。メタバース上で空間を共有することで、ユーザーは離れていても現実のような一体感を得られます。加えて、DAOを利用した参加者の主体的な活動促進は、既存のWebページに比べ高いロイヤリティのコミュニティ形成も可能です。こうしたユーザーのコミュニティが増えれば、製品やサービスへの質の高いフィードバックが得られたり、ファンとの共創プロジェクトを実施できたりと、メタバース提供企業にも多くのメリットが期待できます。

コンシューマー向けの活用には大きな可能性がある一方で、プライバシー保護や仮想空間内での商取引などを巡る法整備、ユーザー同士のトラブル対応など、課題も山積しています。そのため、企業はまずセミナーやミーティング、トレーニングへのメタバース活用といった企業内活用を先行し、経験値を蓄積することが大切です。そうすれば、コンシューマー向け活用が本格化した際に、先行者利益を得られる可能性が高まります。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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