フリーワード検索


タグ検索

  • 注目キーワード
    業種
    目的・課題
    専門家
    国・地域

NRI トップ ナレッジ・インサイト コラム コラム一覧 広がる自動車減産の経済への打撃:1兆2,600億円の経済損失

広がる自動車減産の経済への打撃:1兆2,600億円の経済損失

2021/09/13

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

マレーシア、インドネシア、ベトナムなど東南アジアでの感染拡大の影響で現地工場が停止し、半導体やその他自動車関連部品の供給に大きな支障が生じている。8月時点でトヨタ自動車は、8月24日~9月の間、国内で14工場・27ラインの生産を最大で22日間止め、8月単月では3万7千台の減産をする見通しを示していた。さらに9月には約14万台の国内の減産を見込んでいた。またダイハツも8~9月に3万~4万台減産する見通しだった。これらの情報から、7-9月期の国内自動車生産が22万台程度減少すると推察され、それによって同期の国内自動車生産が10.4%減少すると計算された(コラム「グローバル・サプライチェーンの混乱で国内自動車は一時減産へ:4,457億円の経済損失」、2021年8月23日)。

ところがトヨタ自動車の減産は、当初見込みよりも格段に大きく広がることが明らかになっている。9月10日にトヨタ自動車が発表したところでは、9月の減産を約7万台分追加し、また10月は当初計画から約33万台(約37%)減産する見通しとなったという。両月で合計約40万台の追加減産となる。2022年3月期の生産台数も、従来見通しの930万台から900万台程度に引き下げる。

トヨタ自動車の追加減産によって、10月にかけての減産は国内自動車全体で22万台程度から62万台程度へと一気に3倍近くに増えることになった。これは、後の挽回生産分を考慮しない場合には、年間の自動車生産額を7.33%減少させる。自動車生産額が製造業の生産額(2015年)に占める比率は15.47%、自動車生産(付加価値ベース)が名目GDP(2019年)に占める比率は、3.17%である。これから、年間7.33%の自動車減産は、名目GDPでみて1兆2,600億円程度の経済損失を生む計算だ。

ちなみに、自動車減産の影響で7-9月期実質GDPは、前期比年率1.73%押し下げられる計算となる。7-9月期の成長率は、拡大と延長を繰り返す第4回緊急事態宣言による5.7兆円の経済損失に加えて、世界的なグローバル・サプライチェーンの混乱による自動車減産の影響を大きく受け、2四半期ぶりのマイナス成長となる可能性が高まっている。

執筆者情報

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn