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日銀グリーンオペの開始と異例の長期総裁就任期間

2021/09/24

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気候変動対応オペ(通称グリーンオペ)の詳細決定

9月22日に開かれた金融政策決定会合で、日本銀行は気候変動対応オペ(グリーンオペ)の詳細を決定し、その概要を公表した。7月の前回決定会合で骨子素案を公表していたが、そこから追加された部分は多くない(コラム「気候変動対応への関与は日本銀行の使命に照らして妥当か:新型オペの骨子素案」、2021年7月16日)。

ただしその中で注目されたのは、貸出対象先の範囲だ。それは今回、「気候変動対応に資するための取り組みについて、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言する4項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)および投融資の目的・実績を開示している金融機関」とされた。7月の決定会合では「共通担保オペ(全店貸付)の対象先のうち、気候変動対応に資するための取り組みについて一定の開示を行っている先で、希望する先とする」とのみ示されていた。

ただし7月の決定会合後の記者会見で総裁は、この「一定の開示」について、TCFDの提言を念頭に置いていることを既に指摘していた。TCFDは金融安定理事会(FSB)が立ち上げた組織であり、2017年6月に公表した報告書で、企業等に対して気候変動関連リスクに関するガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標を開示することを求めている。その提言に賛同する日本の銀行は、他国の銀行と比べて多い。しかし、実際にTCFDの提言に沿った開示ができている銀行は限られるだろう。今回、TCFDの提言する4項目の開示をオペ参加の条件としたことで、当初からオペに参加する金融機関の数は限られそうだ。

総裁も、12月下旬のオペ開始時の規模は分からないとしている。しかし、オペは2031年3月末まで続ける予定であることから、この10年の間にオペに参加する金融機関が増え、関連する投融資の拡大を通じて気候変動対策が後押しされることを期待したい、と説明している。

筆者はオペの参加はもう少し緩い条件でなされると考えていたことから、この点がオペの概要の中で唯一予想外であった。

日銀総裁就任期間は戦後最長へ

9月29日に黒田総裁の就任期間が3,116日に達し、戦後最長となる。5年を超えて総裁職を務めるのは黒田総裁が戦後3人目で、1961年に再任した山際正道氏以来57年ぶりであった。戦後に2期以上続けて総裁を務めたのは、18代の一万田尚登氏(1946~54年)とこの20代の山際氏(1956~64年)のみである。しかし、いずれも2期目途中で辞任しており、在任期間は今のところは一万田氏の8年6か月が最長である。

黒田総裁の前任の白川前総裁は、2013年4月の任期終了直前の3月に辞任した。黒田総裁は2013年3月に日銀総裁に就任し、前任者の残り1か月程度の任期を引き継いだ後、同年4月に再任された。さらに2018年4月に再々任され、10年強の任期を務めることとなったのである。

黒田体制下での金融政策の評価についてはここでは言及しないが、異例の長期就任期間となることが、金融政策に対する高い評価の結果であるとは必ずしも言えない点にのみ簡単に触れておきたい。

戦後、日銀総裁の再任が稀であったのは、日銀出身者と財務省(旧大蔵省)出身者が交互に選ばれる、「たすき掛け人事」が長く続いたことが主な理由である。1998年の新日銀法施行後は、「たすき掛け人事」の慣例はなくなっている。

さらに、内閣が交代すれば新たな総裁人事が行われる傾向が強い中、戦後最長の世界経済の回復に支えられて、第2次安倍内閣(2012年12月26日~2020年9月16日)が憲政史上最長となり、日銀総裁を2度指名する機会を得たことが、黒田総裁の就任期間が異例の長さとなったことの大きな理由の一つなのである。

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