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パッシブ化が加速するリテール投信

2022/09/05

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本年に入って残高の横ばいが続く公募投信の中にあって、パッシブファンドの残高は拡大している。年初から2.5兆円増え、22.5兆円に達している(8月末時点、独自集計(注1))。この結果、いつでも購入可能な公募株式投信(除くETF)に占めるシェアは、残高ベースで26.1%に達している。このままのペースで拡大が続けば、10年後にはシェアが50%に達する。

パッシブファンドの残高は2012年以降、毎年、拡大を続けている(図表参照)。これを牽引したのは、確定拠出年金(DC)市場の拡大と"つみたてNISA"と考えられる。

図表 パッシブファンドの残高(追加型株式投信除くETF)

2001年にスタートしたDCの加入者は最近では毎年65~100万人増加し、それに伴い同制度への資金流入額は純額で年1兆円(注2)にまで増えている。また、同制度内で投資信託を保有する人の割合も高くなっている(注3)。さらに、DCの中で選択される投信に占めるパッシブファンドの残高割合も概ね75%(残高ベース)と高い(注4)。DCへの資金流入額の増加と加入者のパッシブファンド選好により、DCでのパッシブファンド残高は着実に増加している(図表の薄青色部分)。DCの導入に意欲を示す企業は多く、また個人型DCのiDeCoへの個人の関心が高まっていることから、DCによるパッシブファンド残高は今後も安定的に拡大することは間違いない。

ここ数年DC向け以上のペースで残高が拡大しているのが証券会社や銀行の対面やネットサービスで販売されているパッシブファンド(一般のパッシブファンド)だ。その残高の推移を図表では薄赤色で示しているが、これを見ると、18年以降、拡大のペースが上がっていることがわかる。17年末には3.9兆円に過ぎなかったが、21年末までの4年間で、6.3兆円増加し10.3兆円となっている。残高増加を要因別に見ると、相場の上昇による効果を示す市場要因は2.5兆円に過ぎず、資金流入による影響のほうが大きい(資金流入要因は3.8兆円)。資金流入の勢いは今年になってからも変わらず、8月までの8か月間で2兆円を超え、年末までに3兆円に達する可能性もある。このように一般の投信においても、パッシブファンド選好が顕著になってきているのだが、このきっかけを作ったのは2018年に導入された"つみたてNISA"であろう。2020年以降、一般のパッシブファンドへの純資金流入の3~4割が"つみたてNISA"を利用した投資と見られる。金融庁は8月末に公表した税制改正要望の中で、資産所得倍増プランの策定に合わせ、"つみたてNISA"を核にNISA制度の抜本的拡大を目指す考えを表明した。

DCの一層の普及に加え、"つみたてNISA"が拡充されるのであれば、パッシブファンドへの資金流入は増加し、残高増加は一層加速するはずだ。リテール投信に占めるパッシブファンドの残高シェアは10年も待たずに50%を超える可能性は高い。パッシブ化が加速する中で、投信会社や販売会社のリテール向け運用サービスをどのように再構築していくべきか真剣な検討が急がれる。


(注1)本コラムにおいてパッシブ投信とはインデックス投信に加え、通常インデックス投信とは呼ばない複数のベンチマーク指数をあらかじめ定めた割合で合成した指標に連動する運用成果を目指して運用する投資信託も含めて呼んでいる。このため、投資信託協会が公表しているインデックス投信の残高に比べ1兆円程度多くなっている。
(注2)2021年(暦年)における掛金総額は約1.5兆円、給付金総額は約0.5兆円であった(出所:運営管理機関連絡協議会)。
(注3)運営管理機関連絡協議会がまとめた「確定拠出年金統計資料」によると、企業型DC加入者のうち投信を保有している人は2021年3月時点で67.9%、1年前に比べ2.0%増加している。
(注4)これは、DCの大半を占める企業型では、パッシブファンドを中心に商品ラインナップが組まれている場合が多いことや、制度内での行われる投資教育の中で、信託報酬がパフォーマンスに与える影響も強調されているため、加入者が選択する投信の中でパッシブファンドの割合が高くなる。

執筆者情報

  • 金子 久

    金融デジタルビジネスリサーチ部

    エキスパートリサーチャー

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