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まん延防止措置延長で経済損失は合計3.1兆円規模に。水際対策の緩和の経済効果が一部を相殺

2022/02/17

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まん延防止措置の延長で経済損失は追加で4,400億円、合計3兆1,220億円に

今月20日に期限を迎える21道府県を対象とするまん延防止等重点措置について、政府は大阪、兵庫、京都、静岡、北海道、青森、福島、栃木、茨城、石川、長野、岡山、広島、福岡、佐賀、鹿児島の16道府県の期限を延長する見通しとなった。他方で、山形、山口、沖縄、島根、大分については、期限通りに解除する方向である。また、2月27日に期限を迎える和歌山県へのまん延防止措置についても、延長する方向だ。期限はいずれも3月6日となる可能性が高い。政府はこれらの措置を18日に正式決定する。

現行のまん延防止措置のもとでは、経済損失は合計で2兆6,820億円に達する計算だ(コラム「13都県まん延防止措置延長で経済損失は合計2.7兆円規模に」、2022年2月8日)。

他方、17道府県で同措置が3月6日まで3週間延長される場合を想定すると、それによって4,400億円の経済損失が追加で生じ、また、1.74万人の失業者が追加で生じる計算となる。

両者を合計すると、経済損失は3兆1,220億円に達する計算となる。これは、1年間の名目GDPの0.57%に相当し、また、失業者を12.37万人増加させる(図表)。まん延防止による年初からの経済損失の合計は、昨年の第3回緊急事態宣言(2021年4月25日~7月11日)の経済損失3.2兆円にほぼ並ぶ計算となる。

図表 まん延防止措置延長の経済損失試算

まん延防止措置の延長で1-3月期はマイナス成長に

上記の計算のように、まん延防止措置の延長によって経済損失が3兆1,220億円に達する場合、それは、1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率で9.0%ポイント押し下げる計算となる。その結果、1-3月期の成長率は、前期比年率-1%程度の小幅なマイナス成長に陥ると見込まれる。

延長されたまん延防止措置がいずれも3月6日で終了する場合、それ以降、あるいは感染縮小と措置終了を見越してそれよりも多少前から、個人消費が持ち直し、年初からの落ち込み分を一部挽回することが見込まれる。その結果、まん延防止措置による実際の1-3月期の実質GDP成長率の押し下げ効果は、前期比年率で9.0%ポイントよりも小さくなる可能性が高い。

他方、個人消費が昨年10月から11月にかけて顕著に増加したプラスの効果は、今年1-3月期の個人消費あるいはGDPの前期比成長率を押し上げる。いわゆるゲタの効果である。これが、1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率で5%程度押し上げると計算される。

水際対策の緩和で1-3月期に1,370億円の経済効果

一方、感染問題に関連する措置としては、このまん延防止措置以外に、外国人の入国を原則禁止する、いわゆる水際措置がとられている。こちらの措置については、3月から1日の入国者数の上限を3,500人から5,000人に引き上げる緩和措置が講じられると見込まれる。

この緩和措置によって、(緩和措置が講じられない場合と比べて)1日に44.2億円の経済効果が生じると試算される(コラム「水際対策緩和の経済効果は年換算で1.6兆円と試算」、2022年2月15日)。3月分では1,370億円となる。1-3月期で考えれば、まん延防止措置という規制強化によって合計3兆1,220億円の経済損失が生じるが、他方で、水際対策の見直しという規制緩和によって、そのうち4.4%程度は相殺される計算となる。

以上のすべての点を考慮に入れると、既にみたように、1-3月期の成長率は前期比年率-1%程度の小幅なマイナス成長に陥ると、現時点では見込まれる。

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