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FRB利上げ加速懸念で米国株が急落。0.75%幅の利上げは行われるか

2022/04/25

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金融市場の関心は0.5%の連続利上げ、0.75%利上げの可能性へ

4月22日(金)の米国市場で米国株価が急落した。ダウ平均株価は終値で前日比981.36ドルと、千ドル近くの大幅下落となった。下落率は2.8%に達したが、これは2020年10月以来である。

背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)による急速な利上げ(政策金利引き上げ)が、米国経済や株価のバリュエーションに与える悪影響についての懸念が市場で高まったことがある。

直接的なきっかけとなったのは、前日21日に国際通貨基金(IMF)が主催するラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁とのパネル討論会で行ったパウエルFRB議長の発言だ。パウエル議長は、5月3・4日の次回米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%ポイントの利上げを実施する可能性が高いことを示唆したうえで、FRBは従来よりも「もう少し早く動くことが適切」と述べたのである。

次回FOMCで0.5%の利上げが実施される可能性については以前からパウエルFRB議長は示唆しており、金融市場では次回FOMCでの0.5%の利上げの可能性をほぼ織り込んでいた。この点から、金融市場はパウエル議長の0.5%利上げの発言に驚いた訳ではない。

市場の注目は、2000年5月以来となる0.5%幅での利上げが、5月のFOMCだけではなく、6月、あるいは7月まで連続して行われる可能性に移っている。さらに0.5%幅ではなく、0.75%幅の利上げとなる可能性も警戒し始めているのである。

0.75%幅の利上げはFRB内でまだ支持を集めていない

0.75%幅の利上げ懸念が浮上するきっかけとなったのは、0.25%の利上げが実施された3月のFOMCでひとり0.5%幅の利上げを主張し、タカ派で知られるセントルイス連銀のブラード総裁が18日の講演で、0.75%の可能性を排除しないと発言したことだ。これをきっかけに、市場では0.75%の利上げも意識し始めたのである。

加えて、パウエル議長の「もう少し早く動くことが適切」との発言から、0.5%幅の利上げが連続する、あるいは0.75%幅の利上げが実施されるとの懸念を金融市場が強めたことが、22日の株価の急落につながったのではないか。

ただし、ブラード総裁は「0.75%幅の利上げは排除しないが、自身のメインシナリオではない」と発言している。また米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は22日に、利上げのペースについては「計画的」なアプローチを望むと述べ、現時点で0.75%の利上げを実施する必要はない、と発言している。0.75%幅での利上げがFRB内で広く支持される状況には至っていないのである。

FRBは市場が発するメッセージに謙虚に耳を傾けよ

FRB内では、多少の温度差があるとはいえ、メンバーは急速な利上げを支持することでほぼ一枚岩となっている。ハト派は消えてしまった感がある。本来、多様な意見の中で、多数決方式で政策が決定されるのが中央銀行の「委員会制度」であるが、それが十分に機能せず、利上げ強化の方向に一直線で進むことへの不安を、金融市場は感じ始めたのではないか。

利上げ懸念で金融市場が大きく動揺し始めれば、FRBも金融市場の安定に配慮して利上げのペースを緩めるなどの政策方針の修正を実施する可能性が出てくるだろう。その際には、米国長期金利が低下して株価を支える一方、日米長期金利差の拡大が一巡することで、急速な円安傾向に歯止めがかかることも考えられるところだ。

しかし、22日の株価下落だけでは、FRBの政策姿勢に影響を与えないだろう。株価の大幅下落持続など金融市場の混乱がさらに拡大する、あるいは米国景気の減速、物価上昇率のピークアウトなどの明確な兆候が確認されるまで、FRBの積極的な利上げ姿勢は変わらないだろう。

ただし、そうした兆候を確認してからFRBが政策を修正し始めても、もはや手遅れとなり、金融市場の動揺を伴う形での米国景気の悪化リスクが、来年にかけて高まってしまう可能性があるのではないか。

そうしたリスクを減らすためには、FRBは、日々の株価などの金融市場の動向に加え、国債市場での逆イールドや市場の予想物価上昇率(期待インフレ率)の変化などに常に最大限の注意を払うことが求められる(コラム「FRBは0.5%利上げへ。米国経済はグロース・リセッションかハードランディングか」、2022年3月30日、「実質金利の水準で占うFRB金融引き締め姿勢の転換時期と歴史的円安の行方」、2022年4月22日)。ハードランディングを避けるには、FRBは市場が発するメッセージに謙虚に耳を傾ける必要がある。

(参考資料)
"Fed's Powell Seals Expectations of Half-Point Rate Rise in May", Wall Street Journal, April 22, 2022

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