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政府の想定を上回る電力会社の電気料金3割値上げ申請:追加で1.5万円の家計負担に

2022/11/28

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電気料金3割値上げの申請

電力各社の間で、家庭向け規制料金の値上げ申請の動きが広がってきた。11月24日には、東北電力が平均32.94%の値上げを経済産業省に申請した。また25日には中部電力が、平均31.3%の値上げを申請している。さらに、東京電力、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力も値上げ申請を検討しているという。

家庭向け規制料金については、「燃料費調整制度(燃調)」に基づいて電力会社が原燃料費を電気料金に転嫁している。ただし、家庭向け規制料金は上限を超えて転嫁できない仕組みとなっており、各社共に既に上限に達している。規制料金の引き上げには、電気事業法に基づいて経済産業省に申請し、認可を受ける必要がある。

現状では、販売価格を上回るコスト上昇分を電力会社が負担しており、その結果、2023年3月期の業績は、公表している8社すべてが最終赤字を見込んでいる。

各社が過去に規制料金の値上げに踏み切ったのは、1970年代から80年初頭の石油ショック後、2013年から15年の福島第1原子力発電所事故後の2回しかない。

注目されるのは、現在値上げを申請している2社の値上げ率は3割程度と、政府が想定している2割程度を上回っていることだ。政府が第2次補正予算編成で実施する予定の電気料金値上げ支援策では、電力会社が来年に電気料金を2割値上げすることを前提に、その分を政府の補助金を通じて消費者に転嫁されない仕組みとなっている。仮に3割の値上げとなれば、さらなる電気料金の値上げが家計の負担となってしまう。

消費者物価0.34%上昇、家計負担1.5万円に

消費者物価統計で電気料金のウエイトは3.41%である。仮に各社の電気料金が来年3割引き上げられ、政府の支援策ではカバーできない1割分、電気料金が引き上げられるとすると、消費者物価は0.34%押し上げられる計算となる。

政府の支援策は来年1月から9月までが想定されており、電気料金値上げ支援による家計の負担軽減は1世帯当たり2万9,857円と試算される(図表)(コラム「経済対策経済効果試算値アップデート(GDP押し上げ効果は2.39%)」、2022年10月28日)。

仮に、電気料金が3割引き上げられ、そのうち支援策でカバーされない1割分が家計の負担となれば、それは1世帯当たり1万4,928円に達する計算だ。これは年間のGDPを0.04%押し下げる。

図表 政府の物価高対策の経済効果試算

政府の電気料金値上げ支援策に対する信頼性低下につながる可能性

西村経産大臣は、「最終的な値上げ幅は今後の国の審査によって確定される」とし、「経営効率化の取り組みがしっかり行われているか、燃料調達の費用見込みが妥当であるか、保有資産の活用が適切であるか厳格に審査する」と述べている。

ところで、企業向け電力の供給などを巡ってカルテルを結んだとして、公正取引委員会は11月25日、独占禁止法違反(不当な取引制限)で、中国電力、九州電力、中部電力の大手電力3社などに課徴金納付を命じる方針を固めたと報じられた。これは家庭向け規制価格の決定とは直接関係はないものの、政府による値上げ幅の決定に何らかの影響を与えるかもしれない。

事態はなお不透明であるが、仮に電力各社に対して平均で3割程度の値上げが認められれば、上記の計算のように、政府の値上げ支援策ではカバーできない想定外の負担が家計にのしかかることになる。これは、政府の電力料金値上げ支援策、あるいは総合経済対策全体に対する信頼性の低下につながり、計画策定の緻密さの欠如が批判されるかもしれない。

ただし、政府の物価高対策はそもそも一時的な措置であり、弥縫策の域を出ていない。個人の生活不安や消費活動への悪影響を根本的に緩和するには、もっと長期にわたる物価環境の安定期待がより重要である。それには、日本銀行が政策修正を伴いつつ、中長期の物価の安定確保に向けた強い意志を示すことが重要だ。他方、政府については、賃金が持続的に高まる環境を整えるため、生産性向上、潜在成長率向上に向けた成長戦略を強化することが、より重要で抜本的な物価高対策となるのではないか。

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