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2023年度政府予算案が閣議決定:来年は歳出積み増しが集中するなか財源議論が漂流するリスク

2022/12/23

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楽観的な成長率見通し、税収見通しを前提にした新規国債発行の減額

政府は23日に、2023年度当初予算案を閣議決定する。一般会計総額は約114.4兆円と、防衛費増額の影響などにより2022年度当初予算から約6.8兆円増加し、11年連続で過去最大規模を更新する。

他方、新規国債発行は35.6兆円程度と、2022年度当初予算の36.9兆円から1兆円程度減額され、財政健全化方針の維持がアピールされる。ただし、これは、高い税収見通しを前提にしたものである。さらにその税収見通しも、2023年度+1.5%という実質GDP成長率見通しを前提にしているが、海外経済の悪化や円高進行の可能性を踏まえれば、この成長率見通しは高すぎるだろう(コラム「政府の2023年度成長率見通+1.5%は高すぎか」、2022年12月22日)。そのため、実際の税収額は見通しを下回り、その穴埋めに当初予算を上回る国債発行が実施される可能性が高いのではないか。

本来の補正予算編成の姿に戻すべき

さらに、来年の景気が輸出悪化、円高進行などの外部環境の変化によって下振れれば、常態化している補正予算編成で実施される経済対策の規模が膨らみ、最終的な新規国債発行額、すなわち財政赤字額は大きく膨らむ(コラム「防衛費など歳出積み増し案件が集中する中、景気減速で中長期財政見通しが一気に悪化する恐れも(2023年度当初予算案)」、2022年12月22日)。

この点から、当初予算の数字だけで、財政健全化に向けた政府の姿勢を評価することはできない。当初予算は、補正予算を前提に編成されている感が強い。

補正予算編成では特に、新規国債発行による財源確保の割合が高いことから、財政悪化を一段と加速させる。この点からも、当初予算編成時には予見できなかった不測の事態への対応という、本来の補正予算編成の姿に戻すべきだ。

一般会計総額は一気に10%~14%も膨れ上がる

この先、歳出を大きく積み増す案件が集中する。2023年度は、防衛費増額の初年度となる。2027年度以降は毎年4兆円の防衛関連支出の増加となる。10年間で20兆円、年平均で2兆円程度の政府のグリーン・トランスフォーメーション(GX)投資も始められる。さらに、2024年度以降にはこども関連予算の倍増計画が始められ、毎年5~10兆円の歳出積み増しが見込まれる(コラム「来年には防衛費増額に加え子ども関連予算倍増の財源議論」、2022年12月21日)。

これらを合計すれば、歳出は年間11兆円~16兆円積み増される。一般会計総額は一気に約10%~14%も膨れ上がるのである。

財源議論が漂流し中長期の財政環境が大幅に悪化するリスク

こうした巨額の歳出積み増しに対して、財源確保の議論が追い付いてないのが現状である。防衛費増額の4兆円のうち、歳出削減、決算剰余金、一時的な財源である防衛力強化資金で3兆円弱を賄い、残り1兆円強に法人増税、個人所得増税、たばこ増税を充てる方針が2023年度与党税制改正大綱で決定された。しかし、増税を巡って与党内の議論は紛糾し、決定は事実上来年に先送りされた。

こども関連予算についても、倍増の方針は政府から示されたが、財源の議論は未だ始まっていない。GX投資については、来年度から投資とその財源を一時的に賄う、つなぎ国債であるGX移行債の発行が始まるものの、それを償還するための財源確保は、2030年代などかなり先になってから始まる予定であり、財源よりも歳出がかなり先行する形となる。

来年は、このように大型の歳出増加案件が集中する中、財源確保の議論が円滑に進んでいくかどうかが大きな注目だ。景気情勢が厳しさを増せば、巨額の経済対策が補正予算編成を通じて実施され、財政環境を一段と悪化させるだろう。

さらに、大型の歳出増加案件の議論も先送りされる、あるいは増税議論が封じ込められる中、なし崩し的に国債発行で賄う方向で議論が進んでいく可能性もある。その場合には、短期だけでなく中長期の財政見通しが、一気に悪化することになる。

こうした点から、来年は、中長期の財政環境や政府の財政健全化の姿勢を占ううえで、極めて重要な1年となるのではないか(コラム「防衛費など歳出積み増し案件が集中する中、景気減速で中長期財政見通しが一気に悪化する恐れも(2023年度当初予算案)」、2022年12月22日)。

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