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消費財流通での変革の兆し

~米国で準備が始まったPOSの2次元バーコード化~

2022/05/11

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POSレジで2次元バーコードがスキャンされる!?

消費財流通で変革が起きる兆しがある。
現在、商品を店舗で買うとPOSレジで読み取られる、商品外装に印字された1次元バーコードが、2次元バーコードに変わるのだ。2027年にこの変化が米国の店舗で起きる見通しだ。この動きを主導しているのがGS1US、流通標準を策定する国際非営利団体GS1の米国組織である。GS1USはこの取り組みをSunrise2027と名付けた1。新たな1日が始まることを意味するSunrise(日の出)になぞらえているわけだ。

図1 2次元バーコード移行を示すマーク

出所)GS1ホームページ(https://www.gs1.org/industries/retail/2D-barcodes

なぜ、この動きが始まったのか。きっかけは、Future of On-Pack Codingという名のGS1のワーキンググループで、アイテムレベルの商品外装表示のあり方が討議されたことだ。アイテムレベルの商品外装表示で問題となっていたのは、「商品外装に目的に応じて複数のバーコードが印字されており、消費者や商品を使う人がどのバーコードをスキャンすればよいかがわかりにくい」「バーコード印刷面積が商品外装で相当な範囲を占めており、見た目が煩雑に見える」ということだった。そこで消費者への情報提供を強化しつつ、バーコード印刷面積を縮小できる方法として、2次元バーコードへの移行に期待が集まった。
2次元バーコードには、商品識別コードは当然として、製造ロット番号や賞味期限などが埋め込まれるようになる。しかし、小売企業から取引先に対して「ウチで販売する商品外装の2次元バーコードに、こういう属性を含めてほしい」といった個別要求が頻発すると、厄介である。国際標準化団体のGS1が関わり、問題が起きる前に標準化を図る意義がそこにある。

2次元バーコード移行で何が変わる?

では、2次元バーコードが商品外装に印字されると、新たに何が起きるのか。小売店舗内外で起きる変化を紹介しておこう。これはあくまで可能性の話である。

1)小売店舗の中

小売店舗の中で起きる変化の1つが自動値引きだ。食品ロスの削減のため、定価販売が原則のコンビニエンスストアでも、賞味・消費期限に近い食品が値引き販売されることが増えてきた。この時、値引き対象商品に「値引きしていること」を示すシール、値引き用バーコードシールの2つが手作業で貼り付けられ、POSレジでの値引き商品1個の販売登録で、バーコードスキャンが2回行われている。
2次元バーコードへの移行によって前述の手間が減る。賞味・消費期限を埋め込んだ2次元バーコードの商品貼付により、賞味・消費期限が近い商品がPOSレジで販売登録される際に値引きが自動的に行われる。販売期限までに残された時間に応じて、値引き額を変えることもできる。小売店頭業務の省力化と食品ロス削減とを同時に実現できるわけだ。

2)小売店舗の外

次に、小売店舗の外では、物流センター、そしてメーカー・消費者間で効果が期待できる。

(1)物流センターでのピースピッキング作業の生産性向上

日本の食品業界には「前日に納品された商品の賞味期限より、今日納品される商品の賞味期限が1日でも古いのは許されない」という商慣行がある。これは日付逆転問題と呼ばれる。顧客への納入商品のピッキング・仕分けが行われる物流センターでは、日付逆転が起きないようピッキング作業中に賞味期限の目視確認が頻繁に行われている。アイテムレベルの2次元バーコード導入により、ピースピッキング作業の生産性向上が期待できる。

(2)D2C(Direct to Consumer)の実現

アイテムレベルの2次元バーコード導入によって、メーカーにとっては消費者とのつながりを強化できる可能性がある。
健康や食品安全への意識が高い消費者は、購入した商品の成分や製造工場等の情報を取得する傾向が強い。商品外装に印字された2次元バーコードを使い、消費者のスマートフォンで商品情報収集が行われる。一方、「消費者が情報を開示すれば」という前提条件がつくが、メーカーが顧客の消費および情報探索の活動を今まで以上に把握でき、「顧客とつながる」ようになる。Sunrise2027がD2C(Direct to Consumer)マーケティングを加速する可能性を秘めているのだ。

世界で消費財流通での変革が起きる兆し。日本は?

店舗のPOSで2次元バーコードを読み取れるように流通の仕組みを変えるのは、簡単な話ではない。小売企業自身のほか、店舗で販売される商品を供給する取引先、店舗へ納入する商品をピッキング・仕分けする物流センターを運営する企業すべてが足並みをそろえる必要がある。
GS1USは2020年12月に啓発資料を公表し、2027年までの期間を4つに分けた移行ロードマップを示した(図2参照)2

図2 Sunrise2027の移行ロードマップ

2022年1月、GS1USがSunrise2027の実現に向けて準備を本格化した。GS1USが、小売企業がSunrise2027の準備ができているかを確認するためのテストキットを公表したのである3。いずれ訪れる変化に備えるために「まずは、今の実力を自ら調べてください」ということの現れだ。
さらに、米国で先行した動きが世界に広がりつつある。GS1グローバルオフィスが動き出した3。「小売業界での2次元バーコード利用」という名の、新たな標準を策定するワーキンググループが設立され、活動が始まった。冒頭の図1は2次元バーコード移行の活動を示すマークである。
さて、日本国内に目を転じると、極めて「静か」である。筆者は約1年前にSunrise2027のことを遅ればせながら知ったが、筆者が知る限りSunrise2027に関する日本語報道は皆無ではないだろうか。これは企業1社で取り組むテーマではない。小売企業・卸売業・メーカーが協力するだけでなく、消費者に行動変革を求めることも必要だ。社会課題と呼んでもよいかもしれない。
今から約40年前、当時、日本で成長中のコンビニエンスストアが、取引先に対し納入商品への1次元バーコード添付を要請した。これがきっかけとなり、日本の消費財流通業界で1次元バーコードであるJANコードが普及し、生産性が向上した。今度は2次元バーコードだ。2次元バーコード移行の影響はサプライチェーン全体に及び、異次元、すなわち、過去とは異なる次元の変革が起きる。
今、世界で消費財流通の変革が起きる兆しがある。しかし、日本は「静か」である。果たして日本は「静か」なままでよいのだろうか。少し騒がしくなることを期待したい。

参考資料

語注

  • ピースピッキング:

    注文や要求に対して在庫の中からその品物を運び出す方法(ピッキング)の1つ。運び出す単位が商品1個ずつ(ピースと呼ぶ)の場合、ピースピッキングと呼ばれる。

執筆者情報

  • 水谷 禎志

    産業ITイノベーション事業本部 産業デジタル企画部

    上級コンサルタント

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