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「DX相談ルーム」

既存の業務変革を目指すDXのポイント:デジタル戦略編 (3)

2022/08/03

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多くの企業が、既存の業務や事業の変革を目指すDXに取り組んでいます。第3回目では、具体的にどのような変革が可能なのか、そして、取り組みに当たって注意すべき点や成功に導くためのポイントをお伝えします。

連載「DX相談ルーム」では、DX推進担当者と、そこに伴走するNRIのシステムコンサルタントの対話を通じて、DXに関して、多くの方が抱く悩みや疑問にお答えしていきます。
※ DX推進担当者は架空の人物です。

話し手:コンサルタント 松延 智彦
1997年銀行系シンクタンクへ入社後、大手システムインテグレータを経て、2004年NRIに入社。ITマネジメントコンサルティング部にてIT組織改革、IT戦略策定、ITガバナンス確立、ITサービスマネジメント改善、情報子会社改革等を数多く手がけるとともに、企業のデジタル変革に向けたコンサルティングや情報発信を行う。

既存の業務や事業の変革を目指すDXの具体例は?

DX推進担当者
既存の業務をただ単に効率化するなら考えやすいのですが、変革となると……。実際、他社は具体的にどのような課題を掲げて、どのような取り組みをしていますか?

松延
第2回でDX1.0のお話をした際に、顧客接点のデジタル化と社内活動のデジタル化に分かれるという話をしました。

まず顧客接点についてお話をすると、よくお聞きするのは、お客様のことをいかに知るかという課題です。お客様の氏名とメールアドレス程度しか知らない、サービス毎バラバラにIDを管理している、あるいは契約が世帯ごとのため個々人の情報は不明など、お客様に関しての詳細な情報が不足している場合が多いですね。

DX推進担当者
お客様に関する理解が不足している、弊社もそうです。その場合、デジタル化でどのように解決できるのですか?

松延
一つは、今持っているお客様に関するデータを一元化するということです。そのうえで、スマホアプリや対面など、様々なチャネルから収集出来るお客様の「動き」をデータとして蓄積します。この「動き」を、一時的な販売局面だけでなく、売った後の商品の使い方などを含めて蓄積することが出来れば、データを分析して、よりお客様を知り、様々な取組みにつなげられます。
また、デジタルならではのワクワクするような顧客体験を提供することも考えられます。店舗で商品にスマホをかざすと在庫確認から支払い、自宅への配送指定まで行える、お薦めの商品を表示してくれるといった体験は、Amazonなどを利用する時に、一消費者として体験していると思います。同じようなこと、もっとワクワクすることを自社でも出来ないかと考えてみるのが良いでしょう。

DX推進担当者
なるほど。
B2Cの場合はイメージし易いのですが、B2Bのビジネスにおいても、顧客接点で効果的な事例はありますか?

松延
そうですね。顧客接点と社内活動の両方に跨る話として、営業活動の成約確率を高めるDXがあります。いつ、どこに、誰と一緒に、どんな商談を持っていき、それがどうなったか、営業活動を記録します。そのデータをAIで分析すると、例えば「このタイミングで上司のA氏と商談に行くと、成約確率が30%向上する」といったことがわかります。
こういった、「社内有識者の職人技」によって行われていた業務を、デジタル化によって誰にでも分る“知”、言い換えれば無形資産として蓄積するということが社内活動デジタル化の本質だと思います。

DX推進担当者
なるほど、具体的な取り組みのイメージが湧きました。

  • ご紹介したのは一例で、変革は営業活動に限りません。さまざまな企業が、勘や経験頼りだった業務を、データに基づいて効果的に行えるよう、変革しています。

既存の業務や事業の変革を成功させるためのポイントは?

DX推進担当者
既存の業務や事業を変革するにあたっては、やはり課題の洗い出しが必要ですよね?

松延
そうですね。ただ、課題の洗い出しにあたって、注意すべき点があります。既存業務や事業の変革は、既存の部門を中心に行うことが多いのですが、課題の洗い出しを既存部門の関係者だけで行うことのリスクを認識しておいた方が良いと思います。

DX推進担当者
え、そうですか? 現場が一番わかっているから、既存の部門に任せれば良いと思っていました。

松延
現場を良く知っているが故に、現在の延長線上で業務の効率化を進めようと、小さな課題に目を向けがちです。しかし変革には、「そもそも自分たちの業務は本当に必要か?」という自己否定的な問いが重要です。
日本企業の場合、過去からの慣習でやり続けている業務も多く、内部の人間にはそれを「おかしい」と思えない場合もあります。

DX推進担当者
自己否定的な問いを現場で考えるのは確かに難しそうですね。社長や役員レベルでの視点で、課題を探さないと……。しかし、そこまでの変革となると、社内に抵抗勢力が出てきそうです。

松延
そこで大事になるのが、DXによって何を成し遂げ、どのような姿にしたいのかというビジョンです。組織のトップがビジョンを示すこと、そして、関係者を巻き込んでいくこと、ビジョンそのものよりも、組織トップが本気で実現するという姿勢を、どれだけ示すことが出来るかが、変革を成功させるための重要ポイントです。

今回は、既存の業務や事業の変革の難しさと、それを乗り越えるための視点、そして、大きな価値をもたらす具体例をご紹介しました。

次回は、「ビジネスモデル変革を目指すDXのポイント」をお届けします。

執筆者情報

  • 松延 智彦

    システムコンサルティング事業本部統括部長

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