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米国は中国製クレーンを偵察用の「トロイの木馬」として警戒:米国が世界のカネの流れ、中国が世界のモノの流れをそれぞれ牛耳る構図に

2023/04/03

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米国は中国製の巨大クレーンを「トロイの木馬」として警戒

米国政府は、中国の上海振華重工(ZPMC)製の貨物用の巨大クレーンが、中国政府の偵察ツールになっている可能性がある、として懸念を強めている。またそれを、「トロイの木馬」になぞらえている。

ZPMCによれば、同社は世界のクレーン市場で70%前後のシェアを占めており、100か国以上に製品を供給しているという。また、米当局者は、ZPMC製の船舶貨物陸揚げ用クレーンの米国の港湾でのシェアは、全体の80%近くに達しているとしている。

米全土の港で船舶とのコンテナの積み下ろしに使われるそのZPMC製のクレーンには、コンテナの出所や目的地を登録し追跡できる高度なセンサーが搭載されている。米国政府は、中国がこれを通して米軍が海外の作戦に動員する物資などの情報を収集する可能性があり、安全保障上の脅威になっているとしている。

2017年にはZPMCの当時の会長がマイクロソフト社のホームページに掲載された動画で、「上海本社のオフィスを通してすべてのクレーンをモニターできる」と語っており、これも米国政府の懸念を高めている。

中国軍が遠隔操作でZPMCのクレーンを停止させたら、軍事力を動員することなく米国の港湾を麻痺させ、米軍の動きを制限することができる、との懸念もある。

ZPMCの巨大クレーンが中国政府の偵察ツールになっている、いわば「トロイの木馬」となっている証拠は今のところないだろう。他方で、中国が米国を含めて世界の海上輸送の情報をどの国よりも把握しており、ZPMCの巨大クレーンが得ている情報が、そこにも貢献している可能性は高いだろう。

中国は「LOGINK」で世界の物流を制する

中国は、2007年に開発された「LOGINK」と呼ばれる物流情報システムを用いて、世界の物流を牛耳っている(コラム「一帯一路構想のもと世界の物流データの支配を強める中国とデータを巡る米中覇権争い」、2022年1月7日)。LOGINKは世界の荷主を結ぶデジタルネットワークで、「ワンストップの物流情報サービスプラットフォーム」とも呼ばれている。そこでは、公的データベースのほかに、45万以上に上る中国国内および世界各地の巨大港湾のユーザーから入力された情報も併せて利用されている。

LOGINKのシステムを使って、ユーザーらはあたかもSNSのようにつながり、情報を共有することができる。そして中国政府はそのLOGINKの管理者として膨大な情報を入手し、それを経済、あるいは安全保障上の戦略に活用することが可能である。

さらに、このLOGINKの情報を税関データと組み合わせることができれば、価格や数量、顧客などに関する価値の高い情報を作り上げることもできるのである。

ZPMCの巨大クレーンが得ている情報をLOGINKの情報と組み合わせることで、中国はより付加価値の高い物流情報を得ている可能性が考えられる。

米国が世界のカネの流れを握り中国が世界のモノの流れを握り対立する構図に

LOGINKの正式名称は国家交通運輸物流公共信息平台(国家物流平台)であり、中国国内で長年にわたって、海運、トラック運送、製造業の貨物データおよび財務情報を集約して発展を遂げてきた。その転機となったのは2010年であり、より迅速に貿易の流れを把握すること目指して、アジア各地の港湾と提携するようになったのである。

そして最近では、一帯一路構想に参加している国の港湾や、欧州および中東の貨物データシステムとも連携するようになっている。ZPMCは一帯一路構想の主要な請負業者の一つである中国交通建設(CCCC)の子会社だ。ZPMCが、中国の軍事的な活動に関与しているかどうかは明らかではないが、中国の国家戦略である一帯一路構想の推進に貢献している可能性は考えられる。

世界の国際資金決済については、銀行間国際決済ネットワークのSWIFTを通じて米国がそのデータを牛耳り、それを安全保障政策にも最大限利用してきた。今度は、中国が世界の物流データを牛耳り、それを対米戦略に活用する可能性も出てきたのかもしれない。

米国が世界のカネの流れを握り、他方で中国が世界のモノの流れを握る。そうして両国が激しく対立する世界の構図となるのである。

(参考資料)
"Pentagon Sees Giant Cargo Cranes as Possible Chinese Spying Tools(中国製貨物クレーンは偵察用か 米当局が懸念)", Wall Street Journal, March 6, 2023

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