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利上げ停止の後に年内2回の追加利上げを示唆したFRB

2023/06/15

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年内2回の追加利上げ示唆も利上げは最終局面

6月13・14日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備制度理事会(FRB)は、昨年3月から10回連続で実施してきた利上げの見送りを決めた。これは、事前予想通りの結果であったが、明らかに今までの利上げ姿勢が変化したことを意味している。

他方でFRBが、次回7月のFOMC以降の追加利上げの可能性を示唆することで、早期の利下げ観測をけん制することが予想されていた。早すぎる利下げ観測の高まりは、長期金利低下、ドル安、株高をもたらし、金融引き締め効果を減じてしまうからだ。

ただし予想外であったのは、FOMCの先行きの見通しで、年内追加で0.5%の利上げ、0.25%ずつであれば年内2回の追加利上げの可能性が示唆されたことだ。これは事前予想を上回る幅だ。

足元では利上げの一旦停止と利上げ継続の双方の意見がFRB高官から示されていたことから、今回の利上げ見送りについては採決で反対票が出ることも予想されていたが、実際には全会一致の決定だった。このことは、既に相当の幅での利上げが実施されてきており、今後はその影響を慎重に見極める必要があるとの見方が、FOMC内でコンセンサスになっていることを意味していよう。この点からも、利上げは既に最終局面にある可能性が高い。

経済・物価の上振れと早期の利下げ観測けん制の狙いで金利見通しは上方修正

声明文では、今回利上げを見送ったことで、「委員会に追加の情報とその金融政策への意味合いを評価できる」とされた。そのうえで、必要に応じて追加の利上げを実施する準備があることが示された。

FOMC参加者による経済、物価、政策金利見通し(SEP)によると、今年年末時点でのフェデラルファンズ(FF)金利の予測(中央値)は、前回3月の5.1%から5.6%へと0.5%ポイント引き上げられた。これは、FF金利のレンジが現在の5.0%~5.25%から5.50%~5.75%へと引き上げられる見通しを示している。2024年末、2025年末については、それぞれ見通しは0.3%ポイント引き上げられた。

政策金利の見通しが引き上げられた背景には、今回のFOMCでの利上げ見送りが早期の利下げ観測を高めることをけん制する意図があるのではないか。それに加えて、足元の経済、物価情勢が、前回3月時点での見通しよりも上振れていることが背景にある。

2024年及び2025年の成長率、物価見通しはほとんど修正されていないが、2023年の成長率見通しは、前回の+0.4%から+1.0%へ、失業率は4.5%から4.1%へ、コアPCEは+3.6%から+3.9%へとそれぞれ上方修正された。

金融市場はオーバーキルのリスクを改めて意識

今回のFOMCで示された年内の追加利上げ幅は事前予想を上回ったが、それに対する金融市場の反応は複雑であった。ダウ平均株価は大幅に下落した。先行きの金利見通しの引き上げによって株価のバリュエーションの調整が生じた、との解釈もできるが、他方で金利による敏感なナスダックの株価は上昇している。この点から、ダウ平均株価の大幅下落は、追加利上げによる景気悪化を警戒したものと考えられる。

FOMCで追加利上げが示唆されたことで、2年国債利回りは前日から0.1%ポイント程度上昇した。他方、10年国債利回りは逆に0.2%ポイント程度低下し、逆イールドが一段と進んだ。これも、追加利上げによる景気悪化懸念を反映したものだろう。

他方で、予想を上回る追加利上げの可能性が示唆されたにも関わらず、為替市場の反応は限られた。これは、追加利上げによるドル高観測と景気悪化によるドル安観測とが、互いに打ち消しあった結果ではないか。

このように金融市場は、FRBの利上げによって景気が悪化するオーバーキルのリスクをより意識したように見える。実際、あと2回の利上げが実施されれば、実質金利(FF金利-中長期の予想物価上昇率)は3%台半ばと、リーマンショック前の3%程度を大きく上回ることになり、オーバーキルのリスクは高まるのではないか(コラム「物価上昇率の低下持続でFRBは利上げ見送りへ」、2023年6月14日)。

こうした点を踏まえると、日本銀行の緩和継続観測とFRBの追加利上げ観測によって1ドル140円まで進んだ円安ドル高の流れも、そろそろ一巡するのではないか。それは、予想外の日本株高を演出してきた大きな要因が薄れることを意味しよう。

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