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順調に回復するインバウンド需要:2023年推計値は5.9兆円とコロナ前超え(6月訪日外国人数)

2023/07/20

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6月の訪日外国人数はコロナ前の7割の水準を回復

日本政府観光局は7月19日に、6月分の訪日外客数を発表した。コロナ前の2019年同月の72.0%と7割の水準を回復した。昨年10月の水際対策緩和をきっかけに、訪日外国人数は順調な回復を続けている。

注目されるのは、コロナ前には第1位だった中国からの訪日数が、6月に2019年同月の23.7%の水準と4分の1以下になお留まる中でも、全体としては7割の水準を回復していることだ。

6月時点で2019年同月比の上昇率を国別にみると、上位は、米国が+29.2%、メキシコが+19.8%、フィリピンが+15.7%などとなっている。北米地域からの回復が急速であり、特に足元では米国からの増加が際立っている一方、欧州地域からの訪日客の回復は概して遅れ、アジア地域からの訪日の動向はまちまちとなっている。

観光庁が同日に発表した2023年4-6月期の訪日外国人消費動向調査によると、同期の消費額は1兆2,052億円で、2019年同期と比べて95.1%の水準となった。訪日外国人の消費額、いわゆるインバウンド需要は、コロナ前の水準をほぼ取り戻しつつある。訪日外国人数と比べて、消費額の回復ペースの方が速いのは、訪日外国人一人当たりの消費額が、コロナ前よりも大きいためだ。

円安の影響などで一人当たりの消費額が高水準を維持

4-6月期の一人当たり消費額(旅行支出)は、20.5万円となった。1-3月期の21.1万円から僅かに低下したものの、コロナ前の2019年の15.8万円を大きく上回っている。

一人当たり消費額がコロナ前の水準を上回っている最大の理由は、この間の円安進行によって、訪日外国人数の自国通貨建てでの支出額が変わらなくても、円建てでは大きく増えたことだ。円安進行によって外国人観光客の日本での旅行は割安になったのである。

第2の理由は、コロナ禍で3年間もの間日本の旅行ができなかったリピーターを中心とする訪日外国人が、この間の支出を遅れて行う、ペントアップディマンドが生じたことだ。第3の理由は、外国人観光客が、日本の観光資源を再発見し、そこにより大きな価値を見出したことだろう。

高付加価値化と地方誘導が重要

外国人観光客が急速に戻る中で、宿泊先の不足や宿泊業での人手不足など、ボトルネックの問題が早期に浮上する可能性がある。これへの対策として、訪日客の一人当たりの支出額を増やす高付加価値戦略が重要だ(コラム「中国からの入国規制緩和でインバウンド需要は勢いづく:ポストコロナのインバウンド戦略の鍵は3つ」、2023年4月18日)。実際には、円安に助けられた面が大きいとはいえ、高付加価値化は実現できている。

今後は、訪日客に日本の観光資源を再発見させる形で、持続的な高付加価値化に取り組んでいくことが重要だ。さらに、訪日客に地方での観光資源を知ってもらい、より地方に誘導していくことも、ボトルネック緩和に役立つ。それは、地方経済活性化にもつながり、日本経済全体への好影響も期待されるところだ。

2023年インバウンド需要推計5.9兆円を維持

さて筆者は、今年4月に先行きの訪日外国人数と消費額、いわゆるインバウンド需要の見通しを改定した(コラム「中国からの入国加速で今夏にも外国人観光客数はコロナ前の水準に:2023年インバウンド需要推計は5.9兆円:供給制約解消が喫緊の課題に」、2023年4月19日)。訪日外国人数の回復ペースは、その時点での見通しをやや下回っているものの(図表)、一人当たりの消費額については、予想外に高水準が維持されている。そのため、2023年インバウンド需要は5.9兆円に達し、コロナ前の2019年の4.8兆円を大きく上回るという見通しを維持したい。

図表 訪日外国人観光客数の見通し

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