フリーワード検索


タグ検索

  • 注目キーワード
    業種
    目的・課題
    専門家
    国・地域

NRI トップ ナレッジ・インサイト コラム コラム一覧 所得減税・給付金は総額5.4兆円、GDP押し上げ効果+0.19%と暫定推定

所得減税・給付金は総額5.4兆円、GDP押し上げ効果+0.19%と暫定推定

2023/10/26

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

減税・給付金の総額は5.4兆円と推定

26日に政府・与党政策懇談会が開かれ、岸田首相が減税策について具体的な検討を指示する。それを受けて、与党税制調査会が減税策の具体的な内容について議論を始める。

現在までに報道されているところによると、一人当たり所得税3万円、住民税1万円をそれぞれ定額で1年間減税し、非課税世帯には7万円を給付する。さらに、扶養家族にも一人当たり4万円を給付することが検討されている。他方、年収2,000万円などで減税に所得制限を設けることも検討されている。

国税庁の「令和4年民間給与実態調査」によると、2022年の給与所得者数は5,077.6万人であるが、そのうち非課税対象に概ね相当するとみなされる年間所得100万円以下が全体の7.8%である。そのため、課税対象者は4,681.5万人となる。この課税対象者に一人当たり4万円の減税が実施されると、その総額は4,681.5万人×4万円で1兆8,726.0億円となる。

他方、厚生労働省の「2022年国民生活基礎調査」によると、2022年の世帯数は5431.0万であった。このうち、非課税対象とみなされる100万円未満を除く世帯は全体の93.3%であり、5,067.1万世帯である。また、世帯当たりの平均構成数は2022年に2.25人であった。ここから、扶養家族数を世帯数の1.25人とみなすと、5,067.1万世帯×1.25人で6,333.9万人となる。扶養家族数が一人当たり4万円の給付を受けると、その総額は6,333.9万人×4万円で2兆5,335.6億円となる。

ところで、国税庁の「令和4年民間給与実態調査」によると、2022年の給与所得者のうち、年収2,000万円以上の高額所得者は全体の0.9%である。現在検討されている年収2,000万円での所得制限によって、所得減税の対象、扶養家族への給付の対象が同比率で減少すると仮定すれば、所得減税の総額は1兆8,726.0億円×99.1%で1兆8,557.5億円、扶養家族への給付の総額は2兆5,335.6億円×99.1%で2兆5,107.6億円となる、両者の合計は4兆3,665.1億円となる。

他方、住民税も所得税も非課税となる世帯数は約1,500万世帯とされる。この非課税対象世帯に7万円の給付が実施されると、その総額は1兆500億円となる。

以上の所得減税、扶養家族への給付、非課税世帯への給付を合計すると、5兆4,165.1億円となる。

減税・給付のGDP押し上げ効果は+0.19%と推定

5兆円の所得減税は実質GDPを1年間で+0.25%押し上げると試算される(コラム「岸田首相は期限付きの所得税減税を検討:5兆円でGDP押し上げ効果は+0.12%」、2023年10月20日)。ただしこれは恒久減税の場合であり、今回のような期限付き減税の場合には、その効果は半減し、+0.12%と推定される。また5兆円の給付金は実質GDPを1年間で+0.21%押し上げると考えられる。

この試算結果を当てはめると、所得減税の実質GDP押し上げ効果は、(1兆8,557.5億円/5兆円)×+0.12%で+0.05%となる。また、扶養家族への給付の実質GDP押し上げ効果は、(2兆5,170.6億円/5兆円)×+0.21%で+0.11%となる。

さらに、非課税世帯への給付の実質GDP押し上げ効果は、(1兆500億円/5兆円)×+0.21%で+0.04%となる。この3つを合計すると、実質GDP押し上げ効果は、+0.19%となる。景気浮揚効果としては限定的と言えるだろう(図表)。

また、減税策を含む総合経済対策全体の規模と経済効果については、現時点での大まかな暫定値として、以下のように想定している(コラム「経済対策は真水で10~15兆円規模か:暫定経済効果推定でGDP1%強」、2023年10月24日)。

図表 総合経済対策の暫定想定

(参考資料)
「減税案、所得税3万円」、2023年10月26日、日本経済新聞

執筆者情報

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn