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DX時代のマスターデータマネジメント

~挫折しないデータ整備の進め方~

2023/02/07

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データマネジメントによるデータの利活用に注目が集まっていますが、なかなか手をつけられていない企業が少なくありません。大量のデータはあるものの、十分に管理しきれずビジネスに活用できていないのです。これを解決するには、まずデータマネジメントの基盤となるデータ整備について考える必要があります。そこで本記事では、2回に分けて、マスターデータマネジメント(MDM)について取り上げます。第2回目では、マスターデータマネジメントシステムについて、導入の進め方や、ツール選び、注意すべきポイントについて解説します。

執筆者プロフィール

関西ITコンサルティング部 松田 真:
2002年、SIerに入社し業務アプリケーションシステム開発や品質管理に従事。その後、監査法人系列コンサルティングファームでリスクマネジメントコンサルティング業務を経験後、2009年に野村総合研究所に入社。関西圏の企業・団体向けに、IT組織の構造改革・伴走支援を中心としたシステムコンサルティング業務を行っている。中小企業診断士、公認システム監査人(CISA)。専門は、ITガバナンス・デジタルガバナンス整備、COBIT5/2019、データマネジメント、情報セキュリティ、システム監査。

はじめに

こんにちは。野村総合研究所 関西ITコンサルティング部の松田です。
関西の製造業を中心に、デジタルガバナンス整備に関する支援などを行っています。今回は、その中のマスターデータマネジメント(MDM:Master Data Management=マスターデータ管理)について取り上げます。

前回は、ビジネスにおけるデータ活用には、マスターデータ基盤を整備し、マスターデータマネジメント(MDM)を導入することがとても重要だということをご説明しました。

MDMの導入は、目的や期待する効果を明確にしたうえで進める必要があります。今回は、MDM導入のステップを解説した後、導入に取り組んでいる企業からよく相談を受ける「行き詰まるポイント」についてもご紹介します。

マスターデータマネジメント(MDM)導入の進め方

まず、MDM導入の進め方についてお話します。導入は大きく分けて3つのステップで進めます。

Step 1 マスターデータを定義し、データを準備する

どのデータをマスターデータとして管理するかを決定します。まずは対象となる分野を考えます。商品だけを見るのか、顧客も含むのかなどの大枠を決めていきます。対象とした分野のなかで、マスターデータとするデータを選択します。また、データが階層化している場合、どの階層までをマスターデータにするかを決めていきます。例えば、商品が、開発試作品→営業対象品→生産対象品のような3階層になっている場合、どこまでを含めるのかを検討します。そして、どのデータを全社で集中管理し、どれを各組織/システムで自由に管理できるようにするかもこの段階で考えていきます。「営業対象品と生産対象品は全てを集中管理とするが、開発試作品に関しては商品化が決まったもののみを全社で集中管理する」という判断をした実例もあります。

第1回でマスターデータの「問題洗い出し」と「効果の明確化」について解説しましたが、「効果」を創出する上で必要なものは、積極的に集中管理側へもっていきましょう。また、この段階でマスターデータとして管理することになるデータのクレンジングなどの移行準備を計画しておくことをおすすめします。

Step 2 マスターデータの管理プロセス・体制を定義する

どのデータをマスターデータとして管理するかが決まったら、その管理プロセスや組織体制、システムを定義します。管理プロセスについては、マスターデータを生成、変更、配信、廃棄する際の作業ルールを決めていきます。組織体制については、役割分担と業務の定義を行います。例えば、データの不整合を排除するための確認を行う場合、自動チェック機能を入れるのか、あるいは担当者が手作業でチェックするのかなどを決めていきます。誰が担当するかなども具体的に検討していきましょう。

なお、新しい業務やシステムのためのマスターデータ整備であっても、既存の業務・システムにも影響が及ぶこともあるので、あわせて検討していくとよいです。

Step 3 MDMツールに必要な機能要件を整理する

MDMの導入にあたっては、MDMシステムを自社でゼロから構築するのは時間がかかりますので、MDMツールの導入をおすすめします。ITベンダーから様々なツールが提供されています。ツールごとにそれぞれの特徴があり、自社の目的や課題を踏まえて選びましょう。ツールを選定する準備として、MDMツールがもつべき機能要件をリスト化しましょう。もつべき機能要件とは、マスターデータの登録や変更といった基本的な管理機能だけでなく、変更履歴の保持機能、過去のある時点の再現機能、他システムとのデータ同期機能、データの妥当性チェック機能といったものです。ツールによっては、複数階層のデータを管理できない場合もありますので、Step1で整理したマスターデータ構造の実現も、要件としてリストに入れましょう。データクレンジング機能については、必要に応じてリストに追加してください。また、既存システムの改修が必要な場合は、改修内容を整理し、そちらの準備も並行で進めることをおすすめします。

MDMツール選びのポイント

ツールを選定するにあたっては、必要な機能を備えているかを中心に、以下のポイントを考慮して検討します。

  • 機能:Step3で整理した機能要件を満たすか、不要な機能が多くないか
  • コスト:初期導入コストとランニングコストのトータル費用は妥当か
  • 導入しやすさ:すぐ入れて使えるのか、導入まで大掛かりな準備がいるのか
  • サポート体制:初期導入時はもとより、使いだしてからもサポートしてもらえるか
  • 実績:日本における導入実績があるか

MDMツールはすばやく入れて育てていく類のものなので、導入後のサポートが重要になります。ただし、ツールによっては操作が簡単ですぐに使いこなせるものもあるので、その場合は、サポート体制はそれほど気にしなくてもよいでしょう。

MDM導入で挫折しないためのヒント

マスターデータマネジメントは複数の組織が絡む全社横断的な取り組みです。複数組織にまたがる場合、社内にいくつものデータベースがあり、個々の組織において独自ルールでデータを管理しているケースが散見されます。その場合、データの整合性がとれず、一貫性のあるデータ管理が困難になってしまいます。

こうした場合での、企業が陥りがちなパターンとして以下の2つがあげられます。

パターン① 誰がマスターデータをキレイに保つのか

マスターデータは複数組織で横断して情報を登録・利用するため、どこがとりまとめるべきか主管部門がなかなか決まらないことがあります。基本的には、全社共通の管理部門の担当者が適任です。該当する部門がない場合、横串機能のチームを新たに編成して、クロス組織化するようにしましょう。

パターン② 過去データの移行がボトルネックになる

過去データの移行は一番やっかいな問題です。担当者個人がバラバラに管理していたり、記録が残されていなかったりすると、再現するのに多大な負荷がかかってしまいます。その場合、「未来に向けた投資」と考えて、「過去データまではキレイにしない」という判断も時には必要になります。分析や学習に必要なデータ量を揃え、スピードを優先して取り組むことをおすすめします。

これらの問題はどの企業にも共通して起こりえるものです。それがマスターデータマネジメントの推進の壁となり、なかなか先に進まない原因となっています。導入初期の段階で関係組織と意識合わせを行っておきましょう。

おわりに

第4次産業革命下の現在は、かつての石油のように、データが主役の時代です。データ分析やAIの教育に使える精度の高いデータを大量に蓄積できているかどうか、そのデータが正しく管理できているかどうか、その差が企業の競争力の差となる時代がすぐそこまで来ています。

データ活用に取り組むにあたっては、2回にわたってご紹介したマスターデータマネジメントを導入してはいかがでしょうか。データ基盤の構築やデータマネジメントの導入・定着には時間がかかります。時代に乗り遅れないよう、導入検討はできるだけ早く着手し効率的に実施していきましょう。

なお、NRIでは「マスターデータマネジメント構想・企画策定」のご支援をしております。お気軽にご相談ください。

執筆者情報

  • 松田 真

    関西ITコンサルティング部

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