株式会社野村総合研究所では、2003年より毎年、売上高上位の国内企業約3000社を対象に「ユーザ企業のIT活用実態調査」を実施しています。この連載では、最新の調査から、いくつかの設問をピックアップして集計結果をご紹介します。日本企業のIT活用動向を知るとともに、自社のデジタル化および情報化の戦略を考える一助としてご活用ください。
調査では、各社のIT投資予算について、売上高に対する比率を尋ねています。例えば、売上高が1,000億円で、IT投資予算が20億円であれば、IT投資予算の対売上高比率は2.0%となります。なお、ここで言うIT投資予算には、減価償却費を含まず、社内人件費を含みます。
下記の図は、2022年度の調査結果から各社のIT投資予算対売上高比率の分布を示したヒストグラムです。
図 対売上高IT投資予算比率の値の分布
注)0.01%未満と100%超をあらかじめ外れ値として除いて表示
図の横軸は、各企業のIT投資予算が売上高に占める割合を表しており、右側にいくほどIT投資予算が多い企業、左側にいくほど少ない企業となります。縦軸は回答の件数を表しています。なお、横軸は対数軸を用いており、低い値ほど分類が細かくなるように工夫しています。
この図を見ると、図の真中に位置する標準的な企業の場合、IT投資予算の対売上高比率は1%前後です。実際に、全体の中央を示す中央値を計算すると1.0%となります。一方で、投資予算の比率が低い方では0.5%以下の企業が全体の約1/4を占めており、逆に比率が高い方では2.0%以上の企業が約1/4を占めています。このような場合、平均値(算術平均)は高い方にずれてしまい、あまり当てになりません。
IT投資予算の対売上高比率は業界によってかなりの差があります。例えば、製造業の中央値が1.0%であるのに対して、金融業の中央値は5.5%となっています。IT投資予算が業界の中央値よりもあまりに少ない場合、ITを使った効率化や価値向上が十分に行われていない可能性があります。しかし、IT投資予算が多いからといって、必ずしも良いとは言えません。IT投資予算が多い企業は、ITを使った変革に熱心な企業かもしれませんし、逆に、非効率なIT投資を行っている企業かもしれません。その点については、IT投資の内容について、目的別にどのような配分となっているかを確認する必要があります。
IT投資が適切な状況にあるかを見極めることで、投資の効率を高め、企業の競争力を高めることができます。皆さんの会社はどのような状況にあるのか、一度確認してみてはいかがでしょうか。
次のページ:日本企業のIT活用とデジタル化 - IT活用実態調査の結果から
第3回 日本企業はビジネスの変革に向けたIT投資が十分にできているか
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