株式会社野村総合研究所では、2003年より毎年、売上高上位の国内企業約3000社を対象に「ユーザ企業のIT活用実態調査」を実施しています。この連載では、最新の調査から、いくつかの設問をピックアップして集計結果をご紹介します。日本企業のIT活用動向を知るとともに、自社のデジタル化および情報化の戦略を考える一助としてご活用ください。
調査では、IT費用の支出の目的を「ビジネスの変革」と「ビジネスの維持」にわけてその配分を尋ねています。ビジネスの変革に向けた支出は、商品・サービスの品質や提供スピードの向上などへの投資で、ビジネスの維持に対する支出は、法制度変更への対応、維持管理・運用、業務量増加に伴う増強、セキュリティ向上などにかかるコストです。回答者が答えた数値の平均をとると、IT費用の配分は、ビジネスの変革が31.2%、ビジネスの維持が68.8%という結果になりました。
図1 IT費用の支出割合(2021年度実績)
さらに、支出割合の区分(ビジネスの変革/ビジネスの維持、もしくはそれに準じた区分)について適切な割合で振り分けるような改善を行なっているか尋ねたところ、「計画的な改善を行ない、成果があがっている」と答えた企業は全体の27.2%、「計画的な改善を行なっているが、成果を得るには至っていない」と答えた企業は32.8%であり、約60%の企業が計画的な改善を行なっていることがわかります。(図2)
また、計画的な改善を行なっている企業の方がビジネスの変革に向けた支出割合が高い傾向を示す結果もでています。グラフの掲載は省略しますが、計画的な改善を行なっていない企業ではビジネスの変革に向けた支出割合が平均26.4%であるのに対し、計画的な改善を行なっている企業では平均33.7%と約7.3%高くなっています。
図2 支出割合の改善に関わる計画と管理
限られたIT予算の中で、ビジネスの維持にかかるコストが増加すれば、ビジネスの変革に向けたIT投資は圧迫されます。そうならないためにも、ビジネスの変革と維持に対する支出割合を把握し、計画的に改善していくことが重要です。
執筆者情報
DXブログの更新情報はFacebook・Twitterでもお知らせしています。
新着コンテンツ
-
2024/10/10
米ハリケーンへの対応を巡る民主・共和の情報戦とハリス氏のメディア戦略
木内登英のGlobal Economy & Policy Insight
-
2024/10/09
石破首相の言動の変化が問われた党首討論:議論は政治資金問題に集中
木内登英のGlobal Economy & Policy Insight
-
2024/10/09
木内登英のGlobal Economy & Policy Insight