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BPR再入門

~IT・デジタル活用における温故知新~

2023/06/26

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執筆者プロフィール

産業ITコンサルティング二部 藤本 佳那子:
2006年野村総合研究所(NRI)入社。不動産業界を中心としたシステム化構想・計画の策定支援、業務改革、PMO支援が専門。顧客企業に寄り添った支援を得意とする。

はじめに

野村総合研究所 産業ITコンサルティング二部の藤本佳那子です。不動産業界を中心にシステム化構想・計画、業務改革、PMO支援を行っています。
企業は急速な変化に柔軟に対応し、競争力を維持するため様々なデジタル技術やIT活用に取組まれています。しかし小手先の活用では効果は限定的です。そこで今回は、古くから使われているビジネスプロセス改革手法の原点とも言えるBPR(Business Process Re-engineering)の考え方を振り返りたいと思います。

BPRとは

BPRとは、業務本来の目的を達成するために、既存の組織や制度を抜本的に見直し、プロセスの視点から、職務、業務フロー、管理機構、情報システムを再構築することです。BPRは、1993年にマイケル・ハマーとジェイムス・チャンピーが出版した「Reengineering the Corporation: A Manifesto for Business Revolution」によって世界的に有名になりました。
(参考)https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/alphabet/bpr

BPRで最も重要な概念は「抜本的」という部分です。業務プロセスを「白紙」から根本的に再設計していきます。根本的な再設計のために、既存の枠組みにとらわれないゼロベース思考や横断的な視点を持ち、ITやデジタル技術を最大限活用していくというアプローチをとります。

DXにおけるBPRの重要性

DXを推進する企業において、BPRの考え方が改めて重要である理由は、デジタル技術やAI技術の進化がBPRを可能とし、さらにその有効性を高めているからです。これらの技術進化により、自動化、予測分析の高度化、意思決定支援、リアルタイム性の向上といった新たな可能性が生まれています。これらのテクノロジーを利用し組み込むことで、従来よりもはるかに最適なビジネスプロセスが構築可能となります。既にBPRを導入している企業であっても、これら新技術を前提としたビジネスモデルの再設計が求められます。

BPRは新しい手法ではありませんが、DXに取り組んでいる企業にとっても、基本的な手法として有効であるといえます。

BPR計画の立て方

BPR計画は一般的に以下に示す5つのステップを通じて、策定します。

Step1:事業戦略・方針確認
Step2:現行業務・システム現状整理、課題抽出
Step3:新業務プロセス検討
Step4:概算費用・効果整理
Step5:今後のロードマップ策定

Step1:事業戦略・方針確認

企業の経営方針、中期経営計画、事業戦略を深く理解し、それがBPR計画にどのように関連しているかを整理します。BPRは企業の事業戦略と密接に関連しているため、BPRの目的と目標がこれらの戦略と方針と一致していることを確認する必要があります。このステップにより次のステップ、つまり現行業務とシステムの現状の整理と課題抽出の範囲が定まります。

Step2:現行業務・システム現状整理、課題抽出

企業の現行業務プロセスとシステムを詳細に調査・分析します。ここで特定した課題や改善点が、次のステップで新しい業務プロセスを検討するための論点となります。

Step3:新業務プロセス検討

Step2で抽出した課題を解決するための新しい業務プロセスを設計します。どのような業務プロセスを実現すれば、既存の業務プロセスの課題を解決できるかを、新しいアイデアや技術を取り入れながら、具体化していく、BPRの核となる工程です。そして、新業務プロセスについて、すべての関係者と合意するという点でBPRの成功を担う要の工程とも言えます。

Step4:概算費用・効果整理

新業務プロセスの導入に伴う費用とその結果として期待できる効果を評価します。その結果を元に、プロジェクトのROI(投資対効果)を見積もり、プロジェクトの費用対効果を判断します。一世代前までは、人手で行っていた業務のシステム化が主流で、業務時間削減という定量的な効果が重要視されていましたが、現在では、定量的な効果に加えて、企業の競争力の確保・向上につながる定性的な効果の重要性が高まっています。定性的な効果としては、品質の向上、リスク低減、働き方変革やストレス軽減による従業員満足度の向上、そしてビジネスモデル創出やパラダイム変革を実現するための土台作りなどがあります。これらは、企業の競争力を維持・向上するための重要な要素となります。

Step5:今後のロードマップ策定

これまでの検討結果に基づき、具体的なアクションプランや実施スケジュールを策定します。新しい業務プロセスの導入時期や、各ステージの達成目標、それに向けた具体的な行動計画などを定めます。さらに、適切なモニタリングと評価のフレームワークを設定し、プロジェクトが計画通りに進行し、目標を達成しているかを定期的に評価するポイントを事前に定めることが有効です。

BPRを成功に導くためのポイント

Step1までは総論賛成で進むものの、Step3で各論に入ると途端に関係者との合意形成が一筋縄ではいかなくなります。したがって、BPR5つのステップのうち、最も重要で注意深く進める必要があります。過去にご支援したBPRプロジェクトの経験を踏まえて、Step3を進める上で重要な3つのポイントを紹介します。

①本質的でない業務の廃止

過去からの慣習だからという理由だけで続けられている業務があります。現行業務を分析し、無意味な資料作成や過剰な管理業務など、本質的でない業務を特定し、廃止します。各業務について、時間とコストは適切か、付加価値を生んでいるか、他の業務と重複していないかなどを、客観的な視点から検討しましょう。現場の慣習にとらわれないようにするために、専門のBPRチームを設置して進めることも有効です。

なお、既存のやり方を変えようとすると、多くの場合、現場からの抵抗があります。変化の意義と効果を明確な形で伝えて理解を促していくことが重要です。特に大きな変化を伴う場合には、トップ自らが率先して改革の意義を唱え、トップダウンで進めていくことも重要です。

②対象とする“時点“の明確化

新しい業務プロセスを検討する際、関係者がそれぞれ異なる“時点”を想定していると、議論がかみ合わず混乱することがよくあります。いつを想定するかによって、実現の難易度や制約条件が異なってくるからです。議論をスムーズに進めるためには、1年後なのか5年後なのか、新業務システム導入の前なのか後なのかなど、どの時点の業務プロセスのあり方を議論するかについて、関係者の間で認識を合わせておくことが重要です。

例えば、以下の3つの時点を想定して議論し、新業務プロセスの姿を描くとよいでしょう。
To-Be+:あらゆる制約を考慮せずに考えた理想の姿
To-Be:将来も含めて実現可能な最適な姿(目標とする業務プロセス)
Can-Be:To-Beに至るまでに段階的に目指す姿

③既存のパッケージやサービスの活用

近年、業務システムを一からスクラッチで構築するのではなく、既存のパッケージやサービスの組み合わせで実現するアプローチが一般的になっています。しかし、新たな業務プロセスの要件とパッケージやサービスの機能との間にギャップが生じることがあります。新業務プロセスが明確になってきた段階で、RFI(情報提供依頼)を作成して、パッケージやサービスの候補を絞りこみましょう。全ての機能を実現できない場合は、どの部分を独自でシステム化するかを見極めることが重要です。

まとめ

DX時代において変革を実現するためには、それを支える新しい業務プロセスが必要になります。今回は、現行の業務プロセスを抜本的に改革するための手法であるBPRについてご紹介しました。BPRを成功させるためには、特に新業務プロセス検討のステップが重要となります。その検討に際して注意すべき3つのポイント、本質的でない業務の廃止や、対象とする"時点"の明確化、既存のパッケージやサービスの活用について紹介しました。これらポイントを押さえることでより効果的なBPRを進めることができるでしょう。

NRIは様々な業界でのBPRやそれに伴うシステム構築・刷新をご支援してきました。先を見据えつつも実効的なBPRの実現が可能です。何かお困りの際には、是非ご相談ください。

執筆者情報

  • 藤本 佳那子

    産業ITコンサルティング二部

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