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日本企業のIT活用とデジタル化 - IT活用実態調査の結果から

第9回 デジタル化推進部門における現在および今後の課題とはなにか

2023/09/05

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株式会社野村総合研究所では、2003年より毎年、売上高上位の国内企業約3000社を対象に「ユーザ企業のIT活用実態調査」を実施しています。この連載では、最新の調査から、いくつかの設問をピックアップして集計結果をご紹介します。日本企業のIT活用動向を知るとともに、自社のデジタル化および情報化の戦略を考える一助としてご活用ください。

注目される調査結果のエグゼクティブサマリーはこちら

本調査では、各社のデジタル化推進部門に対し、「現在、取り組んでいる課題」と「今後、取り組みを進めたい課題」を尋ねています。(図1)

図1 デジタル化推進部門において取り組んでいる課題/取り組みを進めたい課題

※デジタル化推進部門を持つ企業を対象として質問

「現在、取り組んでいる課題」に注目すると、「社内人材のデジタル化対応力の向上(質的・量的)」の割合が58.8%と最も高く、人材の育成・獲得に対する各社の前向きな姿勢を反映した結果となっています。デジタル人材はDX推進のイネーブラーとなるため、育成・獲得への優先的な投資は合理的だといえます。ただ、これを一過性の取り組みとせず、継続的にデジタル人材を供給していくため、育成・獲得の仕組みを体系化し、組織的なケイパビリティ向上につなげることも重要です。さらには、昨今の労働市場における流動性の高まりを考慮すると、人材の離職を防ぎ、自社でより多くの付加価値を生み出してもらうための取り組みも並行して進める必要があるでしょう。

「今後、取り組みを進めたい課題」に注目すると、「自社のビジネスモデルの変革」、「アナリティクス/AI/データ活用の実証と適用」、「ユーザの体験価値の向上」、「データマネジメント/データガバナンス」の割合が、それぞれ44.0%、46.2%、40.1%、41.2%と、相対的に高いことがわかります。この傾向には、ビジネスモデルやUXの変革を目的に、その手段としてデータを活用していこうとする姿勢が表れていますが、具体的かつトレンドがわかりやすい手段に過度な資源投入をしないよう注意が必要です。競争優位性は手段ではなく、目的から生まれます。そのため、まずは自社のビジネスモデルを見つめなおし、競合他社や市場環境などの外部要因も考慮しつつ、次世代のビジネスモデルの探求という答えのない課題に優先して取り組むべきだといえます。

また、「デジタル化に伴うグループ外企業とのパートナーシップ強化」の割合に注目すると、現在および今後の割合がどちらも36.8%と変化がありません。この結果には、育成・獲得したデジタル人材を活用して、ビジネスモデルの変革とそのための施策推進をすべて社内で実施しようとする内製意識が表れているといえます。今後、変革への取り組みがさらに加速するにつれて、DX推進における内製意識もより高まり、自社で担当する領域とアウトソーシングする領域の両極化が顕著になるでしょう。よって、それを見据えた上で、自社に競争優位をもたらす事業領域やシステム領域の選択と集中に、現時点から取り組むことが求められます。

以上より、現在は人材育成・獲得に注力し、今後はビジネスモデルの変革とそれを実現するための施策を進めていこうとする傾向やDX推進における内製意識があることがわかります。ビジネス上の競争優位を確保するためには、取り組む施策の優先順位を考えながら、それらに付随して表出する新たな課題にも対処していくことが必要です。そうした課題解決の積み重ねによって、最終的には自社のビジネス変革だけでなく、社会のパラダイム変革をも担う企業へと成長していけるでしょう。

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第10回 日本企業はデジタル化投資判断においてどのような工夫をしているか

執筆者情報

  • 望月 魁

    システムコンサルティング事業本部

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