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日本企業のIT活用とデジタル化 - IT活用実態調査の結果から

第11回 デジタル化への取り組み状況

2023/10/16

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株式会社野村総合研究所では、2003年より毎年、売上高上位の国内企業約3000社を対象に「ユーザ企業のIT活用実態調査」を実施しています。この連載では、最新の調査から、いくつかの設問をピックアップして集計結果をご紹介します。日本企業のIT活用動向を知るとともに、自社のデジタル化および情報化の戦略を考える一助としてご活用ください。

注目される調査結果のエグゼクティブサマリーはこちら

本調査では、Web、モバイルデバイス、IoT、AI、データ解析などのデジタル技術を使った「デジタル化の取り組み」の実施・検討の状況を尋ねています。
16のデジタル化への取り組みについて、「積極的に実施している」から「実施・検討の予定はない」までの5段階で回答してもらい、その結果を「顧客に関わる取り組み」、「プロセスやリソースに関わる取り組み」、「ビジネスモデルに関わる取り組み」の3つの領域に分類し、集計しています(図1)。

図1 デジタル化への取り組みの実施・検討状況

3つの領域のうち、「顧客に関わる取り組み」と「プロセスやリソースに関わる取り組み」の取り組みについては、概ね20%から30%の企業が既に実施していると回答しています。検討中または今後検討したいと回答した企業も含めるとすべての取り組みで60%を超えています。「ビジネスモデルに関わる取り組み」領域については、プラットフォーム型サービスに関する取り組み(図1の下から2つ)以外は実施している企業の割合が、他の2つの領域と同程度の結果となりました。プラットフォーム型サービスの提供に関する取り組みについては、実施・検討している企業と実施・検討の予定はない企業の割合がほぼ同じで、回答が割れています。

取り組みの実施状況を領域別に見てみると、「顧客に関わる取り組み」領域では、取り組みを実施している割合が高い順に「顧客の選定・絞り込み(29.3%)」、「顧客の行動や需要の変化などの予測(27.4%)」となっており、マーケティングでの活用が進んでいることが分かります。商品・サービスの購入時や利用時の体験価値向上に取り組んでいる企業もそれぞれ20%あり、デジタル化によるCX(顧客体験価値)の向上に向けた取り組みも始まっていると言えます。
「プロセスやリソースに関わる取り組み」領域では、実施している割合が高い順に「商品・サービスの生産管理・品質管理の向上(28.9%)」、「スタッフの採用・育成・評価の適正化(21.0%)」となりました。生産プロセスにおける効率化や品質向上でのデジタル活用に加えて、人材の採用・育成・評価といった人材マネジメント面での活用も進んでいると言えます。
「ビジネスモデルに関わる取り組み」領域では、実施している割合が高い順に「オンラインで完結するサービスの提供(26.4%)」、「販売・営業チャネルの非対面化・無人化(26.1%)」でした。これまで対面主体であった、営業・販売やサービス提供における顧客接点のオンライン化が推進されており、デジタル技術によるチャネル変革が進められていることが分かります。チャネルのデジタル化により、顧客に関するデータの収集や分析が容易になるため、商品・サービスの企画・開発、マーケティング、CXの向上など、幅広いビジネスプロセスの高度化にもつながっているといえます。
これら2つの領域の取り組みや、ビジネスモデルに関わる、商品・サービス、チャネルに関する取り組みは、既存のビジネスプロセスを効率化・高度化するためのデジタル変革であり、業種・業界を問わず多くの企業で必要性が高く、比較的取り組み易いことから、実施・検討に前向きな企業が多い結果になったと考えられます。

プラットフォーム型サービスの提供に関連する取り組みは、他の取り組みと異なり実施・検討に前向きな企業と、実施・検討の予定はない企業とで結果が割れました。このことから、GAFAMのような世界的プラットフォーマーの拡大によりビジネスモデルの転換の重要性が増したことで、特定の業種においては、プラットフォーム型のビジネスの重要度が増していると推察できます。一方で、すべての企業がプラットフォーム型のビジネスに取り組む必要性に迫られているわけではなく、将来のビジネスモデルとして、非プラットフォーム型のビジネスを継続していく選択をしている企業や、ビジネスモデルをはじめとして企業全体に抜本的な改革が必要となる取り組みの難易度から、現時点では優先度を下げている企業も一定数存在していると推察できます。
今回対象とした16のデジタル化の取り組みが必ずしもすべての企業に必要とは限りません。自社ではどのような取り組みが必要なのか、経営戦略と照らし合わせながらデジタル化を推進していくことが重要と言えます。

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執筆者情報

  • 鳥谷 梨早

    システムコンサルティング事業本部

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