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日本企業のIT活用とデジタル化 - IT活用実態調査の結果から

第13回 日本企業が直面するIT人材内製化の課題

2023/11/01

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株式会社野村総合研究所では、2003年より毎年、売上高上位の国内企業約3000社を対象に「ユーザ企業のIT活用実態調査」を実施しています。この連載では、最新の調査から、いくつかの設問をピックアップして集計結果をご紹介します。日本企業のIT活用動向を知るとともに、自社のデジタル化および情報化の戦略を考える一助としてご活用ください。

注目される調査結果のエグゼクティブサマリーはこちら

デジタル化やDXの進展により、従来のIT領域に加えて新たなデジタル領域を担う人材の必要性が高まっています。多くの日本企業がこれまで以上にIT人材の確保に頭を悩ませているのではないでしょうか。
IT人材確保の方法には、内製化と外部調達があります。本調査では、従来IT領域の人材と新たに必要となったデジタル領域の人材を「IT人材」と定義し、IT人材の15職種それぞれについて、どちらの方法で確保するべきと考えているかを尋ねました。

その結果、職種によって、内製化および外部調達の意向が異なることがわかりました。特に、IT領域では、全社IT戦略立案者、ITビジネスリーダーは約9割、デジタル領域では、ビジネスプロデューサー、プロダクトマネージャーについては6割以上の企業が内製化の意向を示しています(図1)。一方で、デジタル技術のスペシャリストは外部調達の意向が強い傾向があります。

図1 IT人材内製化の意向

注)内製化すべき(A)か外部調達で確保すべき(B)のどちらに近いかという問いに対して、“Aに近い”と“ややAに近い”と答えた割合の合計を「内製化の意向」、“Bに近い”と“ややBに近い”と答えた割合の合計を「外部調達の意向」とした。

では、各社がデジタル化やDXを推進する上で求められるITケイパビリティ(人員の数、スキルの質など)の保有状況はどうでしょうか。図2の通り、IT領域の企画や開発・保守・運用の分野では3割から5割程度の企業がケイパビリティを一定程度保有しています。一方、デジタル領域における企業のケイパビリティは、全ての職種で2割以下に留まり、全体的にIT領域より低くなっています。特筆して、図1で内製化意向が6割を超えていたデジタル企画を担うIT人材(ビジネスプロデューサー・プロダクトマネージャーの2職種)は、内製化意向の3分の1にも満たない結果となりました。

図2 ITケイパビリティ保有状況

注)保有傾向は、“保有している”と“ある程度保有している”と答えた割合の合計。非保有傾向は、“保有していない”と“あまり保有していない”と答えた割合の合計。

デジタル化やDXの推進には、情報システム部門と事業部門の共創が不可欠です。中でも、超上流工程のデジタル企画において、デジタルが持つ潜在的価値や顧客ニーズの探索を担うビジネスプロデューサー、プロダクトやサービスのコンセプトを策定するプロダクトマネージャーには、IT・デジタル両方の素養に加え、自社のビジネスや顧客に対する深い理解や社内外のステークホルダーとの橋渡しが求められます。しかしこれまで多くの日本企業では、各事業部門が企画を担い、情報システム部門が事業部門の依頼の通りのシステムを構築するという明確な分業体制が敷かれてきました。そのため、情報システム部門と事業部門を行き来するような人事異動は少なく、結果として、ビジネスとIT・デジタル両方の視点を持ったビジネスプロデューサーやプロダクトマネージャーが社内で育たなかったと考えられます。

では、各社はIT人材内製化に向けてどのような取り組みを行うべきでしょうか。採用・育成・評価・報酬・配置など人材マネジメントの観点から様々な施策が考えられますが、自社の方針に沿って適切な施策を選択することが重要です。例えば、立ち上げ・企画フェーズは外部とともに行い、実行フェーズから自社での内製化を検討している場合、必要な人材要件や人数を見極め、候補者の人事異動やプロジェクトアサイン、キャリア採用を積極的に行うことが求められます。プロジェクトが軌道に乗ってからも、その先或いは新たなプロジェクトを担っていくプロジェクト推進者や協力者を継続的に生み出すため、OJT施策や評価・報酬制度の設計等の中長期的な視点が求められます。導入フェーズでは全従業員へと対象が広がり、利活用促進のための研修、ワークショップ等のOff-JT施策が従業員のリテラシー向上や組織風土の変革に繋がります。

いずれの施策についても、情報システム部門や事業部門が単独で実行することは難しく、部門間の連携や経営層・人事部門の支援が必要となります。デジタル戦略を絵に描いた餅としないために、全社大で強固な人材基盤を築いていくことが、デジタル化やDXを実現するためのケイパビリティ獲得の重要な一歩と言えるでしょう。

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第14回 日本企業のIT投資予算はどれくらいか

執筆者情報

  • 紀ノ岡 真理

    システムコンサルティング事業本部

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