米大統領選直後のFOMCでは予想通り0.25%の利下げ:トランプ政権とFRBの闘いが再び始まる
利下げ幅は前回の0.5%から縮小
米連邦準備制度理事会(FRB)は11月6・7日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の0.25%引き下げを決めた。
FRBは9月の前回FOMCで、0.5%の大きな幅の利下げを決定した。しかしその後に発表された9月分雇用統計が上振れたことなどから、今回は、0.5%幅での連続利下げを見送ったのである。
10月分雇用統計では雇用者増加数は大きく縮小したが、ハリケーンやストの影響が大きく、雇用情勢の実態を表すものとは言えなかった。12月初めに公表される11月分雇用統計への注目が集まる(コラム「米国10月雇用統計は予想比下振れるも評価は難しく:FRBの緩やかな利下げ観測が継続」、2024年11月5日)。
経済・物価情勢に大きな変化がない場合には、FRBは物価上昇率の低下傾向に沿って、会合毎に0.25%の利下げを続けることが当面想定される。
FRBは政治的圧力を強く受ける可能性が高い
今回のFOMCは、11月5日の米大統領選直後に開かれたことから、選挙と金融政策決定との関連や、次期トランプ政権の経済政策と金融政策との関連が注目された。
トランプ氏は、トランプ前政権の時から、パウエル議長に対してあからさまに利下げを要求するなどの政治介入を行ってきた。次期トランプ政権ではそうした傾向はさらに激化するだろう。
トランプ氏は、FRBの金融政策決定に大統領が関与すべきと主張している。それを実現するために、連邦準備法の改正を検討する可能性もあるだろう。
また、パウエル議長は2025年末に任期を迎えるが、その後は、大統領の意向を反映した、かなりハト派の人物が議長に指名される可能性も考えられる。こうした流れは、FRBの信認を低下させることや実際に利下げが進みやすくなることの双方から、ドル安要因となる。現在、トランプトレードの一環とされるドル高とは逆方向だ。
政治介入は金融政策に一定程度影響を及ぼす
トランプ氏が次期政権でFRBの金融政策への介入を進める場合、実際にFRBはその影響を一定程度受ける可能性があるだろう。それは、政治的圧力を受けて金融緩和が促される面と、政治的圧力に屈していないことを示すために、逆にFRBが金融緩和により慎重になる面の双方が考えられる。しかし、いずれにしても、そうした政治的要因による政策のぶれは大きくなく、基本的にはFRBの金融政策は、経済、物価、金融市場などのファンダメンタルズで決まる側面が強いだろう。
追加関税は経済を悪化させ、いずれは金融緩和を促す要因に
FRBは、当面トランプ政権の経済政策とそれが経済、金融市場にもたらす影響を慎重に見極める必要がある。仮に、トランプ氏が公約通りに大規模な追加関税を導入すれば、それは物価上昇率を高めるだろうが、それはコストプッシュ型の一時的なものだ。他方でその政策が米国経済を悪化させれば、最終的にはFRBの金融緩和姿勢はより強まるだろう。
トランプ氏が公約に掲げた経済政策をどの程度実行するかは不確実であるが、大規模追加関税や移民規制強化を実施すれば、その経済へのマイナス効果は、所得減税の延長、法人税率引き下げ、規制緩和などの政策によるプラス効果を大きく上回ると考えられる。
その場合、FRBの利下げ観測が強まり、長期金利は顕著に低下、ドルは大きく下落するのではないか。これは、現在、金融市場で進むトランプトレードとは逆方向だ。いずれ、トランプトレードは見直されていくものと見ておきたい(コラム「トランプトレードはいつまで続くか?:危うさがあるドル高円安シナリオ:日銀追加緩和の時期にも影響」、2024年11月7日)。
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