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ロイヤリティマーケティングの重要性とCXを用いた効果的アプローチのヒント

2024/10/28

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概要

パレートの法則を意識した効率的・効果的な売上拡大、未顧客への着実なアプローチ、環境変化に強い顧客基盤の確保などに鑑みると優良顧客の維持・育成を重視するロイヤリティマーケティングは多くの企業にとって重要性が高い。このロイヤリティマーケティングを実践する上では感情的価値訴求を重視するCXの手法が効果的である。具体的には、優良顧客(候補)を見極め、カスタマージャーニー上のペインポイント抑制/ゲインポイント増幅の仕掛けを感情的価値訴求の観点から考えることが望ましい。

はじめに

ロイヤリティマーケティングとは、優良顧客(候補)を見極め、その顧客の維持・育成にリソースを割く取組みのことであり、多くの企業にとって注力すべきマーケティング手法の1つと言える。一方で、(リソースシフトしなければならないと感じていても)未だに過去からの踏襲でマスマーケティング偏重のリソース配分を行い、優良顧客(候補)の見極めをせずに、リピート化しない顧客に多くのリソースを割いている企業も少なくないとコンサルティング経験を通じ感じている。この要因の1つにはマス媒体からのリターンが定量的に計測できないので、リソースをシフトした際の影響が見通せないという課題が想定されるが、NRIでは各媒体の売上へのインパクトを定量化するソリューション(Insight Signal)提供を通じて、このような課題にアプローチしている。また、優良顧客(候補)の見極めをしていない背景としては、そもそも顧客接点を直接持っていない企業(メーカーなど)を中心に顧客データがないため、優良顧客見極めに向けた分析ができないといった理由が挙げられるだろう。一方で、現在では例えばアプリなどの提供と同時に商品パッケージにQRコードを付けて、どのような顧客がどの商品を購入したかなどメーカーでも把握できる仕組みが整ってきている。また、未顧客であってもリテールメディアの台頭により特定の商材を購入しているセグメントにアプローチできる手立てが整ってきている。このような背景も踏まえ、本コラムでは改めて多くの企業がロイヤリティマーケティングにリソースを割くことの重要性について確認した上で、ロイヤリティマーケティングを実践する上で感情的価値訴求を重視するCX(カスタマーエクスペリエンス)の手法を取り入れながら効果的に実践するためのヒントについて記載していく。

優良顧客(候補)の維持・育成に着目したマーケティングの重要性

まず、優良顧客(候補)の維持・育成に着目したロイヤリティマーケティングがなぜ重要なのかについて、改めて確認したい。第一に、パレートの法則、即ち、顧客全体のトップ2割である優良顧客が売上の8割をあげているという法則が挙げられる。この法則については、顧客の購買先選定がブランド力に左右される商材(高級なバッグや時計など)だけでなく、ガソリンスタンドといった「ニーズが生じたときの最寄性」が重要な業界ですら、同様の傾向を示すデータを筆者は目の当たりにしたことがあるため、自社の実態について思い込み抜きに確認することが望ましい。第二に、新規顧客獲得にも優良顧客の存在がますます重要となっている点が挙げられる。というのも、テレビ、スマホ、屋外広告、ネット広告など様々な媒体から流通する情報量は人が消費する情報量をはるかに上回っている状態となっており、自社から直接未顧客にアプローチしても目を向けてもらえない/耳を傾けてもらえない可能性が往々にしてあるからだ。従って、未顧客に自社を認知してもらい、興味を持ってもらうためには彼らが普段からコミュニケーションを取る存在(=自社の優良顧客)から推奨を受けることが効果的となる。第三に、「優良顧客は自社を取り巻く環境が厳しい状況になっても離反しづらい傾向がある」点が挙げられる。これは、競合との競争環境が厳しくなった際に離反しづらいという面に加え、新型コロナウイルスなど自社では如何ともコントロールしがたい外部環境変化に耐える上でも重要だと考えられる。NRIが2020年に実施した各自動車メーカーの顧客の優良度合を計測する顧客ロイヤリティ指標を見ると、このスコアが高い自動車メーカーほどコロナ禍での国内販売台数の減少幅が小さい傾向が見られた。このような背景から、優良顧客(候補)の維持・育成にフォーカスしたロイヤリティマーケティング活動の重要性は高いと言えよう。

ロイヤリティマーケティングとCXの関係

次に、ロイヤリティマーケティングとCX(カスタマーエクスペリエンス)との関係性について整理したい。前提として、CXとは、商品・サービスの販売時点に限らずカスタマージャーニ―全体の視点で、自社商品・サービスの合理的価値(価格や機能など)ではなく、感情的価値を訴求する活動である。一般に、成熟市場では、合理的価値追求が一巡することで同質化しやすいが、そんな中で競争優位を確保する感情的価値が注目されている。ロイヤリティマーケティングのターゲットである優良顧客(候補)は当該企業の商品・サービスの合理的価値を評価しているだけでなく、当該企業(のブランド)に愛着や信頼を抱いていることが多い。この愛着や信頼を喚起する上で感情的価値を訴求するCXはロイヤリティマーケティングの手段として相性が良い。即ち、CXはロイヤリティマーケティング実践上の有効な手段という位置づけと言える。

図表1 CX活動で重視する顧客価値

出所:NRI作成

CXを通じたロイヤリティマーケティングの実践

次に、CXを通じたロイヤリティマーケティングの実践について述べたい。最初に実施すべきは優良顧客を分析した上で、そのポテンシャルのある顧客をロイヤリティマーケティングのターゲットとして定義することだ。このターゲット設定は意外としっかり為されていない(既存顧客の中でも優良化ポテンシャルのある顧客を見極められていない)企業も散見されるので注意したい。

次に、この優良化ポテンシャルのある顧客が自社の優良顧客に至るまでの課題、および、優良顧客でいつづけていただくための課題を明らかにし、対処するための打ち手を検討する。ちなみに、後者についていただくご指摘として「優良顧客は既に望ましい顧客になっているのだからリソースを割く必要はないのでは。」というものがあるが、これは3つの点で誤りである。1点目は、優良顧客も一定の頻度で離脱してしまっている可能性があること。2点目は、自分より売上貢献していない顧客(=優良顧客候補)に注力する企業に愛想を尽かすリスクがあること。3つ目は、優良顧客にしっかりと還元することで、優良化ポテンシャルのある顧客も「自分もそのように扱われたい」と思うきっかけとなることだ。

ターゲットが定まったら、そのターゲットのカスタマージャーニー上のゲインポイント(“あったらいいな”という要素)やペインポイント(取り除きたい悩み・課題)を明らかにし、ゲインポイントを増幅させる/ペインポイントを抑制する仕掛けを検討する。ちなみに、ペインポイントは顧客自身も認識しやすいが、ゲインポイントは顧客本人に聞いてもなかなか出てくるものではない。一方で、利便性や快適さといった要素よりも“ワクワク感”といった感情的価値を特に訴求したい場合、ゲインポイントの増幅が重要であり、検討の際に少し工夫を凝らす必要がある。具体的には、自社商材に対して感じるワクワク感の増幅やカスタマージャーニー上での横展開を検討するとともに、(自社商材とは切り離して)ターゲット層のそもそもの価値観・こだわりや日々ワクワク感を感じることを自社商材のカスタマージャーニー上に反映させるとどのような施策が考えられるかを検討することが効果的となる。

以下の資料では、上記で頭出しをさせていただいた「CXを通じたロイヤリティマーケティング」を実践する上で参考となるアプローチやフレームワークなどをご紹介している。ご興味がある方はぜひダウンロードの上ご確認いただきたい。

執筆者情報

  • 中島 将貴

    AIコンサルティング部


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