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デジタル・AIで進化する顧客価値指標マネジメント

2024/11/05

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概要

顧客価値指標マネジメントとは、NPSなどの顧客からの企業やブランドに対する評価を継続的にモニタリングし、改善サイクルを回す活動である。この活動を効果的に行うためには、結果指標(NPSのスコアなど)のみの把握に留まらず、それを左右する各顧客接点での評価まで定量的に把握の上、結果指標との相関の強さなどから優先順位付けをして、取り組むことが望ましい。また、アンケートなどによる評価収集の限界を乗り越えるために、顧客データを基にAIで全顧客にスコアを付与し、Explainable AI(説明可能なAI)技術で顧客別の改善課題を見える化する事例も出てきている。

はじめに

顧客価値指標とは一般に自社商材の機能などに対する顧客からの理性的な評価とともに、自社やそのブランドに対する愛着などといった感情的な評価を定量化したものであり、代表的な指標としてNPSなどが挙げられる。こうした指標はBtoCのみならずBtoBビジネスを展開する企業でも導入が進んできている一方、「指標を取ることが目的化しており、改善サイクルが回らない」「指標の高い/低いが分かっても、具体的に何を改善すべきかが分からない/社内で合意が取れない」などといった課題に関する声も少なくない。本コラムでは、このような声に対応する顧客価値指標の効果的なマネジメントサイクルについて確認した上で、デジタル・AIを活用した最新の顧客価値指標マネジメントの事例について記載していく。

NPSによる顧客価値指標のマネジメントサイクル

まず、マネジメントサイクルの話に入る前に、顧客価値指標そのものについて言及していく。一般的な顧客価値指標としてはNPSの他に、CSAT(顧客満足度)、リピート意向など顧客へのアンケートを基に収集する指標と、顧客の行動データ(会員データなど)を基にエンゲージメントの強さをスコア化したものやLTV(Life Time Value)の推計など、いくつかのバリエーションが存在する。この中でより一般的に活用されているのはアンケートで収集するNPSであろう。従って、NPSを使ったマネジメントサイクルを例にとって解説する。基本なサイクルとしては、半期や1年など一定期間でまとめてアンケートの配布を行い、その結果を基に課題を抽出し、次回のアンケート配布までの行動計画を作成し、運用していくことになる。この際、NPSのスコア向上に向けて何を改善すべきかを明らかにし、着実に改善を行うためのポイントは「NPSの高低を決定付ける要因(ドライバー)までアンケートで把握する」ということと、「対処すべきドライバーの優先順位まで定量的に明らかにすること」である。経営コンサルティングを例に言えば、NPSの評価を左右する要因として、営業時の評価(御用聞きではなく、どれだけニーズを踏まえた付加価値のある提案をしてくれたか等)や、プロジェクト実施時の評価(顧客の事情の変化に応じてどれだけ柔軟に対応してくれたか等)など複数の観点に分解することができる。このように分解した各ドライバーについても同アンケートの中で顧客に定量的に評価をしてもらうことで、顧客価値指標との相関係数を算出することができる。その相関係数が高く、かつ、評価が低い(改善余地が大きい)ドライバーを重点的に改善すべきドライバーと捉える。更に、ドライバー評価を左右する主要因(3層目)まで分解し、同一のアンケート上で聞くことで、重点的に改善すべきドライバーをどのように改善すればいいのかの具体的示唆を抽出することができる。このように定量的にNPSとの関係を示し、優先順位付けすることで「あれもこれも」といったオペレーション上ムリのある総花的な打ち手ではなく、的を絞った計画を、社内でオーソライズを取りながら進めやすくすることができる。

図表1 顧客価値指標の評価を左右する構造

出所:NRI作成

図表2 顧客価値指標とドライバーのマッピングとドライバーの深堀イメージ

出所:NRI作成

NPSの限界とAIを活用した顧客価値指標

一方で、上記のNPSアンケートを例にしたマネジメントには「一定のサイクルでしか状況が把握できず、タイムリーに手を打ちづらい」という課題や「アンケートに回答してくれない顧客の評価は把握できない」といった課題がある。こういった課題に対処した弊社の支援事例を1つご紹介する。消費者に多様なサービスを定額制で提供する弊社の支援先企業では、もともとNPSを顧客価値指標として設定し、月次でモニタリングをしていたが、上記の課題に直面していた。そこで、弊社との取組みのなかで、全顧客一人一人のロイヤリティ(自社に対する信頼・愛着)を評価する指標の導入に踏み切った。具体的には、解約率やその他のデータから疑似的なNPSスコアを予測するモデルを作り、全顧客にこのスコアを割り当てた。加えて、Explainable AI(SHAP)の技術を用い、それぞれの顧客のスコアがなぜそのスコアなのかの背景要因を可視化することを実施した。具体的には図表3を見ていただきたい。例えば100ptが最高スコアのロイヤリティスコアが70ptの顧客(Aさん)がいたときに、その背景要因としてサービスAの利用時間が短い(25時間程度である)ことがスコアを20pt押し下げている。また、営業担当者に対する評価が10点満点で1点であることが、評価を30pt押し下げているといったことを可視化できるようにした。このような可視化ができれば、「サービスAの利用促進やAさんに対する担当営業の接客の質改善がポイントである」といった示唆を抽出することができる。こうすることでアンケート配布サイクルに依らず、よりタイムリーに顧客の実態を把握しながら、顧客一人一人にあった施策を打てるような仕組みを構築することができた(もちろん、顧客1人1人の状況を個別に見るのではなく、全体的な傾向としてどの顧客接点を改善すべきかといった分析も可能である)。

図表3 ロイヤリティスコアの背景要因可視化(イメージ)

出所:NRI作成

本コラムでは、顧客価値指標マネジメントの基本やAIを用いた最新の事例について概要を紹介したが、より具体的な内容をご確認いただきたい方は、ぜひ下記より資料をダウンロードの上ご一読いただきたい。

  •   

    Net Promoter Scoreの略。顧客のロイヤリティ(商品・サービスなどに対する信頼や愛着)の度合いを測る指標

執筆者情報

  • 中島 将貴

    AIコンサルティング部


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