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日本企業のIT活用とデジタル化 - IT活用実態調査の結果から

第14回 日本企業のIT投資予算はどれくらいか

2024/03/07

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株式会社野村総合研究所では、2003年より毎年、売上高上位の国内企業約3000社を対象に「ユーザ企業のIT活用実態調査」を実施しています。この連載では、最新の調査から、いくつかの設問をピックアップして集計結果をご紹介します。日本企業のIT活用動向を知るとともに、自社のデジタル化および情報化の戦略を考える一助としてご活用ください。

注目される調査結果のエグゼクティブサマリーはこちら

調査では毎年、各社のIT投資予算について、売上高に対する比率を尋ねています。連載の第2回では、2022年度の調査結果をもとに、日本企業のIT投資予算の対売上高比率がどのくらいの水準にあるのかを示しました。今回は、直近の調査結果(2023年9月調査実施)をもとに、その水準が変化しているかを確認してみましょう。
図は、2023年の調査結果をもとに、各社のIT投資予算の対売上高比率の分布を示したヒストグラムです。例えば売上高が1,000億円で、IT投資予算が20億円であれば、この値は2.0%となります。なお、ここで言うIT投資予算には、減価償却費を含まず、社内人件費を含みます。
横軸は、IT投資予算の対売上高比率を表しており、右側にいくほどIT投資予算の比率が高い企業、左側にいくほど低い企業となります。縦軸は回答の件数を表しています。横軸は対数軸を用いており、低い値ほど分類が細かくなるように工夫しています。

図 IT投資予算の対売上高比率の分布

注)0.01%未満と100%超をあらかじめ外れ値として除いて表示

図を見ると、値が0.1%以下の企業や、10%以上の企業は数が少ないことがわかります。0.1%から1%の企業と、1%から10%の企業はほぼ同数です。このような場合、平均値(算術平均)は高い方にずれてしまい、あまり当てになりません。ちょうど真ん中に位置するような標準的な企業の値を示す中央値を算出すると1.0%です。つまり、売上高に対する比率は1%前後という企業が多いことがわかります。

次に、この値を過去の調査結果と比較してみましょう。コロナ禍前の2019年から2023年まで5年間の数値を比較すると、いずれの調査年度でも中央値は1.0%です。これを見る限り、企業が支出するIT投資予算は、売上高に対する比率で一定の水準にあると言えます。
一方、これまでの調査結果1からは、企業のIT投資額が年々増加していることも見て取れます。金額ベースで見ればIT投資は堅調です。しかし、企業が皆、戦略的にIT投資のウェイトを増やしているとまでは言えません。先の結果を重ね合わせると、むしろ売上高の伸びに応じて一定の水準でIT投資を行なっている企業が多いことが示唆されます。

なお、IT投資予算の対売上高比率は業界によって差があります。金融業以外の中央値は2018年から2023年まで1.0%であるのに対し、金融業の中央値は年によって4.6%から5.7%の間に位置しています。金融業の値には変動がありますが、これは調査結果に含まれる企業数が少なく統計的にブレが生じるためで、5%前後の水準と考えればよいでしょう。

さらに、IT投資についてはその水準とともに、配分にも注目すべきです。第3回の記事で述べたように、変革のための戦略的な投資が十分でなく、事業を維持するためのコストが大半を占める場合は、効率化によってコストの削減を図り、その分を戦略的な投資に振り向ける必要があるでしょう。業界の水準に比べて著しくIT投資の水準が低い場合も、戦略的なIT投資が十分になされているかを確認すべきです。

直近の調査からは、上記以外にもいくつかの結果を公表しています。自社のIT活用のあり方を検討する資料として、ぜひご活用ください。

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第15回 IT費用の内訳 -新規開発への支出はどのくらいか

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執筆者情報

  • 有賀 友紀

    システムコンサルティング事業本部

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