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フィジカルインターネット

Physical Internet

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フィジカルインターネットとは

トラック等の輸送手段と倉庫のシェアリングによる稼働率向上と燃料消費量抑制によって、持続可能な社会を実現するための革新的な物流システム

フィジカルインターネットとは、トラック等が持つ輸送スペースと倉庫が持つ保管・仕分スペースのシェアリングによってそれら物流リソースの稼働率を向上させ、より少ない台数のトラックで荷物を運ぶことで燃料消費量を抑制し地球温暖化ガス排出量を削減することを通じて、持続可能な社会を実現するための革新的な物流システムのコンセプトです。
「インターネット」のパケット交換の仕組みを物流に適用して、「フィジカル」なモノの輸送・仕分・保管を変革することから、フィジカルインターネットと呼ばれています。

インターネット vs. フィジカルインターネット

インターネットとフィジカルインターネットを比べながら、フィジカルインターネットの特徴を説明します。
インターネットが登場する前、端末間で通信する場合は、交換機で回線を切り替え、端末間で回線を直接つなぐ方式が採用されていました(回線交換方式)。この方式では1つの回線が端末間で占有され、回線利用効率が低いという欠点がありました(図の左上)。
インターネットによる通信ではパケット交換が行われます。これは、通信データがパケットと呼ばれるデータの一区切りごとに分割されて送受信される方式です(パケット交換方式)。パケット交換は通信データが送受信される間だけ回線を使います。つまり、同じ回線で複数の通信データを送れるため、回線利用効率が高くなります(図の左下)。
フィジカルインターネット登場前である現在は、荷物の出し手がその受け手に荷物を届ける場合、荷物の出し手1社がトラック1台を占有することがあります。この時、トラック1台を満載できず、積載率が低くなることがしばしば起きます(図の右上)。
フィジカルインターネットがある世界では、荷物が複数のモジュラー容器に分割して格納されてPIノードに運ばれ、末端以外の区間(PIノード間)でそのモジュラー容器が混載されて運ばれることで、トラックの積載率が向上することになります(図の右下)。

なぜ、フィジカルインターネットが注目されているか

日本の総人口は2011年ごろからゆるやかな減少に転じましたが、国内の物流需要は増加を続けています。インターネット通販が普及し、特に2020年から新型コロナウィルス感染拡大の影響で通販利用に拍車がかかっています。一方、「物流クライシス」「もう運べない」という言葉で表されるように、モノを運ぶ物流会社の多くはドライバー不足で困っています。輸配送ロットサイズの縮小や時間指定配達の増加により、トラックの積載率は直近20年間で約20%も下がり、今や40%台まで落ちました。この状況を打開する手段の1つとしてフィジカルインターネットが注目されています。

海外でフィジカルインターネットがどのように取り組まれているのか

フィジカルインターネットのきっかけは、2006年6月の経済誌The Economistの表紙にPhysical Internetという表現が登場したことです。それを見た、当時カナダのLaval大学に在籍していたBenoit Montreuil教授が、パリ国立鉱山高等学校のEric Ballot教授らとフィジカルインターネットのコンセプトを構想しました。ヨーロッパでは2013年に欧州委員会の意向を受け、ロジスティクス分野における研究開発・イノベーション政策の意思決定を支援する目的で、ALICE(Alliance for Logistics Innovation through Collaboration in Europe)という非営利団体が設立されました。このALICEが2019年にロジスティクス領域でのゼロエミッションのロードマップを、続く2020年にフィジカルインターネットのロードマップを策定し、産業界でフィジカルインターネットの普及促進を図っています。

日本におけるフィジカルインターネット

日本でフィジカルインターネットが語られ始めたのは2019年です。その後、フィジカルインターネットに関する研究会やシンポジウムの開催、The Physical Internet日本語訳の出版のほか、2021年6月に閣議決定された「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」でフィジカルインターネットに言及されるなど、日本でもフィジカルインターネットの認知度が徐々に高まりつつあります。

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