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2025年の公募投信市場における資金流入の軌跡を、年初からの累積推移(バーチャートレース)に基づき分析する。本年の市場動向は、特定のインデックスファンドへの高い資金集中と、運用選択のさらなる多様化という二点に要約される。

年初から一貫して高い水準で流入超過を継続したファンドの中でも、特に際立った伸びを示したのは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(以下、オルカン)と「同 米国株式(S&P500)」である。新NISA制度の定着を背景に、これらインデックス2強の流入ペースは通年で他を上回る水準を維持した。12月19日時点で「オルカン」の累積流入額は2兆3800億円に達し、「S&P500」も1兆9100億円を記録。パッシブ運用を主軸とする投資行動が、年間を通じて市場の主要な傾向となった。

一方で、3位以下の順位変動は投資家の選別意識の強まりを映し出している。アクティブ運用では、夏場以降に流入ペースを急加速させた「インベスコ世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」が累積1兆3,700億円に到達し、2強に次ぐ3番手につけた。また、「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンドDコース(毎月決算・予想分配金提示型・為替ヘッジなし)」が5900億円、年初から先行した「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」も3300億円の流入を記録するなど、実績あるアクティブ戦略への強い需要が確認された。

また、資産分散の受け皿としてコモディティ投信への資金流入も継続した。「 ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」が4300億円、「三菱UFJ純金ファンド」が2400億円を記録している。

2025年は、低コストインデックスへの資金流入が定着する一方で、運用実績を有するアクティブ戦略や、リスク分散を目的としたコモディティ投信に対しても、投資資金が配分された一年であった。

プロフィール

  • 金子 久のポートレート

    金子 久

    金融イノベーション研究部

    

    1988年入社、システムサイエンス部及び投資調査部にて株式の定量分析を担当。1995年より投資情報サービスの企画及び営業を担当。2000年より投資信託の評価やマーケット分析のためのデータベース構築、日本の資産運用ビジネスに関する調査、個人向け資産形成支援税制、投信に関する規制などを担当。その間2005年から1年間、野村ホールディングス経営企画部に出向し、アセットマネジメント部門の販路政策などを担当。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。