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2014年のNISA制度開始以降から2025年末までの投資信託による家計の資産形成貢献額を算出した結果、累計で78.1兆円に達していた。暦年別では、2023年以降3年連続で年間20兆円規模の寄与が続き、2025年は過去最高となる22.1兆円を記録した。ファンド別集計では、大型の海外株式を投資対象とするファンドが資産形成貢献額の上位を占める傾向が見られた。運用会社別では、一部の大手金融機関系が累計・単年ともに高い寄与を示した。資産形成貢献額は、投資信託ビジネスの成果を包括的に示す指標として業界関係者に有用であり、長期的視点で活用することが望ましい。

NISA制度開始以降の投資信託の資産形成貢献額は78兆円に

投資信託が家計にもたらす金融資産所得(以下、本コラムでは家計の資産形成に貢献した金額を「資産形成貢献額」と表記する)はどれほどであろうか。旧NISAが始まった2014年まで遡り計算した。資産形成貢献額は分配金と売却益および評価益の合計であり、具体的な算出方法は図表1の通りである。コストに相当する金額として、NISA開始時点で家計が既に保有していた投資信託の金額(⑤)が55.5兆円、以降2025年末までに購入した投資信託の金額(買付手数料や消費税を含む)は358.3兆円である。得られた収入としては、分配金(課税前)が43.0兆円、解約金額(解約手数料や消費税を含む)が274.7兆円で、2025年末時点で保有している投資信託の時価は174.1兆円となる。収入とコストの差額が資産形成貢献額であり、78.1兆円と計算できた。
 
図表1 投資信託全体の資産形成貢献額の定義と2014~2025年の計算例

図表1では2014年から2025年までの12年間分を計算したが、期間を短く分割して算出することも可能である。図表2の棒グラフは暦年ごとの資産形成貢献額を示している。これを見ると、2023年以降は3年連続で資産形成貢献額がプラスであるとともに、年間で20兆円規模を維持していることが分かる。2025年は22.1兆円で前年をわずかに上回った。これは日本の給与総額(年間約330兆円)の約6.7%に相当する規模であり、投資信託が家計の所得増加に大きく貢献していることが確認できる。もっとも、過去には資産形成貢献額がマイナスになる時期も存在する。短期の評価で一喜一憂するのは避け、長期的な視点で判断することが重要である。
 
図表2 公募追加型株式投資信託(除くETF)の資産形成貢献額

資産形成に大きな貢献をした12ファンド

図表1の計算式を個別ファンドに適用すると、ファンドごとの資産形成貢献額を算出できる。図表3は2014年から2025年までの12年間において、資産形成貢献額が7,000億円を超えた12ファンドを示している。1位は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」で、その累計額は3.7兆円を超えている。2位は同シリーズの「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)《オルカン》」で、累計は約2.8兆円に迫る。なお、2025年の単年資産形成貢献額では「オルカン」が「S&P500」を1,000億円以上上回り、約1.5兆円に迫っている。

これら2ファンドを含め、資産形成貢献額が1兆円を超えるファンドは6本であり、いずれも純資産残高が1兆円を超える大型ファンドである。資産形成貢献額は、計算期間中に当該投信を保有した投資家全体の損益を示すため、基準価額の上昇と運用資産の規模に強く影響される。したがって、基準価額が同等以上に上昇したファンドであっても、投資家資金が集まらず運用資産額が小さい場合には資産形成貢献額は大きくならず、ランキング上位には入らない。

また、上位6ファンドの運用対象はすべて海外株式であり、図表3に挙がる12ファンドに範囲を広げても、 1本を除き海外株式ファンドで占められている。国内資産を主要投資対象とするファンドは上位に見当たらない点も特徴的である。
 
図表3 資産形成貢献額(2014~2025年)が7,000億円以上の12ファンド

資産形成に大きな貢献をした運用会社12社

運用会社別にも資産形成貢献額を算出できる。図表4は2014年以降の累計資産形成貢献額が2兆円以上の12社を示した。1位は三菱UFJアセットマネジメントで、同社の累計の資産形成貢献額は約8.5兆円に達している。2位は野村アセットマネジメントで、約6.2兆円の貢献が確認された。これらを含め、資産形成貢献額が4兆円以上の運用会社は大手金融機関系が占めている。

なお三菱UFJアセットマネジメントは2025年単年においても約5.1兆円と他社を大きく引き離す寄与を示しており、その存在感が際立っている。

一方、フィデリティ投信やアライアンス・バーンスタイン、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントといった外資系運用会社、ネット証券系のSBIアセットマネジメントや楽天投信投資顧問なども累計で1兆円以上の資産形成貢献額を挙げている。多様なプレーヤーが市場に影響を与えている状況である。
 
図表4 資産形成貢献額(2014~2025年)が2兆円以上の12社

投資家が投資信託を選択する際に参照する情報は、通常(1万口当たりで示される)基準価額や分配金、これらから算出される時間加重収益率である。投資家にとって重要なこれらの指標と同様に、投信ビジネスに携わる者にとって資産形成貢献額は重要な指標である。投信ビジネスの究極の目標は、預かった顧客の資金を増やすことであり、資産形成貢献額は自社および自社ファンドが顧客の資金をいくら増やしたかを測ることができる。資産形成貢献額は資産運用業界関係者が注視すべき指標の一つである。
 

プロフィール

  • 金子 久のポートレート

    金子 久

    金融イノベーション研究部

    

    1988年入社、システムサイエンス部及び投資調査部にて株式の定量分析を担当。1995年より投資情報サービスの企画及び営業を担当。2000年より投資信託の評価やマーケット分析のためのデータベース構築、日本の資産運用ビジネスに関する調査、個人向け資産形成支援税制、投信に関する規制などを担当。その間2005年から1年間、野村ホールディングス経営企画部に出向し、アセットマネジメント部門の販路政策などを担当。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。