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2014年のNISA制度開始以降、投資信託(ETFを除く公募追加型株式投資信託)が家計にもたらした「資産形成貢献額」は、2026年6月末時点で累計100兆円の大台を突破した。この成果の大半は2020年下期以降に生み出されており、その背景には、株式型ファンドへの投資対象のシフト、好調な相場環境による投資対象資産の価格上昇、そして解約率の低下に表れる長期保有の定着という3つの要因がある。一時的な相場変動による評価損に動揺して投資をやめることなく、下落局面でも保有や積立を継続していくことが、今後の家計の豊かな資産形成に向けた重要なカギとなる。

1. NISA制度開始以降の投信の資産形成貢献額は100兆円に到達

投資信託(ETFを除く公募追加型株式投資信託)が家計にもたらす金融資産所得を、本コラムでは「資産形成貢献額」と呼んでいる。具体的な算出方法は図表1の通りである。期末時点の時価評価額に、期中に投資家が受け取った分配金と解約額(解約時の売却手数料等の推計値を差し引いた金額)を加え、そこから期中の設定額(購入時の買付手数料等の推計値を加えた金額)と期首の時価評価額を差し引くことで計算される。これは単なる残高の増減額とは異なり、投資家の資金流出入や手数料の影響を考慮した、家計が実際に得た収益額を適切に把握できる指標である。
 
図表1 投資信託全体の資産形成貢献額の定義と2014~2026年第2四半期の計算例


この計算式を用いて、2014年のNISA制度開始を起点とした累積資産形成貢献額の推移を示したものが図表2である。2024年末時点では56.0兆円、2025年末時点では78.1兆円に達していた。そして今回、最新のデータを用いた2026年6月末時点において100.1兆円となり、ついに大台の100兆円を突破した。

図表2のグラフを見るとわかるように、この100兆円という成果は決してコンスタントに増えて達成されたわけではない。2020年上期までの期間は、投信の資産形成貢献額はほぼ横ばいで一進一退を続けていた。しかし、2020年下期以降の期間でその積み上がり方は劇的に加速し、累積100.1兆円の大半(91.8%)がこの後半の期間に作られている。この劇的な変化の背景には、何があったのだろうか。
 
図表2 公募追加型株式投信(除くETF)の累積資産形成貢献額の推移

2. 2020年下期以降に資産形成貢献額が急増した3つの要因

2020年上期以前(2014年1月~2020年6月)と下期以降(2020年7月~2026年6月)で、資産形成貢献額の積み増しがこれほどまでに大きく異なる原因として、主に3つの要因が挙げられる(図表3参照)。
 
図表3 投信の資産形成貢献額が急増した3つの要因(2期間比較)

第一の要因は、「分類構成の変化(投資対象のシフト)」である。追加型株式投信の分類別平均残高構成比を見ると、2020年上期以前は海外債券型が26.9%を占めており、株式を主要投資対象とする株式型(国内株式と海外株式の合計)は38.1%にとどまっていた。しかし、2020年下期以降では、株式型が59.9%と過半を占めるまでに拡大し、海外債券型は11.5%にまで大きく低下している。より高いリターンが期待できる株式型ファンドへ投資家の資金が大きくシフトしたことが、資産形成貢献額を押し上げた。

第二の要因は、「投資対象資産の価格変化率(相場要因)」である。株式市場の好調により、国内株式の代表的な指標であるTOPIX配当込み指数の収益率は、2020年上期以前の年率5.1%から2020年下期以降は年率19.8%へと大きく上昇した。同様に、代表的な海外株式配当込み指数(円ベース)の収益率も年率5.0%から22.4%へと飛躍的に高まっている。株式型へのシフトが進んだタイミングで、投資対象資産の価格が大きく上昇したことが相乗効果を生んでいる。

そして第三の要因が、「解約率の低下(平均保有期間の長期化)」である。追加型株式投信(除くETF)全体の年率解約率は、2020年上期以前の35.2%から、2020年下期以降は23.9%へと大幅に低下した。これは、投資家が短期的な売買を控え、投信の平均保有期間が長期化したことを示唆している。

3. 今後の展望

ここまで見てきたように、投信の資産形成貢献額が100兆円の大台に到達し、その大半が2020年下期以降に生み出された背景には、相場の追い風(投資対象資産の価格上昇)だけでなく、投資家自身の行動の変化が大きく寄与している。株式型を中心とした資産へのシフトと、解約率の低下に表れる「長期保有」の定着である。

もっとも、金融市場である以上、2020年下期以降の増加傾向に転じた後でも、短期的には大きなマイナスになった時期もある。例えば、2022年の場合は1年間で10兆円を超えるマイナスとなり、投信は家計に大きな損失を抱えた。一時的な評価損に動揺して投資をやめてしまう(解約してしまう)のではなく、これまでデータが示してきた通り、下落局面を乗り越えて保有や積立を継続することが何より重要である。その継続こそが、相場回復時の恩恵を逃さず享受し、将来のさらなる資産形成貢献額の増大と、家計の豊かな資産形成という果実をもたらすはずである。

プロフィール

  • 金子 久のポートレート

    金子 久

    金融イノベーション研究部

    

    1988年入社、システムサイエンス部及び投資調査部にて株式の定量分析を担当。1995年より投資情報サービスの企画及び営業を担当。2000年より投資信託の評価やマーケット分析のためのデータベース構築、日本の資産運用ビジネスに関する調査、個人向け資産形成支援税制、投信に関する規制などを担当。その間2005年から1年間、野村ホールディングス経営企画部に出向し、アセットマネジメント部門の販路政策などを担当。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。