ECBは次の利下げ時期については材料を与えず
欧州中央銀行(ECB)は6日の理事会で、中銀預金金利を4.0%から3.75%へと0.25%ポイント引き下げる決定を行った。ECBは2022年7月にマイナス金利政策を解除し、利上げ(政策金利引き上げ)を開始した。10会合連続で利上げを実施した後には、5会合連続で政策金利を据え置いてきた。利下げは8年3か月ぶりとなる。
今回の利下げについては数か月前からECBが事実上の予告をしており、全く違和感のない決定となった。ラガルド総裁によると、利下げの決定は1人を除く全員が同意した。
声明文では、物価見通しが顕著に改善した(the inflation outlook has improved markedly)ことを指摘しており、これが利下げ実施の最大の理由となった。他方で、高い賃金上昇率が維持される中、物価上昇圧力は依然強く(domestic price pressures remain strong as wage growth is elevated)、来年までは目標を上回る物価上昇率がなお続くとし、引き続き物価目標達成に向けた慎重な金融政策姿勢を続ける考えを示した。
利下げ実施は十分に予想されているなか、金融市場が注目し期待していたのは、今後の利下げの時期やペースに関する情報が出されるかどうかであった。しかし、そうした期待は裏切られることになった。声明文は、金融政策の判断はデータ次第であり、会合ごとに判断する(a data-dependent and meeting-by-meeting approach)とし、あらかじめ金利の先行きの動きを約束することはない(The Governing Council is not pre-committing to a particular rate path.)と釘を刺したのである。
金融市場では、ECBが2会合連続で利下げに踏み切るとは考えておらず、次々回9月の利下げ見通しが現時点では有力となっている。
内外で逆方向の金融政策が円安を終焉させるか
主要中銀のなかでは、3月にスイス中銀、5月にスウェーデン中銀、6月5日にカナダ中銀が、それぞれ利下げを実施している。今回のECB の利下げは、世界が本格的に利下げ局面に入ったことを示唆するものだ。英国中銀や米連邦準備制度理事会(FRB)も9月までに利下げに踏み切る可能性がある。
そうした中、ひとり日本銀行は、今後も利上げを含めた金融緩和の修正、正常化を進めていく可能性が高い。金融市場では、一部の報道などを受けて、日本銀行は6月13・14日の次回決定会合で、国債買い入れの減額方針を示すとの見方が強まっている。その可能性は非常に高いとまでは言えないが、本格的な国債残高の削減、いわゆる量的引き締め(QT)とは異なる、政策微調整の範囲内にとどまるものと考えられる(コラム「 日銀の国債買い入れ減額は本格的な量的引き締め(QT)の始まりではない 」、2024年6月5日)。そのため、仮に実施されても金融市場への影響は限られるだろう。
他方で、日本銀行は7月から9月の間の決定会合で、追加利上げに踏み切るとの観測が強い。筆者は9月の可能性を見ているが、実際にそうなれば、FRBと日本銀行がいよいよ逆方向の金融政策を実施することになり、2022年以来の円安ドル高の流れが転換するきっかけとなることも期待される。
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